‘会見メモ’ カテゴリーのアーカイブ

「希望を持てないことが不満ではない」開沼博氏

カテゴリー: 会見メモ, 投票/選挙/改元

2019/08/19  20:27


 

開沼博教授

 

ゲスト:開沼博(かいぬま・ひろし)立命館大学衣笠総合研究機構准教授
テーマ:2019年参院選後の日本 民意を読む
2019年8月19日@日本記者クラブ

 

社会学者である開沼博氏が参院選後の日本の民意を社会学のアプローチで分析した。

・エネルギーに対しては強い意志があるというよりも極力触れないでおこう。触れればどちらにせよ損するリスクがある。棚上げにしようという意思を感じる。米軍基地、沖縄問題にも通じる。分からない、ぼやっとしているのが現状だ。

・2013年9月に日本記者クラブで話をした。12年7月に官邸前デモですごいことが起こっていた。1968年以来。同年9月くらいまでは脱原発のうねりが起こった。同年12月に選挙があった。自民党がぼろ勝ちした。社会が変わる熱狂は雲散霧消。逆ブレの傾向が起こっている。

・空白の3カ月に何があったか。これを直視し、きちんと総括しないと革新への熱狂と逆ブレが起こる。独裁・恐怖政治がやってくる。2012年7~9月。

・そして今、安倍晋三政権は戦後一番長い政権である。なぜか。

・2012年12月の選挙以降、自公が常に勝利。前提条件は変わるのに同様の結果。ポピュリズム的な政治運動が始まっていったのが12年12月。「未来の党」(代表・阿部知子衆議院議員)があったが、惨敗しあっという間になくなる。民主党も下野する流れに。

・13年は落選したものの、山本太郎が出てきた。14年は細川・小泉連合が都知事選で脱原発を訴えた。福島原発関係で『美味しんぼう』バッシングがあったり、朝日新聞誤報事件などがあり、熱狂が過ぎたぞ。

・「そもそも選挙の報道がめちゃめちゃ少ないじゃないか」(白井聡)。ここらへんから始まっている。自分たち自身で煽ったり、他方では旧来型のマスメディアが大人しくさせられる流れができてきた。

・3年前の都知事選では小池百合子が増田寛也、鳥越俊太郎に勝利。この当たりから原発でも安保法制でもなく、何をやろうか。モリカケ問題。築地移転。メディアイベントとしては盛り上がったが、地方の政策とどうつながっているのか。有権者は取り残された感じ。

・アジェンダセッテイングが喪失されているのではないか。疑似アジェンダセッテイングではないか。17年には希望の党の腰砕けがあった。「未来・希望」の喪失から「いまの絶望」へ。

・未来が見えない。そういう中で希望も持てない。

・希望を持てないことが不満につながるか。必ずしもそうではない。未来の期待値を持たないから、それが奪われるというあせりもない。意外とそこで満足する。『絶望の国の幸福な若者たち』(社会学者の古市憲寿=ふるいちのりとし氏)。

・結構な人が未来に絶望しつつなぜか満足してしまうところがある。何となくみんな安定志向で足りない部分を持ちながらも、そこにとどまり、現政権が支持される。

 

「中国経済は三重苦」津上俊哉氏

カテゴリー: 会見メモ, 政治/外交/国際/軍事, 科学/技術/イノベーション

2019/08/08  22:46


 

 

ゲスト:津上俊哉(つがみ・としや)国際問題研究所客員研究員
テーマ:中国経済と米中関係の行方
2019年8月8日@日本記者クラブ

 

国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏が「中国経済と米中関係の行方」について話した。

・中国経済には異なる2つの経済が同居している。

・ITを利用したニューエコノミーは躍進。民営企業が主役。QRコードを利用した低コスト決済サービスが大きく普及。今や日本は周回遅れ。Ⅰ(デジタル、スマホ、AI、ビッグデータ)、E(EV=電気自動車)、B(ビッグサイエンス)。実地に試してみる・問題があればそこで直す。社会実装のスピードとパワーは中国の右に出る国ない。

・暗いのはオールドエコノミー。重厚長大型製造業、不動産、公共投資。主役は国有企業や地方政府。投資と借金頼み。

・街頭カメラ、顔識別システムを用いた治安システムはどこの国でもやっていること。中国は「やっているからな」とそれを国民に知らしめる。国民はそれで安心し嫌ってばかりではない。

・EVはうまくやっている。成功した。世界のEVの半分は中国で走っている。EVでは勝者に。人為的なマーケット創造。Big scienceが離陸し、中国の科学技術は端倪すべからざるところにきた。優秀論文の国別引用回数でもコンピューター科学、数学、化学などで米国を上回った。20年後には毎年中国人のノーベル賞受賞者が毎年出る。最後に日本人が受賞したのは何年前になるということになるだろう。

・「中国製造2025」(2015年発表)は各国で強い反響を呼び、IOT(米)、インダストリー4.0(独)、コネクテッド・インダストリー(日)などの構想の競争状態に。中国科学技術水準の急速な向上を見て、中国のtargeting型産業政策に対する欧米の脅威感、警戒感が急上昇。

・米国の中国に対する警戒感、脅威感は過剰評価されている。恐れすぎている。勝負はこれからだと思える部分はたくさんある。足下をみて未来を予想するからだ。GDPも抜かれる可能性があるし、科学技術でもそう。対中不安感の行き過ぎている部分がある。

・ニューエコノミー経済が好調の一方で、経済は3重苦に直面している。

・過去10年間の投資のやり過ぎた。バブル後のバランスシート調整期に入った。ツケはやはり払わざるを得ない。これは避けられない。これがだんだんはっきりしてきた。

・民営企業を取り巻く厳しい環境。不景気、行政の「一刀切」問題、資金調達難。極左言説の横行、根底にある「官功なりて民は万骨枯れる」構造。

・マグニチュード的にはこの2つが極めて大きく、その上に泣きっ面に蜂のように重なってきたのが米中貿易戦争。世間的にはトランプが戦争を仕掛けたので中国経済が失速したという結びつけ方だが、実態は少し違う。経済が悪化している時に「泣きっ面に蜂」だ。

全英ゴルフVの渋野日向子会見

カテゴリー: スポーツ, 会見メモ

2019/08/06  22:06


 

20歳で日本記者クラブに登壇した渋野日向子さん

 

全英女子オープンゴルフのトロフィーを抱く渋野日向子さん

 

習っていた習字が生きた「笑顔」

 

ゲスト:渋野日向子選手(しぶの・ひなこ)
テーマ:AIG全英女子オープンゴルフ優勝者
2019年8月6日@日本記者クラブ

 

ゴルフのAIG全英女子オープンで日本勢として42年ぶりのメジャー制覇を達成した渋野日向子選手(20)が帰国直後の6日、日本記者クラブで会見した。今をときめく時の人を見ようと会見場に詰めかけた。

渋野選手は冒頭、「日本人としては42年ぶりで、私が優勝して良かったのかなとは思うが、今は嬉しい」と素直に喜びを語った。

「英国には静かに来て、静かに帰るつもりだったが、とんでもないことになった。羽田空港での歓迎ぶりを含め大フィーバーだが、これを率直にどう受け止めているか」と聞かれ、「今年に入って3勝したが、日本記者クラブで会見するなど考えてもいなかったことなので緊張している」と述べた。

渋野さんは空港での会見で「強さの秘訣は笑顔でいられること」と語っていたが、そう言えるようになったのはいつごろからかと聞かれ、「今年から」と答えた上、「笑顔になって結果が出だしたのが今年からだから」と付け加えた。

今回の全英オープンで見えた自分の伸びしろについては「優勝はしましたけど、グリーン回りの精度はまだまだだなあと思ったので、これからも成長できるなと思っている」と答えた。

また今回のコースが英国特有のリンクスではなく、日本に似た林間コースだったことについて、「日本に似ていてやりやすかった」とも述べた。

「低投票率は社会喪失状態の現れか」白井聡氏

カテゴリー: 会見メモ, 投票/選挙/改元, 政治/外交/国際/軍事

2019/07/31  17:39


 

ラフな格好で現れた白井氏

 

ゲスト:白井聡(しらい・さとし)京都精華大学専任講師
テーマ:2019年参院選後の日本・民意を読む
2019年7月31日@日本記者クラブ

 

『永続敗戦論』『国体論ー菊と星条旗』などの著書がある政治学者の白井聡・京都精華大学専任講師が参院選から見る民意について語った。

・山本太郎の快挙ー民衆は何をなし得るのか。彼とは2,3度会って人となりも知って好感も持っていたが、今回は山本太郎の躍進だ。彼の快挙であることは重々強調されるべきだと思う。

・投票日前はほとんど無視される中、お金も一文無しから始めた。寄付で3億円くらい集めた。ゼロからの出発だった。

・山本太郎は「れいわ新選組」を登録した。政治家が使おうとしても使えないようにした。巧妙なやり方だ。自民党の党内的事情から生まれた参議院選の特定枠に自分は落ちてもいいから重度身体障害者2人を送り込みたい。立法過程に当事者そのものが入るのはものすごいことだ。

・ハンセン症患者の政治利用。誠に下劣な政治。

・90数万票取って本人は落選というのは世界的なニュースになる。こんな政治家が日本にいたんだと一気に注目を集めた。

・永田町的にスキルが上達したから良い政治家と言えるのか、そんなことはない。3.11原発事故で地獄の釜のフタが開いた。やっぱりこういう国だったんだという本当の姿がベールを外してぬっと姿を現してきた。私はそれを永続敗戦レージームという名前を付けた。

・君たちは何もできやしない。大事なことを決めるのは私たちだ。お前らは何の権限もない。お前たちができるのは大人しく働いて大人しく死ぬだけだから。お前たちは何もできない。このメッセージが社会を覆っている。これを敏感に受けているのが若年層。

・いやわれわれ群衆は本当は何もできないんではないんだ。俺たちは何かをなし得るんだ。本当は潜在的にそういう力がある。権力はこうした図を嫌っていて、また恐れてもいる。だから実態的には意味のないことを防ごうとしている。

・野党の中心はどこにあるのか。勢いの点から言うと、もう枝野じゃないよね。枝野から太郎へ。枝野は若者たちの声を受け止めそこなったんじゃないですか。

・自民党を中核とするところの永続敗戦レジームに対する旧民主党とは何だったのか。半分は自民党に居損なった人たちが在籍しているだけで中身は自民党と変わらない。他方で一部戦後の異様な対米従属体制に批判的なスタンスを取る人たち。この奇妙な状態から脱出しなければいけないと考えている人がいた。

・その人たちがやろうとしていることが表面化したのが鳩山政権だった。普天間基地の最低でも県外へ。永続敗戦レジーム陣営がアレルギー反応を示した。陣営は自民党だけじゃなく、政官財メディア全部だ。

・日米安保体制は戦前の天皇制の後継者。日米安保体制を基礎としない日本を考えること、想像することもこれらも反国体の思想だから想像してはならない。想像するのは非国民だ。これが戦後日本の対米従属の異様さ。

・鳩山政権は無防備に踏み出していった。猛烈な反撃を食らって引きずり下ろされた。みんなやりたいことを共有した政権を作れなかった。民主党がごった煮集団だったから。

・とにかく議員になりたい政治ゴロがわんさか寄ってくる。身体検査がなっていない上、原理原則ではなく党幹部の好き嫌いで物事を決めている。理念を共有することも難しい。

・立憲民主党の枝野さんは日本の対米従属を相対化することが理念だが、民主党内の立憲民主党なるもの、小澤一郎的なるものを共有していない。していない理由もレベルが低い。

・枝野さんは小澤、鳩山ラインに極めて批判的。批判の根拠はよく分からない。民主党失政のツケを小澤・鳩山に押しつけた。中学・高校の部活動と同じレベルだ。民衆からの期待に応えることをやってこなかった。

・ポピュリズムという言葉はほとんど使わない。あまりにいい加減な言葉だから。何を言っているのかさっぱり分からない。大衆迎合主義。分析の概念としてはほぼ役に立たない。

・れいわ新選組は無縁の体現者。もう少し分かりやすく言うと、消費税とは何か。大企業を富ませるために使われてきた。これは廃止だ。これは階級闘争の宣言だ。

・今の階級が腐った縁(関係)になっている。だからこれを断ち切るんだ。無縁になるんだ。れいわ新選組が突き出して見せてくれたことに面白さがある。議会制民主主義はだめだと言われていたが、ここに差し込んだ希望の鍵だ。

・絶望という視点からみると、「NHKから国民を守る党」の躍進。これは何なんだ。こんなのが議席を取った。政党要件満たしたよ。驚くべき現象だ。

・立花孝志党首(51)は大変優秀な人だ。1活動家から始め地方議会で議席を取り、同志を募って議席を増やし、遂に国会に議席を得た。同志を増やす過程で「これはお金になるよ」「もうかるよ」「勝ったらリッチになれるよ」。

・NHKへの嫌悪が国民に広がっている背景がある。「勝手に電波を流しておいて見てるのか金払え」。放送法はとんでもない悪法だ。しかし、まあ悪法だが、性がないんじゃないか。ましだ。

・しかし安倍政権になってからの政治部主導するところの報道の姿勢は度を超していると思わない瞬間がないでもない。オンデマンドで金を取るのは料金の二重取りではないか。無料開放するのが当たり前。こういうことをやっている限り激しく嫌悪されるのは当然だ。これが表面化した。

・しかし、これは非常にやばい現象だ。議員も拡大しており、ゴミためと化している。質の低下があるレベルを超えてしまった。こういう議員が続々現れている。このゴミがどこから湧いてくるのか。検証が必要だ。

・小選挙区制の弊害が大きい。世襲だけでは足りない。公募をかける。公募で来た奴は最低、最悪。政治家ごっこをするのが若いころから好きな連中。馬鹿で中身がないと徹底して軽蔑していた。

・薄っぺらいくせに議論好き。やたらと憲法問題と安全保障問題に拘りたがる。こういう人種が卒業後に松下政経塾とかに入ってあるいは官僚になって政治家への道をばく進し始める。

・自民党から出られれば最善。落ちたら旧民主党、みんなの党とか維新の会。何の勉強もしていない。とにかく政治家になりたい。その欲望だけ。最も政治家にしてはいけない人物。

・絶対政治家にしてはいけない人物を一所懸命選んでその人たちだけが国会議員になる。地方議員もいる。掃いて捨てても掃いて捨てても現れてくる。議会制民主主義に絶望しますよ。これは低投票率として現れてくる。

・投票率は74%から50%、48%と低下。はっきりと貧しくなっているのに投票所に戻ってきていない。

・低投票率は政治的には表層のこと。政治的に無関心がある。社会的無関心。社会って何か。社会的無関心な人にとっては社会は存在しないのではないか。

・サブカルチャーの世界系。世界は終わるが、「私と彼女の世界は永遠」。私と世界はあるが、社会は一切登場しない。

・サッチャー「社会なんてものは存在しない」。社会的な意見なんてそもそも持っていない。存在しないから。社会喪失状態が現れている。低投票率は小さな一端の現れ。

・「選挙に行けと言われると上から目線。消費税が上がるといわれてもそれがどう生活に影響するか分からない」(20代)。そもそも何かを分かろうとしていない。つもりがないらしい。「それはちゃんと分かったほうがいいじゃないですか」「分からなければならないですよ」とアドバイスをすると、「それは上から目線だ」とぶち切れる。どうしたらいいんですかね。

 

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」

カテゴリー: 会見メモ

2019/07/18  23:51


 

台湾→与那国島への渡海に挑んだ(右は海部代表、真ん中は原丸木舟キャプテン、左は漕ぎ手の田中氏)

 

ゲスト:海部陽介(かいふ・ようすけ)国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ長
原康司(はら・こうじ)丸木舟キャプテン
田中道子(たなか・みちこ)舵取り
テーマ:「3万年前の航海徹底再現プロジェクト」

日本列島に初めてホモ・サピエンスが現れたのは3万8000年前後の後期旧石器時代。最終氷期の後半で、海面も今より約80m低かった。

人類は海を越えて日本列島に渡ってきたことが判明している。その海への挑戦にはどのような困難があり、祖先たちはそれをどう乗り越えたのか。

この謎に迫るために始動したのが「3万円前の航海 徹底再現プロジェクト」だ。世界でも先駆的な試みとして、今年7月5日付の米科学誌サイエンスでも紹介された。

本プロジェクトは2013年に海部代表によって企画され、準備の後、16年4月のクラウドファンディング成功で正式にスタートした。また途中経過を積極的に外部公開したことでも注目された。

今年7月7日14時38分に台湾を出航し、45時間10分かけ225kmを走破して7月9日11時48分に無事に与那国島に到着した。

 

「AIは万能ではない」

カテゴリー: 会見メモ, 科学/技術/イノベーション

2019/05/27  15:37


 

新井紀子国立情報学研究所教授

 

ゲスト:新井紀子(国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授)
一般社団法人 教育のための科学研究所理事長・所長
テーマ:日本記者クラブ総会記念講演会
2019年5月27日@日本記者クラブ

 

国立情報学研究所の新井紀子教授(1962年10月~)は27日、日本記者クラブで講演した。新井教授は「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト(東ロボくん)を指揮する一方、幅広い年齢層を対象に読解力を調べる「リーディングスキルテスト」を主導した。

これらの経験をもとにした著書『AIvs教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社、2018)で示された子どもたちの読解力とAI開発の現状は話題を呼んだ。

また近著『日本を殺すのは、誰よ!』(新井紀子、ぐっちーさん、2019、東邦出版)ではAIの台頭でホワイトカラーの半分が機械代替される時代になりつつある日本の課題とその処方せんについて聞いた。

新井教授は日本の数学者。一橋大学法学部に入学したものの、数学の面白さに目覚め、4年の時に数学基礎論の研究が盛んだった米イリノイ大学数学科に留学し、竹内外史教授に師事。1年でイリノイ大学数学科を1年で卒業し、奨学金を受けて、修士課程に進学。1990年に修士号を取得し、帰国した。

AI学者は物理学者に多いが、新井教授は数学者。東大理学部物理学科卒業のサイエンス作家、竹内薫氏によると、「数学と物理学とは小説とノンフィクションの差」があるという。

・2010年に『コンピュータが仕事を奪う』(日経出版社)を出したが、売れなかった。出版が早すぎたんだと思う。当時は検索しても人工知能やAIという言葉は1回も出てこなかった。13年くらいに『AIが仕事を奪う』と書けば、ベストセラーになっていたはずだ。10年にAIブームが始まると思っている日本人はいなかった。

・コンピュータと書いたが、実際はディープラーニングを含めた機械学習。この機械学習とデジタリゼーションがホワイトカラーの仕事を半分奪うというのが『コンピュータが仕事を奪う』の結論だ。今も変わらない思いだ。

・AIに対する危機感が日本人は薄い。この危機感を共有してもらえるかと考えた。これが11年に「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを立ち上げた理由だ。

・AIは人間と同じように考えられるニューラルネットワーク(神経網)とどの記者も書いたが、これは間違いだ。人間がどのように考えるかという数字モデルを使ったことでしかない。AIは万能ではない。

・AIはソフトウエアにすぎない。関数の一部に計算可能関数(数字)があって、その一部にAIと呼ばれている関数が含まれている。

・機械翻訳の場合は、日本語の文字列というセットから英語の文字列というセットへの転換だ。言葉がどんな確率分布に従っているかはだれも知らない。

・機械学習においては正解は人間が作る。それを100%正しいと信じているので正解データの誤りをデータは越えられない。AIが人間の誤りを直すことはできない。人間を越えるシンギュラリティ(技術的特異点=AIが人類の知能を越える転換点)を越えることはあり得ない。

・AIと言えども、Siri (Appleの開発したAIアシスタント)もAlexa(Amazonの開発したAIアシスタント)もペッパーくん(ソフトバンクの開発したヒューマノイドロボット)も東ロボくん(国立情報学研究所の開発したAI)はどれも日本語も英語も全く分からないし理解できない。このことをきちんと書いた記者が過去4年間いなかったのは非常に残念だ。仕組みを分からずに記事を書くことが問題点でもあったことを意味している。

・素敵な手品には必ずタネと仕掛けがある。あばいてこそがメディアなのにこの4年間それをしてこなかった。大変残念なことだ。

・人類の歴史上、どんなにお金を積まれてもすぐできないことがあって、それは数学だ。双子素数。3と5、11と13、17と19などだ。無限にあるか。古代ギリシャのときから問われてきたが、いまでもどうやって解いたらいいのかとっかかりすら分からない。2000年経っても分からない。数学は金を積まれても無理なものは無理。

・GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)がどんなに金を積んでも無理なものは無理。

・変なホテルのロボットが激減している。太郎は男の子か女の子か聞くと、分からない。AIは意味を考えていない。われわれがどんなにAIに踊らされてきたか。

・統計が分厚いところと薄いところ。みんなが言いそうなことなら言える。

・AIに関心のある記者ならこれくらいの根性がないとだめだ。本当のことに迫ることはできない。機械翻訳というのは日本語の文を英語の文に訳するのではなくて、日本の文字列を英語の文字列に変換する。文と非文の境が分からないから。でも結構正しい。なので、ホワイトカラーのすべては代替されないしシンギュラリティはこないけれども、それでもホワイトカラーの多くは代替される。

・10年に東ロボくんプロジェクトで相談に行った。私は今のAIは東大に入れないことは分かっている。AIブームが来る。アメリカの検索などのサービス系からくる。どこまでがAIができてどこからができないのか。誰かがその限界を確定する必要がある。そのリスクはAI学者はとれない。AI学者は長くブームが続くことを祈るだけ。そうでなければ修士の学生を食べさせていけない。口が腐ってもAIに限界があるとは言えない。これを言えるのは金を必要としていない数学者だけだ。

・数学、特に数理論理学はAIを作った張本人だ。コンピューターとAIという概念をもともと作ったのはうちの分野。私には責任がある。

・東ロボくんプロジェクトは16年に関関同立に入れる。しかし、東大には絶対入れない。日本の70%の大学で合格可能性が80%以上という成績を取っている。

・GAFAはすばらしいテクノロジーを無償で提供すると言っているが、恐ろしい。そのことを通じて結局はデータとお金がGAFAに集積している。各地域から一番頭の良い人がどんどんGAFAに取られている。グーグルCEOのサンダー・ピチャイだってグーグルに行った。奨学金をもらってシリコンバレーに行った。

・どんどんローカルコミュニティーは疲弊して富の再分配なんてできない。これはどうするんですか?バージン諸島に隠し口座を持っていて国際的な富の再分配に寄与しない。インスタグラムなんかすごい悪い会社だ。1000人も雇用していないのに価値が高すぎる。

・日本の会社は生産性が低いとメディアは叩くが、雇用をしてくれるのは最大の社会貢献だ。大して金ももらっていなくても雇用を守ってくれている。文句を言わないでほしい。

「米のベネズエラ政権転覆策は失敗」-駐日大使

カテゴリー: 会見メモ, 政治/外交/国際/軍事

2019/05/10  23:33


 

セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使

 

セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使が日本記者クラブで10日会見し、米国がグアイド国会議長を押し立てて強引に行ってきたマドゥロ政権転覆策が失敗に終わったとの見方を示した。

イシカワ大使は日系2世。2005年に32歳の若さで駐日大使として着任。14年間にわたって大使を務めている。

・日本では改元行事のただ中にベネズエラではクーデタのニュースが入ってきた。それを引き起こしたのは民主主義を標榜し、大統領選挙を求めていたグアイド国会議長だった。

・しかし、24時間以内に事態は収束した。その背景が分かってきた。2つの疑問に答えたい。4月30日に一体何があったのか。それとベネズエラの政治情勢に及ぼす影響について話したい。

・バランスのとれた報道があった。一方で、空軍基地の中でクーデタを呼びかけたと報じる新聞もあった。以下タイムラインに従って事実を述べる。

・4月29日18時に、ベネズエラ情報局にいた兵士たち100人ほどに「刑務所で暴動発生、それを鎮圧するから出動用意との上官から指示」

・4月30日の午前3時にバスがきて乗せられて空港近くの高速道路で下ろされた。

・午前5時前、兵士たちは初めて「君たちはベネズエラの歴史をつくるのだ」とクーデタであることを知らされる。

・その直後から兵士たちは騙されたことを知り、離脱し始める。

・5時すぎ、グアイド氏はビデオを通して「自由のための作戦だ」と演説。しかし、このとき、その背後には20名ほどの首謀者グループしかいなかった。

・6時18分 ベネズエラ政府のツイッターでクーデタの企てを防ぎ始めたと発表。国民に冷静に対応するよう促す。

・7時すぎに一部市民500人ほどが基地に入ろうとして混乱するが、事態は沈静化に向かう。

・首謀者の一人ロペス氏(グアイド氏と同じ党に所属する議員)はチリ大使館に逃亡。グアイド氏は行方をくらまし拘束を逃れたものの、司法の裁きを受けることになるのは時間の問題だ。

・兵士たちが下ろされたのはアルタミラ・インターチェンジ。カラカスに向かう重要な交通の要所。つまり兵士らは空港基地の外にいた。

・別のビデオによると、ロペス氏は落ち着かない様子で、兵士の規律もバラバラだった。1人の兵士の証言によると、「騙されて現地に連れて行かれた」ことが分かる。

・なぜ今回のクーデタ未遂事件が世界を駆け巡る大事件になったのか。市民の参加も少なく重要性に欠けるのになぜ大事件になったのか。ベネズエラの政治的方向性を見せる事件だったから。

・グアイド氏は遂に実像を見せた。同氏はこれまで表面的にしろ民主主義を標榜し選挙を求めてきたが、実際武器をとり、暴力に訴え権力を手に入れる用意があることを暴露した。嘘やだましを軍隊に対して働くことまですることも分かった。

・アメリカとともにグアイド氏を後押ししてきた南米諸国に変化が生じてきている。米国の支持するリマグループ会議はベネズエラの政権交代を求めているが、同グループでさえ、5月3日に開かれた会議で姿勢を少し変化させた。いくつかの国はグアイド氏から離れる行為を示した。

・米国の介入主義は続いている。ポンぺオ米国務長官は4月30日、「本日、グアイド暫定大統領が自由作戦を発表した。米政府はベネズエラの人々が自由と民主主義を求めることを全力で支持する」と述べた。

・グアイド氏はこれまでたびたびデモを呼び掛けてきたが、参加者は減少している。

・ベネズエラは現在非常に複雑で難しい状況にある。国民の多くは不満を抱え不便な状況の中で生きており、なかにはデモに出た人もいる。こうした人たちは失望している。グアイド氏が暴力を使ってでも権力を得たいという真実の目的を知って失望している。

・米国の支持を受けたグアイド氏の真の目的が明らかになった。民主主義を抱えているにもかかわらず暴力に訴えて権力を取ろうとしている。

・米国の意図に対する反感はベネズエラ国内のみならず国際社会にも広がりつつある。米経済学者ジェフリー・サックス氏は「ベネズエラに対する米国の経済制裁によって4万人が命を落としている」と述べた。

「世界経済も鈍化すれど、景気後退には陥るまい」門間一夫氏

カテゴリー: 会見メモ, 経済/デリバティブ

2019/01/15  23:21


 

今年最初に登壇した門間みずほ総研エグゼクティブエコノミスト(ピンボケですみません)

 

ゲスト:門間一夫みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミスト
テーマ:2019年の経済展望
2019年1月15日@日本記者クラブ

 

門間一夫みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストが1月15日、「2019年の経済展望」と題して日本記者クラブで話した。同氏は日銀の元調査統計局長、理事。

・世界経済は2017年が非常に良かった。実質GDPで1.9%成長。18年は反動で0.9%成長(みずほ総研予測値)にとどまった。19年は普通の状態に戻る。あわてないこと、あまり悲観的になる必要はない。

・18年の世界経済の調整色は強まり、この先もう一段強まっていく可能性は高いものの、景気後退など深い調整までは至らない可能性のほうが高い。

・米国は難しい判断にきている。利上げするかしないのか米連邦準備制度理事会(FRB)は白紙だと思う。白紙の状態を出しながら、それをどう表現するかは実にチャレンジングだ。

・パウエルFRB総裁はFOMC(FRB幹部と地区連銀総裁からなる金融政策を決める委員会)で毎回会見を開く。昨年は8回中4回だった。ノイズとなるかどうか。物価だけみて政策を運営していいのか。金融面での不均衡も注目する必要がある。

・ユーロ圏の成長率は17年は予想を上回る好調ぶりを示したが、18年は反動もあって減速。イタリアではポピュリスト政権の下で財政支出の増大圧力が強く、市場金利の上昇要因となっている。フランスも最近ややそうした動き。

・コア・インフレ率は1%近辺で横ばい圏内にあり、インフレ目標である「2%近く」まで着実に上がるかどうか不確実性は大きい。欧州中央銀行(ECB)は19年夏まで現状の政策金利を据え置く姿勢を明確にしているが、その後利上げを実現できるかどうかは物価情勢次第の面が大きい。

・中国経済は減速傾向が次第にはっきりしてきている。減速の背景は①企業の過剰債務への政策的な取り組み②米国との摩擦-などでもう少し悪化しそう。最近目立つのは自動車販売で、18年は28年ぶりにマイナスとなった。米中対立の激化に伴う消費者コンフィデンスの低下を反映している。

・中国の企業債務はGDP比で200%を超える水準だ。この水準に達した国(日本、スペイン)はその後バブルが崩壊した。国家資本主義だから、面子もある。中国政府も急速に落とすのではなく、さじ加減が難しい。危機感を持って取り組んでいる。債務の調整が進めば当面の成長には鈍化要因になるが、成長の持続性にはプラス。

・世界2位の国で18~23年は5.7%成長。これはすごいが、人口も減少過程に入っていくし、産業構造の変換も大変だ。「安くて低賃金」で稼ぐのではなく、世界最先端の技術で稼ぐと「製造2025」でうたったが、これが米国の逆鱗に触れている。産業変革の重要性を認識しているものの、米国から「それをやるな」と言われ、板挟みになっている。債務以外にも重要な問題が多い。

・日本は16年半ばから17年にかけてが非常に良かった。中国の投資需要、半導体関連の需要急増などを中心に輸出・生産とも力強く伸びていたが、18年入り後は一服。反動がきている。世界とつながっており、中国向け輸出が減速している。

・中国向け輸出は17年が絶好調だった。工作機械の受注は倍増していた。18年はその反動が出ており、前年比のマイナス幅が拡大してきている。これが起こるのはある意味でしようがない。

・半導体はデータセンターや自動車向けなどの新市場拡大もあり、第4次半導体革命。スーパーサイクルとか景気のよい言葉がはびこった。長期的な見通しは引き続き良好ながら、足下は減速。メモリーやフラットパネルのための設備投資も世界的に一服してきたため、製造装置の販売は高水準ながら頭打ち感が出ている。

・東京エレクトロンは冬のボーナスだけで280万円。今年はアゲインストになってくる。世界経済はいろんなことが起きていて、トランプだけが悪いわけではない。

・景気拡大の期間は19年1月で戦後最長となる。「実感がない」とおっしゃるが、当たり前で「低空飛行」。いざなぎ景気のときも実感がないといわれてきた。それより低い。潜在成長率の対比でいうと、日本は相当頑張っている。これで実感がないんだったら、実感のある景気はもう日本にはこない。

・「景気」という言葉はもう使わないほうがいい。「景気が良い」というと、それに合う実感のときはもうないわけですから、世の中にないことにいつまでも拘っていてもしようがない。「景気が良い」とか「景気が悪い」とかもう言わない。

「知ってはいけない」

カテゴリー: 会見メモ, 政治/外交/国際/軍事, Books

2018/12/19  23:59


 

登壇したノンフィクション作家の矢部宏治氏

 

ゲスト:矢部宏治(ノンフィクション作家)
テーマ:隠された日本支配の構造
2018年12月19日@日本記者クラブ

 

日本のあらゆる制度や仕組みは偏向していると思ってきた。日本の外交もおかしいと感じてきた。米国は大国でありながら、日本は一体何を理由に米国に対して卑屈でなければならないのかとも考えてきた。日米関係には両国が引きずってきた「闇」の部分を持っているのではないか。

私だけではない。怖い物見たさに「闇」をのぞきたい気持ちが国内的にも強まっている。ノンフィクション作家の矢部宏治氏の近著『知ってはいけない』『知ってはいけない2』(いずれも講談社現代新書)がベストセラーとなっているのはその証拠だ。

いくら河野太郎外相が独自の外交論を展開しようが、これを知れば理想的な裸の外交論は吹っ飛んでしまう。闇はそれだけの爆弾を抱えている。悲しいことだが、国民はこのことを隠されてきた。知らなかった。知らないほうが良かった。これが悲しい現実である。

日本の空は、すべて米軍に支配されている

 

「オールジャパンの外交」訴え-河野太郎外相

カテゴリー: 会見メモ, 政治/外交/国際/軍事

  22:53


 

日本外交について語る河野太郎外相

 

ゲスト:河野太郎外相
テーマ:日本外交について
2018年12月19日@日本記者クラブ

河野太郎外相が日本外交について30分間語り、記者の質問に答えた。読売新聞政治部の 梁田真樹子記者は同クラブの会見リポートに「オールジャパンの外交」訴えと題し、以下のように書いた。

「就任から1年半弱で約60か国を歴訪した河野外相は会見の冒頭、外相として感じ取った日本の厳しい現実を突きつけた。

まず「国際会議などの場で主張が通りにくい」という。強く記憶しているのは、就任早々の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相国際会議で、南シナ海問題をめぐって議論が紛糾したことだ。さらに、国内の統制と対外的な圧力を強める中国の台頭などを念頭に、「戦後日本が恩恵を受けてきたリベラルな国際秩序が挑戦を受けている現実がある」と問題意識を説明した。

その上で河野氏が挙げた外交課題は多岐にわたる。人工知能(AI)を搭載した自律型新兵器システムへの対応、情報技術の進歩とビッグデータの活用、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた官民連携――。いずれも新たなルール作りが求められるものばかりだ。

「日本は軍事力を背景とした外交はやらない。政府開発援助(ODA)はピーク時と比べて半減。裸の外交力をいかに高めていくかが大事だ」。日本が国際社会で存在感を保ちながら、こうした新たな課題でも民主主義などの基本的価値観を反映したルール作りを主導するための「裸の外交力」として河野氏が訴えたのが、「オールジャパンの外交展開」だ。外務省だけでなく、個人個人が、企業活動や援助、観光、研究などを通して海外と関わることが、日本の外交力につながるという。

今や個人の生活のどこをとっても海外と結びつかないことはない。誰もが外交の担い手たり得るという認識は、先駆的な動きに敏感な河野氏らしい主張だといえる。

だが、それを進めるのであれば、外相には国民に対して、積極的に海外と関わろうとさせるだけの、日本の展望を説明する力が求められる。会見では、問題意識を越えた「展望」については言葉不足だった感が否めない。発信力には定評がある河野氏だ。21世紀型の日本外交の道筋を浸透させられるか、注視したい。」