【街歩き】解体家屋もあってどうも気になる西武池袋線富士見台駅周辺=和菓子屋『深川伊勢屋』や焼肉問屋『牛蔵』に『ぎょうざの満洲』も
■アニメ「鉄腕アトム」を生んだ富士見台エリア
私の居住する練馬区は日本で最初のアニメが大泉の東映動画(現・東映アニメーション)で制作されたことでアニメ発祥の地と言われている。
3月も下旬になってポカポカ陽気の日が増えた。週末の土曜日、自宅から西武池袋線の富士見台駅まで散歩した。歩いて30分ほどだ。
駅頭にこんなものが立っていた。練馬区の区内に約100社のアニメ制作関連会社が立地しており、そのうちの1つが虫プロダクション。とりわけ「鉄腕アトム」は日本初の連続長編テレビアニメとして人気を博した。
昭和38年(1963年)1月より昭和41年(1966年)12月までの4年にわたり放映された「鉄腕アトム」は当時、富士見台に住んでいた手塚治虫氏の同名漫画が原作だ。
未来を舞台に少年ロボットが活躍する物語で、アニメ制作は虫プロダクションが担当した。その後も二度リメイク(制作:手塚プロダクション)された人気作品だ。
■テレビアニメの平均視聴率は30%
偉人研究家・真山知幸氏の「手塚治虫は経営に向かず借金10億円?辛酸を舐めた天才クリエイターたち」(PHP online)によると、手塚治虫は『鉄腕アトム』に続いて『リボンの騎士』『ロック冒険記』と話題作を次々と発表。
さらには十数本の月刊誌の連載も抱え、加えて週刊誌でも掲載するなど八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍ぶりだった。
なかでもテレビアニメ「鉄腕アトム」は平均視聴率30%をたたき出すという好調ぶりで、アニメブームの火付け役となった。
真山氏によると、手塚治虫にはこうした連載を抱えながらもアニメスタジオを建設したいという夢があったという。
1961年にアニメ専門プロダクション「虫プロダクション」を設立したのはそのためだと真山氏は指摘する。
ただ虫プロは1973年に倒産した。500人という余りにも多くのスタッフを抱えていたことのほか、コスト高なども響いたようだ。
手塚治虫の人生の結末はそんなに幸せではなかったらしい。しかし後世の我々はそんなことをすべて忘れ、彼が活躍した絶頂期だけを記憶している。そんなものかもしれない。
■やはりだんごは深川伊勢屋
富士見台駅を散歩の目的地に選んだのは富士見台には「深川伊勢屋」があるため。みたらしだんご、醤油だんご、ずんだだんごなどのほか、上用まんじゅう、きんつば、桜餅(道明寺)なども充実した和菓子屋だ。
とにかくだんごは非常に大きくて、安くて、うまいのだ。食べているだけで幸せになってくる。そんなお店は最近なかなかない。
あさりご飯など夕食用食材も置いてある。あれもこれもと買っていたら、2000円にもなってしまった。諸物価高騰の折とはいえだんご代だけで2000円なんて信じられない。
伊勢屋(本社・東京都江東区富岡)は明治40年(1907年)創業の老舗。下町深川でだんご、大福、太巻き、いなりなどを販売。そんな伊勢屋の支店が富士見台にもあるのは嬉しい限りだ。
■気になる「牛蔵」に関するうわさ
また富士見台駅周辺には焼肉問屋牛蔵もある。まだ食べていないのでちゃんとしたことは言えないが、売店で総菜も販売。メンチやコロッケが定番で、低価格で黒毛和牛を食べられる店だという。
ネット上のコメントがどれだけ信用できるものなのか分からないが、「私は東京の焼肉名店はすべて制覇しているが、肉質、特に脂の質は東京一かと思います」というコメントには驚いた。
「予約の手間はあるが、抜群の肉質のお肉を安価でいただける都内屈指の焼肉屋さん」(Retty)との評判が耳にこびりついた。
最近は何でもコメントを読む癖がついてしまった。コメントなんてと信用度を疑いつつも、意外と心の底では簡単に信用してしまっている自分がいる。
■メンチは150円と超安
1階は牛蔵売店、2階が焼肉屋になっている。売店ではメンチ150円(税込)、コロッケ106円(同)と世間相場に比べてもかなり安価で提供されている。いつも行列ができている。
東京でいつも行列ができる店としては吉祥寺さとう(昭和23年=1948年=創業のサトウ食品株式会社)の元祖丸メンチが有名だが、さとうのメンチは今や1個350円である。
2025年1月9日より1個350円(5個以上の場合は1個330円)とそれまでの300円(同280円)から引き上げられた。
■たまたま遭遇した「ぎょうざの満洲」
富士見台駅から自宅に戻ろうとして初めて気付いたのが「ぎょうざの満洲」練馬富士見台店。
「ぎょうざの王将」というチェーン店はよく耳にし、実際に食べたこともあるが、「ぎょうざの満洲」は知らなかった。
外から中をのぞくと、最近結構よく行っている熱烈中華食堂「日高屋」(ハイデイ日高グループ)くらいに客が入っている。
昼食はこの日持ち帰る”成果品”のだんごと太巻きを食べるつもりだったが、何となく気になって「ぎょうざの満洲」に入った。今後ニョキニョキ店が増えそうな気がしたからだ。
■王将はトータルバランスが最高
ネットで調べると、『ぎょうざの満洲』(本社・埼玉県川越市)の関連情報がたくさん出てきた。面白いのが『餃子の王将』(同・京都市山科区)とどちらが最強?を論じたロケットニュース24。
それによると、『餃子の王将』は日本トップクラスの餃子チェーン(直営店545店舗、FC店186店舗を含む731店舗)だが、世の中には王将最強説に異を唱える人もいて、その人は満洲を強く推しているらしい。「王将なんて満洲に一度行ったら行けませんよ!』という。
王将のファンは「一言で言うなら、王将は『安くて、色々選べて、大体何食べても美味しい』ことだ」と言う。
他の中華料理店の中でも、王将くらい、安くて幅広い中華が食べられるチェーン店もあるが、全体的な味のクオリティーがいまひとつだったりする場合がほとんどらしい。王将はトータルバランスが最高だとか。
■熱烈支持派のいる満洲
「また、王将は、他の中華チェーンと比べて明らかに居心地がいい。店内はキレイと言いがたいかもしれないが、肩肘を張らない気取らない雰囲気は最高。何度でも行きたくなってしまう」
片方の強烈な満洲ファンは「国産の野菜や豚肉を使用し、絶妙なバランスで配合された調味料が一まとめにする完成された餡。それをモッチリとした皮が包み、パリッとジューシーに焼き上げられるあまりに美味な餃子」だとぞっこん。
同ファンは「その餃子があまりに美味しかったので、私は思わず『食のラストエンペラーや!』と叫んでしまいました」と意味不明な感想を述べている。
論理的には王将派に分がありそうだが、弁論戦では満洲派の熱量が勝っているようにも思える。ただ議論のための議論で終わってしまっているのがもったいない。
私はどうかというと、餃子は光が丘のイマチカにある大盛軒(たいせいけん)一筋。王将や満洲に比べても全く遜色なし。大盛軒より上手い餃子は知らない。
悲しいことに昔あった大盛軒は光が丘で知らぬ者はいないくらい超有名店だったが、あまりに人気店だったがゆえに4年前の店舗改装でテイクアウト専門店に業態変更。大盛軒ばかりに人が入るので他の店は閑古鳥が鳴いていたことを思い出す。
現在は餃子を主に総菜類をテイクアウト販売している。今も出来上がった商品の番号を呼ぶ「~番さん」という声が耳に焼き付いて離れない。
■こんな立派な家も解体に
それにしても至るところで解体工事が行われていてびっくりする。富士見台周辺で見掛けたのがこの家。石垣で囲まれた瓦葺きの立派な家で、これまでどんな人たちが生活していたのか。
壊されたあとはどうなるか分からない。門構えも立派だし、このくらいなら跡地に3~4軒くらい家が建っても不思議ではない。
いつも光が丘駅まで歩く15分ほどの道沿いでも解体工事の案内板をつるした家が散見される。家の中ではそれなりの葛藤があったのだろうが、外からはうかがいしれない。
角っこの家はピアノを教える先生のお宅だった。よく練習している音が聞こえていた。
そのすぐそばには一級建築士の事務所があった。この時期には立派な八重桜がいつも咲いていた。事務所は取り壊され、今は隣の消防設備工事の会社の建物になっている。生活の臭いがすっかり消えた。
解体工事の際には看板設置が義務付けられている。案内板が出るのは工事の直前だ。あれだけ立派だった家もブルドーザーがやってきて2~3日のうちに整地されるのだ。
新築だったら、悲しいかなそれまでそこに何があったのかさっぱり思い出せない。新居が建ち、既に新しい生活が始まっていればなおさらだ。昔、何が建っていたかなど誰も関心がない。