【トランプ関税①】吹き荒れるトランプ旋風は米経済を本当に強くできるか=真の標的が中国だとしても、あまりにも大きな余波が自由貿易体制を揺さぶる

日本にも24%の相互関税を発表するトランプ米大統領(日本テレビ「真相報道バンキシャ!」)
■吹き荒れるトランプ旋風
トランプ米大統領の関税旋風が地球上に吹き荒れている。逃れるすべはどこにもない。最大の対象国は米国に代わって覇権を狙う中国だが、日本など同盟国も暴風雨の余波を受けてもがいている。
生まれてこのかた、世界経済は関税をゼロにする自由貿易が主導していると信じて疑わなかったが、トランプ大統領は自分の信念を貫徹するためその体制をひっくり返そうとしている。
トランプ氏が民間人である間は気にすることもなかったが、2024年11月の米大統領選で勝利し大統領に就任したことであまりにも大きな影響が出ている。
最大の大国が同盟国も含め実際に関税を課したので世界は突然、暴風雨の中に押しやられた。地球は運命共同体。逃れるすべは何もない。もがくしかないのだ。
■関税があるのは収入増と国の産業保護のため
そもそもなぜ関税があるのか。NHKデスク解説によると、関税を設けているのは国のお金を増やすことと国の産業を守るため。
輸入品に関税をかけた場合、米国の場合、関税は輸入する米国側の企業や人が払う。米政府の収入が関税分だけ増えることになる。
米国は関税を課すことによって入る増収分で、自国の経済を良くするのに使う。これが関税の1つの目標だ。
もう1つの目標は「国の産業を守る」。輸入業者は関税を支払わなければならない分だけ不利になり、米国で作ったものを販売する企業は関税を払う必要がないため有利になり、結果として関税によって守られることになる。
■トランプ氏は関税で「米経済は強くなる」
関税で米経済は強くなるのか。トランプ大統領は明確に「強くなる」と思っている。米国に入ってくる輸入製品に関税がかかれば、輸入品コストは上昇し、競争力は低下。米国では戦えない。米国企業が強くなる。
米国にいる人はみんな、Made in USA製品を購入すると米国産業が強くなる。これがトランプ大統領の考える「経済が強くなる」ことだ。
これに対し、経済の専門家の多くは「米経済は悪くなる」と見ている。関税が付加されれば、輸入企業はその分を負担するか、製品にその分を上乗せするか、どちらかを選ばなければならない。
米企業が負担すれば企業のコストが上昇し、業績が悪化する可能性がある。製品に関税分を上乗せした場合、物価が上昇し、それがインフレにつながる恐れがある。消費者にマイナスになれば経済は悪くなるというわけだ。
■法を活用し大統領の判断だけで権限を行使
トランプ大統領の力は強力だ。側近も議会も自分の意のままに動くような人材を配置し、反論できないようにしている。
トランプ大統領が決めたことは忠実に実行される。誰もノーと言わない。そんな組織になっている。
トランプ大統領は国家の非常時に大統領に輸入管理の権限を与える「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を活用し、大統領の判断だけで権限を行使できる。
同法は1977年に制定されたもので、「国家の非常時」という条件付きで、大統領はその権限を発動できる。トランプ大統領は米国の今が「国家の非常時」という主張をしている。議会にもその主張を受け入れさせた。
■MAGAの実現を信じるトランプ信者たち
トランプ大統領の主張が正しいのか、あるいは多くの経済学者の主張が正しいのか今は分からない。その結果が出るのにはそれなりの時間が必要だろう。関税合戦に巻き込まれた人たちは我慢するしかない。
トランプ大統領は「自分の政権が進めた関税政策の結果、米国経済は再び偉大になった(Make America Great Again)」ことを示す結果が4年後に出ると固く信じているのだろう。