【九州ドライブ旅行②】「尾道やすらぎの里」で一泊後次に目指したのは日本最古の湯「道後温泉」=途中訪ねた因島・大島には「村上水軍城」や「村上海賊ミュージアム」などの遺跡がずらり

豪華でもなく普通ぽい「公共の宿」

 

■尾道泊は公共の宿

 

尾道の観光地をのんびり歩いていたら夕刻になった。今夜のお宿は中心部から少し離れた山裾にある天然温泉「尾道ふれあいの里」(尾道市御調町高尾)。尾道市の奥座敷であり、公共の宿らしい。

ゴルフ&食泊パックや会議室&研修室などの利用客、さらには修学旅行生の利用も受け入れており、まさしく”公共”ぽい。

天然温泉は基本的に地元の日帰り入浴客向け。ただ宿泊客も受け入れており、宿泊者専用のレストランもあった。

「天然温泉」を名乗っており、露天岩風呂や西日本で唯一だというプラズマ湯もそなえている。どうやら尾道では健康増進を大事にする高齢者に人気の入浴施設のようである。

 

四季彩会席膳

 

■安いのは嬉しい

 

とにかく安い。消費税込みで2人で2万3000円。1人当たり1万円ちょっとで夕食プラス朝食付き。多賀レストインは素泊まりでこの価格だった。

「尾道ふれあいの里」はもともと広島県が地域住民の福祉増進や健康づくりを狙って整備した「総合福祉施設」。

その後、旧御調町(みつぎちょう)への移管を経て、尾道市との合併もあってリニューアルが行われ、現在の温泉宿泊・スポーツ合宿施設となった経緯がある。

理念的には国民宿舎に似ているようだ。尾道だから港町を意識した宿を選ぶ選択肢もあったが、後の祭り。あとで悔いても始まらない。そんなものである。

 

いよいよ最初の「新尾道大橋」(高さ77m、長さ546m)を走る

 

■尾道大橋とは”兄弟橋”

 

広島県の尾道市から愛媛県・今治市までの約70kmを走るのが「しまなみ海道」(西瀬戸自動車道)だ。瀬戸内海には6つの大きな島が浮かぶ。

向島(むかいしま)、因島(いんのしま)、生口島(いくちじま)までが尾道市、大三島(おおみしま)、伯方島(はかたじま)、大島(おおしま)の3つは愛媛県今治市に属する。

全部で7つ架かる最初の橋は「新尾道大橋」(1999年5月供用開始)。高さは海抜0mからケーブルを支える主塔の高さまでをいい、77mある。

 

新尾道大橋

本四高速のHP「しまなみ海道」から

 

■吊り橋よりも安くつくれる

 

1968年に開通した古い尾道大橋は塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を直接吊る斜張橋(しゃちょうきょう)で、1995年に完成した新尾道大橋も同じ工法で建てられた。

2つの橋は景観を大切にしており、”兄弟橋”とか”ふたご橋”とも呼ばれるようだ。

斜張橋は景観両側のアンカレイジというブロックが要らなくなって吊り橋よりも安く作れるのが魅力だという。

 

お城までの石段は180段ほど

これが水軍城(本丸)

 

■村上水軍の代表的な表紋は「

 

因島は村上水軍の拠点があった島。今も因島水軍城が建っており、山門から本丸までは150段の石段を登る。

資料館になっている本丸内は村上水軍にまつわるさまざまな資料がところ狭しと展示されている。

ウィキペディアによると、村上水軍は日本中世の芸予諸島付近の海域で活動した水軍。海賊とも呼ぶ。因島村上氏、来島村上氏、能島村上氏の3家で構成され、これら「三島村上氏」と呼ばれた。

三島村上氏は同族意識を持ちながらも、それぞれ独自に活動を行った。 代表的な表紋は「丸に上文字」。

 

村上3家の誕生

 

■中興の祖・村上師清

 

村上3家はどう生まれたのか。当然知りたくなってくる。しかし諸説あってどれも自説の信頼性を主張し、本当のところはなかなか分からない。

それを承知で書くと、村上師清(むらかみ もろきよ)氏という人物に行き当たる。村上師清氏は南北朝時代から室町時代にかけて活躍した瀬戸内海「村上水軍」の中興の祖とされる武将らしい。

同氏は信濃の国の村上氏出身とも、南朝の重臣・北畠親房の孫(顕成)とも伝わり、能島、因島、来島の「三島村上氏」の基礎を築いたとも言われる。

水軍城内には「村上師清には3人の男子があり、それぞれ3つの島に分立させました。長男義顕を能島、2男顕忠を来島、そして3男顕長を因島に配置しました」

「ここに同門意識による統合によって、後世に知られる能島村上氏、来島村上氏、因島村上氏の村上3家が生まれました」(比治山短期大学美術科 川野詩穗)と書かれた看板が設置されていた。

 

二の丸で軍議を開く武将たち

 

■全国で唯一の水軍城

 

因島水軍城は1983年12月1日に築城された全国でただ1つの水軍城。水軍の故郷にふさわしいものと歴史家・奈良本辰也氏の監修により再現された。

水軍城が築城されたのは当時因島に勢力を誇っていた清原守高氏の居城「片苅城」(かたがりじょう)跡地。

ただこの地には過去に天守が存在したことはなく、いわゆる「城郭風建築物」だったらしい。

二の丸(66㎡)は展示室、隅櫓(すみやぐら、124㎡)は展望台、本丸(271㎡)は水軍資料館として一般に公開されている。

 

村上海賊ミュージアム(HPから)

 

 

■大島には村上海賊ミュージアム

 

村上水軍に由来する関連施設は愛媛県側の大島にもあった。「村上海賊ミュージアム」(今治市宮窪町)がそれだが、こちらは鉄筋コンクリート3階建ての立派な建物。しかしたどり着いたら休館日で参観は適わなかった。

それで外から見物することにした。因島水軍城は山城だが、こちらは海に面したむしろ出城。1階は海賊ライブラリーや講座室、2階常設展示室、3階が展望室になっている。

目前には瀬戸に浮かぶ”海城”とも呼ぶべき能島城跡、足元にはしまなみ海道が広がる。

 

村上海賊が使用していた「小早船」(村上海賊ミュージアム蔵)

 

■「日本最大の海賊」

 

能島城跡は潮流が激しい難所に浮かぶ天然の要塞だ。無人島だが、ミュージアム近くの港からは実際に島へ上陸できるクルーズ船などが運航されているとか。

能島村上家は瀬戸内海の海上交通を支配し、戦国時代には強力な水軍力で活躍した。

「水軍」は江戸時代以降に用いられた呼称であり、当時の古文書などでは「海賊」と呼ばれており、今治市も新設する際、「村上海賊ミュージアム」と命名したようだ。

日本を訪れた宣教師ルイス・フロイスは、能島村上氏を”日本最大の海賊”と称したと伝えられる。

 

村上武吉・景親親子が着用した陣羽織(村上海賊ミュージアム蔵)

 

■茶や香をたしなむ文化人としての側面も

 

同ミュージアムでは能島村上氏について以下のように紹介されている。武および息子の元吉・景親の時代に全盛を謳歌する能島村上氏は、西は北部九州から東は塩飽諸島に至る海上交通を掌握した。

平時には瀬戸内海の水先案内、海上警固、海上運輸など海の安全や交易・流通を担う重要な役割を果たした。

戦時には小早船(こはやぶね)を巧みに操り、「ほうろく火矢」など火薬を用いた戦闘を得意とした。その一方で茶や香をたしなみ、連歌を詠む文化人でもあった。

一般に「海賊」と聞けば、理不尽に船を奪い金品を略奪する無法者のパイレーツをイメージするが、今治市が同施設を2004年10月に開館した意図は海賊が武将としての戦略性を備えた存在でもあったことを伝えたかったようだ。

村上水軍が活躍したのは戦国時代から江戸時代初期。村上水軍については何も知らなかったが、和田竜の『村上海賊の娘』(2013年、新潮社)がその存在を世界に知らしめた。

 

大三島で買った小夏

 

■小夏が好き

 

見落とした神社や観光スポット、時間がなくて見落とさざるを得なかった施設も多い。旅に出る前に予習しておくのが一番だが、おうおうにして旅から帰ってから観光資料や写真を整理しながら「あそこに行っておけば良かった」と愚痴をこぼすのが普通。

今回もその「普通」をしている。大三島にある天照大神の兄にあたる大山積神を祀る「大山祇神社」(おおやまづみ神社)や伯方の塩・大三島工場も見学したかった。

しかし「大山祇神社」には立ち寄らずになぜだか隣接する道の駅「しまなみの駅御島」には寄っている。トイレタイムなのだろう。そこで見つけたのが「小夏」。

小夏は高知県で特産品として栽培されている。全国的に「日向夏」とも「ニューサマーオレンジ」とも言われている。それに愛媛県今治市の大三島で出会った。

小夏の白い甘皮は肉厚でふかふかしており、りんごのようにスルスルと剥き、白い甘皮と一緒に食べることで、小夏の爽やかな酸味に加味され上品な甘味を楽しめる。

このブログでも何回か小夏を取り上げているが、やはり高地産が多いようだ。それも夏小夏。大三島は春小夏となっている。どうでもいい。とにかく小夏が好きだ。

 

小高いところから下をのぞくと道後温泉本館が見えた

 

■圧倒的な歴史とレトロな建築美

 

念願の「道後温泉」にやってきた。道後温泉。有名である。日本人で知らない人はまずいない。

なぜ道後温泉がそれほど有名か。なぜ長年これほど愛され続けているのか。よく分からないが、一度は来てみたい湯処だ。

開湯以来約3000年といわれる日本最古級の歴史と道後温泉のシンボルともいうべき「道後温泉本館」のレトロな建築美がすばらしい。これを一度は味わってみたいと日本人なら誰しも思うわけだ。

温泉街に付きものの商店街も充実している。それも道後温泉本館のすぐ目の前から短い範囲に凝縮されている。

湯上がり客をあきさせない仕組みがちゃんとできているのだ。これならそぞろ歩きも楽しくなるわけだ。

 

道後ハイカラ通り(ツーリズム四国HP)

 

■湯上がり後には「ハイカラ通り」が待ってるよ

 

道後温泉本館前から道後温泉駅まで伸びる約250mのL字型アーケード商店街の「道後ハイカラ通り」(道後商店街)。スイーツからおつまみまで名物グルメがいっぱいだ。

湯上がりさんぽするには格好のお店が約60店舗も並んでいる。そぞろ歩きをしながらお店をひやかすだけでも楽しい。

この日も大勢の観光客がひしめいていた。どの顔もほころんでいる。難しい顔なんか見つけるほうが難しい。当然だ。みんな楽しむために来ているのだから。

 

135段の石段を登ると・・・

 

■お宿は「オーベルジュ道後」

 

道後温泉のお宿は「オーベルジュ道後」。料理旅館だが、イタリアンである。前夜が会席料理だったので、日本料理が続くのをあえて避けた。

毎日、そんなにのんびりお酒を楽しんでもおれない。今夜は食後も街歩きをしようと思っている。お酒抜きである。

オーベルジュ道後から東の方角を見ると急坂が伸びており、「伊佐爾波坂」(いさにわざか)という名前が付いている。せっかくだから登った。坂の上には良い眺望が待っているはずだ。

 

伊佐爾波神社(いさにわじんじゃ)

 

■心願成就の神様

 

坂は登ってみるものである。予想を裏切らなかった。伊佐爾波神社(いさにわじんじゃ)だった。知らない神社だったが、なぜこんなに各地に立派な神社があるのだろう。倒産しないのだろうかと心配になる。

流鏑馬(やぶさめ)の成功祈願が成就した御礼として社殿が建て替えられた歴史から、勝負運に御利益があるらしい。心願成就の神様でもあり、受験生やスポーツ選手が多く訪れるといわれるようだ。

日本に3例しかない「八幡造り」の豪華な社殿は国の重要文化財に指定されている。境内からは松山城を含め松山平野が一望できる。

 

こちらが正面

 

■1894年誕生の公衆浴場

 

道後温泉本館は1894年に誕生した公衆浴場。当時でも珍しいとされる木造三層楼。塔屋を設けた重厚感のあるたたずまいが評価され、1994年に現役の公衆浴場として初めて重要文化財に指定された。

1階が神の湯(かみのゆ)と霊の湯(たまのゆ)の2種類の浴場。2階が皇室専用浴室の又新殿と大広間の休憩室、3階は個室の休憩室と貸切室になっている。

それぞれを組み合わせた6つの入浴コースがあるわけだが、とにかくどういうものかを知りたかった私は神の湯に入浴した。

 

3階の間取り(道後温泉本館HP)

 

■初めてなのでまずは「神の湯」で

 

浴室は石造り。同じような観光客で浴室はあふれ、なかなか入れなかったが、なんとか間にもぐり込んだ。団体で入っている人が多く雑談風発の場だった。

石造りの浴室に砥部焼の陶板壁画が飾られ、「湯釜」と呼ばれる湯口が鎮座する浴槽は、道後温泉本館の独特な雰囲気を作り出していた。

浴槽で隣の人に話し掛けたら、関西からバスツアーで温泉巡りをしているという。道後温泉は初めてらしい。やはり一度は来てみたいと思っていたそうだ。そんな人が多い。

「こんなものでいいかな」と思って浴室から出てきたら30分ほど経っていた。今回は最初だし、下見。次に来るときは是非3階の個室を使いたい。次が実際にあるかどうかは分からないが・・・

 

いずれは3階の個室でくつろぐことを夢みながら(道後温泉本館HPから)

 

■個室の1つを「坊っちゃんの間」に

 

3階個室の北西の角部屋が「坊っちゃんの間」と名付けられている。1895年(明治28年)に松山に赴任した夏目漱石がその年の10月、正岡子規とちょくちょく利用したといわれる個室のことだ。

道後温泉本館の湯上がり後の楽しみは、浴衣を着て休憩室でゆっくりくつろぐことらしい。休憩室は二階席、貸切室、個室があり、お茶とお菓子の接待が受けられ、浴衣の貸し出しも行われているようだ。

のんびりとそういう情緒をぜひ味わいたいものだ。物珍しさをつまみ食いするだけだと情緒も何もあったものではない。

 

坊っちゃんカラクリ時計(道後温泉公式エリアガイド)

 

■「坊っちゃんカラクリ時計」

 

道後温泉駅前にある「坊っちゃんカラクリ時計」。1994年、道後温泉本館建設100周年を記念して作られた。

午前8時から午後10時までの間、1時間ごとに道後温泉らしい音楽とともにせり上がり、小説『坊っちゃん』の登場キャラクターが温泉客を歓迎する。

カラクリ時計の隣には道後温泉の源泉を使った「足湯」もあり、人気スポットになっている。

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