‘政治/外交/国際/軍事’ カテゴリーのアーカイブ

「中国経済は三重苦」津上俊哉氏

カテゴリー: 会見メモ, 政治/外交/国際/軍事, 科学/技術/イノベーション

2019/08/08  22:46


 

 

ゲスト:津上俊哉(つがみ・としや)国際問題研究所客員研究員
テーマ:中国経済と米中関係の行方
2019年8月8日@日本記者クラブ

 

国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏が「中国経済と米中関係の行方」について話した。

・中国経済には異なる2つの経済が同居している。

・ITを利用したニューエコノミーは躍進。民営企業が主役。QRコードを利用した低コスト決済サービスが大きく普及。今や日本は周回遅れ。Ⅰ(デジタル、スマホ、AI、ビッグデータ)、E(EV=電気自動車)、B(ビッグサイエンス)。実地に試してみる・問題があればそこで直す。社会実装のスピードとパワーは中国の右に出る国ない。

・暗いのはオールドエコノミー。重厚長大型製造業、不動産、公共投資。主役は国有企業や地方政府。投資と借金頼み。

・街頭カメラ、顔識別システムを用いた治安システムはどこの国でもやっていること。中国は「やっているからな」とそれを国民に知らしめる。国民はそれで安心し嫌ってばかりではない。

・EVはうまくやっている。成功した。世界のEVの半分は中国で走っている。EVでは勝者に。人為的なマーケット創造。Big scienceが離陸し、中国の科学技術は端倪すべからざるところにきた。優秀論文の国別引用回数でもコンピューター科学、数学、化学などで米国を上回った。20年後には毎年中国人のノーベル賞受賞者が毎年出る。最後に日本人が受賞したのは何年前になるということになるだろう。

・「中国製造2025」(2015年発表)は各国で強い反響を呼び、IOT(米)、インダストリー4.0(独)、コネクテッド・インダストリー(日)などの構想の競争状態に。中国科学技術水準の急速な向上を見て、中国のtargeting型産業政策に対する欧米の脅威感、警戒感が急上昇。

・米国の中国に対する警戒感、脅威感は過剰評価されている。恐れすぎている。勝負はこれからだと思える部分はたくさんある。足下をみて未来を予想するからだ。GDPも抜かれる可能性があるし、科学技術でもそう。対中不安感の行き過ぎている部分がある。

・ニューエコノミー経済が好調の一方で、経済は3重苦に直面している。

・過去10年間の投資のやり過ぎた。バブル後のバランスシート調整期に入った。ツケはやはり払わざるを得ない。これは避けられない。これがだんだんはっきりしてきた。

・民営企業を取り巻く厳しい環境。不景気、行政の「一刀切」問題、資金調達難。極左言説の横行、根底にある「官功なりて民は万骨枯れる」構造。

・マグニチュード的にはこの2つが極めて大きく、その上に泣きっ面に蜂のように重なってきたのが米中貿易戦争。世間的にはトランプが戦争を仕掛けたので中国経済が失速したという結びつけ方だが、実態は少し違う。経済が悪化している時に「泣きっ面に蜂」だ。

「低投票率は社会喪失状態の現れか」白井聡氏

カテゴリー: 会見メモ, 投票/選挙/改元, 政治/外交/国際/軍事

2019/07/31  17:39


 

ラフな格好で現れた白井氏

 

ゲスト:白井聡(しらい・さとし)京都精華大学専任講師
テーマ:2019年参院選後の日本・民意を読む
2019年7月31日@日本記者クラブ

 

『永続敗戦論』『国体論ー菊と星条旗』などの著書がある政治学者の白井聡・京都精華大学専任講師が参院選から見る民意について語った。

・山本太郎の快挙ー民衆は何をなし得るのか。彼とは2,3度会って人となりも知って好感も持っていたが、今回は山本太郎の躍進だ。彼の快挙であることは重々強調されるべきだと思う。

・投票日前はほとんど無視される中、お金も一文無しから始めた。寄付で3億円くらい集めた。ゼロからの出発だった。

・山本太郎は「れいわ新選組」を登録した。政治家が使おうとしても使えないようにした。巧妙なやり方だ。自民党の党内的事情から生まれた参議院選の特定枠に自分は落ちてもいいから重度身体障害者2人を送り込みたい。立法過程に当事者そのものが入るのはものすごいことだ。

・ハンセン症患者の政治利用。誠に下劣な政治。

・90数万票取って本人は落選というのは世界的なニュースになる。こんな政治家が日本にいたんだと一気に注目を集めた。

・永田町的にスキルが上達したから良い政治家と言えるのか、そんなことはない。3.11原発事故で地獄の釜のフタが開いた。やっぱりこういう国だったんだという本当の姿がベールを外してぬっと姿を現してきた。私はそれを永続敗戦レージームという名前を付けた。

・君たちは何もできやしない。大事なことを決めるのは私たちだ。お前らは何の権限もない。お前たちができるのは大人しく働いて大人しく死ぬだけだから。お前たちは何もできない。このメッセージが社会を覆っている。これを敏感に受けているのが若年層。

・いやわれわれ群衆は本当は何もできないんではないんだ。俺たちは何かをなし得るんだ。本当は潜在的にそういう力がある。権力はこうした図を嫌っていて、また恐れてもいる。だから実態的には意味のないことを防ごうとしている。

・野党の中心はどこにあるのか。勢いの点から言うと、もう枝野じゃないよね。枝野から太郎へ。枝野は若者たちの声を受け止めそこなったんじゃないですか。

・自民党を中核とするところの永続敗戦レジームに対する旧民主党とは何だったのか。半分は自民党に居損なった人たちが在籍しているだけで中身は自民党と変わらない。他方で一部戦後の異様な対米従属体制に批判的なスタンスを取る人たち。この奇妙な状態から脱出しなければいけないと考えている人がいた。

・その人たちがやろうとしていることが表面化したのが鳩山政権だった。普天間基地の最低でも県外へ。永続敗戦レジーム陣営がアレルギー反応を示した。陣営は自民党だけじゃなく、政官財メディア全部だ。

・日米安保体制は戦前の天皇制の後継者。日米安保体制を基礎としない日本を考えること、想像することもこれらも反国体の思想だから想像してはならない。想像するのは非国民だ。これが戦後日本の対米従属の異様さ。

・鳩山政権は無防備に踏み出していった。猛烈な反撃を食らって引きずり下ろされた。みんなやりたいことを共有した政権を作れなかった。民主党がごった煮集団だったから。

・とにかく議員になりたい政治ゴロがわんさか寄ってくる。身体検査がなっていない上、原理原則ではなく党幹部の好き嫌いで物事を決めている。理念を共有することも難しい。

・立憲民主党の枝野さんは日本の対米従属を相対化することが理念だが、民主党内の立憲民主党なるもの、小澤一郎的なるものを共有していない。していない理由もレベルが低い。

・枝野さんは小澤、鳩山ラインに極めて批判的。批判の根拠はよく分からない。民主党失政のツケを小澤・鳩山に押しつけた。中学・高校の部活動と同じレベルだ。民衆からの期待に応えることをやってこなかった。

・ポピュリズムという言葉はほとんど使わない。あまりにいい加減な言葉だから。何を言っているのかさっぱり分からない。大衆迎合主義。分析の概念としてはほぼ役に立たない。

・れいわ新選組は無縁の体現者。もう少し分かりやすく言うと、消費税とは何か。大企業を富ませるために使われてきた。これは廃止だ。これは階級闘争の宣言だ。

・今の階級が腐った縁(関係)になっている。だからこれを断ち切るんだ。無縁になるんだ。れいわ新選組が突き出して見せてくれたことに面白さがある。議会制民主主義はだめだと言われていたが、ここに差し込んだ希望の鍵だ。

・絶望という視点からみると、「NHKから国民を守る党」の躍進。これは何なんだ。こんなのが議席を取った。政党要件満たしたよ。驚くべき現象だ。

・立花孝志党首(51)は大変優秀な人だ。1活動家から始め地方議会で議席を取り、同志を募って議席を増やし、遂に国会に議席を得た。同志を増やす過程で「これはお金になるよ」「もうかるよ」「勝ったらリッチになれるよ」。

・NHKへの嫌悪が国民に広がっている背景がある。「勝手に電波を流しておいて見てるのか金払え」。放送法はとんでもない悪法だ。しかし、まあ悪法だが、性がないんじゃないか。ましだ。

・しかし安倍政権になってからの政治部主導するところの報道の姿勢は度を超していると思わない瞬間がないでもない。オンデマンドで金を取るのは料金の二重取りではないか。無料開放するのが当たり前。こういうことをやっている限り激しく嫌悪されるのは当然だ。これが表面化した。

・しかし、これは非常にやばい現象だ。議員も拡大しており、ゴミためと化している。質の低下があるレベルを超えてしまった。こういう議員が続々現れている。このゴミがどこから湧いてくるのか。検証が必要だ。

・小選挙区制の弊害が大きい。世襲だけでは足りない。公募をかける。公募で来た奴は最低、最悪。政治家ごっこをするのが若いころから好きな連中。馬鹿で中身がないと徹底して軽蔑していた。

・薄っぺらいくせに議論好き。やたらと憲法問題と安全保障問題に拘りたがる。こういう人種が卒業後に松下政経塾とかに入ってあるいは官僚になって政治家への道をばく進し始める。

・自民党から出られれば最善。落ちたら旧民主党、みんなの党とか維新の会。何の勉強もしていない。とにかく政治家になりたい。その欲望だけ。最も政治家にしてはいけない人物。

・絶対政治家にしてはいけない人物を一所懸命選んでその人たちだけが国会議員になる。地方議員もいる。掃いて捨てても掃いて捨てても現れてくる。議会制民主主義に絶望しますよ。これは低投票率として現れてくる。

・投票率は74%から50%、48%と低下。はっきりと貧しくなっているのに投票所に戻ってきていない。

・低投票率は政治的には表層のこと。政治的に無関心がある。社会的無関心。社会って何か。社会的無関心な人にとっては社会は存在しないのではないか。

・サブカルチャーの世界系。世界は終わるが、「私と彼女の世界は永遠」。私と世界はあるが、社会は一切登場しない。

・サッチャー「社会なんてものは存在しない」。社会的な意見なんてそもそも持っていない。存在しないから。社会喪失状態が現れている。低投票率は小さな一端の現れ。

・「選挙に行けと言われると上から目線。消費税が上がるといわれてもそれがどう生活に影響するか分からない」(20代)。そもそも何かを分かろうとしていない。つもりがないらしい。「それはちゃんと分かったほうがいいじゃないですか」「分からなければならないですよ」とアドバイスをすると、「それは上から目線だ」とぶち切れる。どうしたらいいんですかね。

 

試写会『工作』

カテゴリー: 政治/外交/国際/軍事, 映画/テレビ/舞台

2019/06/24  23:32


 

 

作品名:『工作』黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男
監督:ユン・ジョンビン
出演:パク・ソギョン(韓国・国軍情報司令部少佐/黒金星)
リ・ミョンウン(朝鮮民主主義人民共和国/対外経済委員会所長)
チェ・ハクソン(韓国・国家安全企画部室長)
チョン・ムテク(挑戦民主主義人民共和国/国家安全保衛部課長)
試写会@6月24日日本記者クラブ
7月19日シネマート新宿/シネマート心斎橋ロードショー

 

「1992年、北朝鮮の核開発をめぐって朝鮮半島に緊張が走る中、軍人のパク・ソギョンは工作員として北へ潜入せよとの命令を受ける。

コードネームは黒金星(ブラック・ヴィーナス)。たった1つのミスで命を失う危険な任務の始まりだ。

事業家に扮しての3年間に及ぶ慎重な工作活動が実を結び、北朝鮮の対外活動を一手に握るリ所長の信頼を獲得したパクは、遂に最高権力者である金正日に接見する。

しかし1997年、韓国の大統領選挙における祖国と北との裏取引によって、人生のすべてを捧げた工作活動が無になることを知るパク。彼が祖国を裏切るのか、祖国が彼を切り捨てるのか、それとも北がパクの正体を見破るのか-。

幾重にも張り巡らされた罠にかかり、工作員が次々と無残な死を遂げた時代に、いったいどうやって黒金星は北の中枢へと踏み込むことが出来たのか?

究極の選択がエンドレスに続く実在のスパイの緊迫した工作活動と、愛する祖国の闇を知り苦悩する姿を描く、実話に基づく驚愕のサスペンスドラマ」(パンフレットから)

 

米政府の対話呼び掛けは「まやかしだ」イラン大使

カテゴリー: 政治/外交/国際/軍事

  21:13


 

ラフマーニ駐日イラン大使

 

イランのラフマーニ駐日大使は24日、日本記者クラブで会見し、米政府がイランとの対話を呼び掛けているのは「まやかしだ」と一蹴した。時事通信社が報じた。同大使の日本記者クラブでの会見は昨年9月に次いで2度目。

米国がイラン核合意から一方的に離脱したことについては「トランプ米大統領に誠意があるならば、核合意に戻り、(対イラン)制裁を解除できるはずだ」と述べた。

米国によるイラン制裁やイランによる米無人機撃墜など両国の対立が激化しているが、ラフマーニ大使は武力衝突は望まないと改めて強調。しかし、国益が侵害された場合は断固とした対応を取るとも警告した。

英国政治の現状は熟慮のプロセスではなく「混乱」

カテゴリー: 政治/外交/国際/軍事, 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

2019/06/12  19:40


 

筑波大学の近藤康史教授

 

ゲスト:近藤康史筑波大学教授
テーマ:BREXIT迷走の背景-英議会政治の変質
2019年6月12日@日本記者クラブ

筑波大学人文社会系の近藤康史教授がイギリス議会政治の変調とその要因について日本記者クラブで話した。

「ブレグジットをめぐる英国政治混乱は、2大政党から多党化への流れが背景にあると指摘した。ブレア労働党政権の分権改革で誕生したスコットランドなどの地域議会で地域政党が成長。加えて、欧州議会選挙は、国政選挙の小選挙区制ではなく比例代表制で実施されるためUKIPなど小政党が存在感を示すようになり、多党化が有権者に浸透していった。さらに、保守党、労働党ともEU政策について党内で意見が割れ党の結束力が低下したことも混乱に拍車をかけたと解説した」(土生修一日本記者クラブ事務局長)

・議員たちが非常に分かれている中で過半数を占める合意形成というのは難しい。メイ首相にとっても難しかったが、どの首相でも今の状況だと難しい。

・保守党と労働党をまたいで穏健、離脱勢力が存在する。政党間対立を横断している。EU残留が労働党で、EU離脱が保守党といったすっきりした対立ではなくて党派をまたいだ争点になっている。同じ党内でもまとまらない。党派をまたいでまとめようとしてもうまくいかない。

・保守党党首選は7月22日の週に決まる見通し。ボリス・ジョンソン氏ら5名が出馬を表明している。

・これまでは「延期」「延期」できたが、とにかく「離脱」をしなければならない方向で動いている。離脱をしないと保守党の支持率が下がるのは確実との危機感も議員側にはある。強硬離脱をしなければならないのかはともかく、離脱はしなければならない方向に動いている。また「延期」「延期」は避けたいのではないか。保守党の重心が動いている。

・進むとしては2つの方向だ。メイ首相は労働党との合意も視野に入れていたが、これは消えた。保守党内で離脱でまとまらなければならないし、そうでないとブレグジット党に代わられる。危機感で一体感を取り戻す。これが1つの見通しだ。まとまらなければ合意なき離脱もあり得る。

・(民主主義のねじれをどうやって解決するのは民主主義国である英国でどのような評価を得ているのか。今起こっている状況は決められない政治なのか、民主主義的な熟慮の姿なのかどうか)。

・英国の有権者のレベルでは決められない政治が批判されており、「混乱」と捉えられているとしか言いようがない。国民投票についても何の合意もなく、「離脱」の結果に右往左往している姿は混乱としか呼べない。

『空母いぶき』

カテゴリー: 政治/外交/国際/軍事, 映画/テレビ/舞台

2019/05/31  22:20


 

空母いぶき

 

作品:空母いぶき
原作:かわぐち・かいじ
監督:若松節朗
主演:航空機搭載型護衛艦(いずき)艦長・西島秀俊
同副長・佐々木蔵之介
P-Panel記者・本田翼

 

かわぐちかいじ原作の初の実写映画化。かわぐち氏は1948年7月27日生まれ、広島県出身。90年に潜水艦戦を描いた「沈黙の艦隊」、2002年に架空戦記の「ジパング」を発表。どちらも戦記物だ。

「空母いぶき」は2014年から『ビッグコミック』に連載中。いぶきは架空の航空機搭載型護衛艦の艦名だ。圧倒的描写とリアリティーで数多くの話題作を生み出してきた。

最近では漫画が原作のリアリティーの薄い映画が氾濫しているが、この映画にどれだけリアリティーを与えることができるかが最大の焦点だ。

それを何とか可能にしたのがCGの力だ。パンフレットに所載されている若松節朗監督とCGIプロデューサー(株式会社コラット)の米山和利氏の対談によると、特に潜水艦や魚雷の「海中」シーンの多くはCGが中心だった。

ほかにCG部分は「艦船を中心にした海上と戦闘機などの空、いぶきの甲板まわりもそうだった」という。海中シーンは一番時間をかけて長くやれそうなところだったという。

日本は現在、空母を保有していない。東アジア海域における領土争いの激化に対し、日本近海における新たな抑止力として戦後初めて航空機搭載型護衛艦「いぶき」を旗艦とする第5護衛隊群が編成されたというのは本作における架空の設定だ。

 

「米のベネズエラ政権転覆策は失敗」-駐日大使

カテゴリー: 会見メモ, 政治/外交/国際/軍事

2019/05/10  23:33


 

セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使

 

セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使が日本記者クラブで10日会見し、米国がグアイド国会議長を押し立てて強引に行ってきたマドゥロ政権転覆策が失敗に終わったとの見方を示した。

イシカワ大使は日系2世。2005年に32歳の若さで駐日大使として着任。14年間にわたって大使を務めている。

・日本では改元行事のただ中にベネズエラではクーデタのニュースが入ってきた。それを引き起こしたのは民主主義を標榜し、大統領選挙を求めていたグアイド国会議長だった。

・しかし、24時間以内に事態は収束した。その背景が分かってきた。2つの疑問に答えたい。4月30日に一体何があったのか。それとベネズエラの政治情勢に及ぼす影響について話したい。

・バランスのとれた報道があった。一方で、空軍基地の中でクーデタを呼びかけたと報じる新聞もあった。以下タイムラインに従って事実を述べる。

・4月29日18時に、ベネズエラ情報局にいた兵士たち100人ほどに「刑務所で暴動発生、それを鎮圧するから出動用意との上官から指示」

・4月30日の午前3時にバスがきて乗せられて空港近くの高速道路で下ろされた。

・午前5時前、兵士たちは初めて「君たちはベネズエラの歴史をつくるのだ」とクーデタであることを知らされる。

・その直後から兵士たちは騙されたことを知り、離脱し始める。

・5時すぎ、グアイド氏はビデオを通して「自由のための作戦だ」と演説。しかし、このとき、その背後には20名ほどの首謀者グループしかいなかった。

・6時18分 ベネズエラ政府のツイッターでクーデタの企てを防ぎ始めたと発表。国民に冷静に対応するよう促す。

・7時すぎに一部市民500人ほどが基地に入ろうとして混乱するが、事態は沈静化に向かう。

・首謀者の一人ロペス氏(グアイド氏と同じ党に所属する議員)はチリ大使館に逃亡。グアイド氏は行方をくらまし拘束を逃れたものの、司法の裁きを受けることになるのは時間の問題だ。

・兵士たちが下ろされたのはアルタミラ・インターチェンジ。カラカスに向かう重要な交通の要所。つまり兵士らは空港基地の外にいた。

・別のビデオによると、ロペス氏は落ち着かない様子で、兵士の規律もバラバラだった。1人の兵士の証言によると、「騙されて現地に連れて行かれた」ことが分かる。

・なぜ今回のクーデタ未遂事件が世界を駆け巡る大事件になったのか。市民の参加も少なく重要性に欠けるのになぜ大事件になったのか。ベネズエラの政治的方向性を見せる事件だったから。

・グアイド氏は遂に実像を見せた。同氏はこれまで表面的にしろ民主主義を標榜し選挙を求めてきたが、実際武器をとり、暴力に訴え権力を手に入れる用意があることを暴露した。嘘やだましを軍隊に対して働くことまですることも分かった。

・アメリカとともにグアイド氏を後押ししてきた南米諸国に変化が生じてきている。米国の支持するリマグループ会議はベネズエラの政権交代を求めているが、同グループでさえ、5月3日に開かれた会議で姿勢を少し変化させた。いくつかの国はグアイド氏から離れる行為を示した。

・米国の介入主義は続いている。ポンぺオ米国務長官は4月30日、「本日、グアイド暫定大統領が自由作戦を発表した。米政府はベネズエラの人々が自由と民主主義を求めることを全力で支持する」と述べた。

・グアイド氏はこれまでたびたびデモを呼び掛けてきたが、参加者は減少している。

・ベネズエラは現在非常に複雑で難しい状況にある。国民の多くは不満を抱え不便な状況の中で生きており、なかにはデモに出た人もいる。こうした人たちは失望している。グアイド氏が暴力を使ってでも権力を得たいという真実の目的を知って失望している。

・米国の支持を受けたグアイド氏の真の目的が明らかになった。民主主義を抱えているにもかかわらず暴力に訴えて権力を取ろうとしている。

・米国の意図に対する反感はベネズエラ国内のみならず国際社会にも広がりつつある。米経済学者ジェフリー・サックス氏は「ベネズエラに対する米国の経済制裁によって4万人が命を落としている」と述べた。

『記者たち』

カテゴリー: 政治/外交/国際/軍事, 映画/テレビ/舞台

2019/04/05  23:33


 

『記者たち』

 

作品名:『記者たち 衝撃と畏怖の真実』
監督、製作、出演:ロブ・ライナー(ジョン・ウォルコット役)
キャスト:ウディ・ハレルソン(ジョナサン・ランデー役)
ジェームズ・マースデン(ウォーレン・ストロベル役)
トミー・リー・ジョーンズ(ジョー・ギャロウェイ役)
3月5日@TOHOシネマズシャンテ

 

ジョージ・W・ブッシュ米大統領は2003年、「イラクのサダム・フセインは大量破壊兵器を保有している」と述べ、イラクとの戦争を始めた。しかし、大量破壊兵器は見つからず戦争の大義が失われ、情報のねつ造であることが明らかになった。

当時、ニューヨーク・タイムズ紙を含め米大手メディアは軒並みこのブッシュ政権下のウソに迎合し、権力の暴走を許した。しかし、31紙の地方新聞を傘下に持つナイト・リッダー社だけはこれに疑問を持ち、真実発掘に執念を燃やした。

これは不屈の精神で真実を伝え続けた新聞記者たちの知られざる実話の映画化である。
 

「それでも紛争地取材をやめない理由」

カテゴリー: 「写真」を学ぶ, 政治/外交/国際/軍事, 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

2019/03/27  23:15


 

それでも紛争地取材をやめない理由

 

千代田区立日比谷図書文化館(日比谷公園1)の日比谷カレッジが27日開かれ、報道カメラマンの横田徹氏が「それでも紛争地取材をやめない理由」を語った。

横田氏は1971年茨城県生まれ。父親が報道カメラマンだった。フリーランスのカメラマンとしてキャリアをスタートし、クオリティーが低いと怒られながらも動画も撮った。

1997年のカンボジア内戦(ポルポト派)から活動を開始し、インドネシア、東チモール、コソボ、パレスチナ、リビア、イラクなどを取材。2007~12年までアフガニスタンの米軍に従軍取材。14年3月に世界で初めてISの拠点ラッカを取材した。

最初は写真から始めたが、テレビ向けのムービーカメラ(動画)も撮った。写真はAPやロイターに持ち込んで買ってもらったほか、韓国のディレクターの専属となった。品質がひどくて、かなり勉強した。とにかく「いい加減な状況で始めた」などと語った。

横田氏は2007年から12年にかけてアフガンに展開している米軍に従軍したときの映像を見せた。彼が取材したのはコレンガル渓谷。このレストレポ前哨基地は2010年に米軍が放棄した。ここには20人の米軍兵が駐留していたが、最も激しい戦闘地域でこの時点で40人の米兵が死亡したといわれる。

横田氏によると、「毎日の小さな戦闘があり、そのたびに飛行機を飛ばしたりヘリを飛ばしたり、お金がかさむ。米軍もこの基地を持つ意味があるのかに気づいたと思う。パキスタンとの国境に近いのでタリバンがどんどん押し寄せてくる。タリバン軍はライフルなどの旧式兵器で攻撃してくるが、米軍は航空機を含め近代兵器で反撃するのでコスト的には割が合わない。結局ここを手放すことになった」という。

こういう映像を見ると、アフガンはどこもこういう状態でアフガン=危険というイメージを持たれると思うが、「実際にこういう戦闘をやっている場所というのは限られていて、ジャーナリストも行ってもこういう写真はほぼ撮れない。ぼっとして終わってしまう。たまにパトロールに出ても何も起きないのがほとんど。戦闘を探すのが非常に大変だ」という。

米軍は厳しいながらも、自分が行きたいというリクエストを何度も出せば、行けてしまうところがあって良かった。一度従軍の許可を取ると、食べ物から寝るところまで全部ただでやってくれた。撃たれるジャーナリストも少なくなく、治療もきちんとやってくれた。自衛隊ならこういうわけにはいかない。プレスツアーで連れて行くのは「安全」地帯。安全を見せて終わりだ。

横田氏が最後にアフガンに行ったのは2012年。当時のカブール市内は独りで歩けたが、タリバン政権の今は歩けない。駐留米軍やアフガン政府軍ではどうしようもない状態だ。

シリアの取材をしたのは2013年6月ごろ。IS(イスラム国)の存在はまだほとんど知られておらず、まだアルカイーダと呼ばれていた。

横田氏によると、重要なのは信頼できるコーディネーターをどう捉まえるかだ。だいたい捕まるときというのはコーディネーター。怪しいのか、あるいはギャングなのか。誰に当たるかで運命が変わる。「私の場合はたまたま運が良かっただけ」だという。

3年4カ月ぶりにシリアのISに解放されたジャーナリストの安田純平氏について横田氏は「信用できない人がいきなり現れて付いて行ったら捕まってしまった」と述べ、「これは大きなミスだった」とコメントした。「彼はコーディネーターに売られたんだと思う」。外国人も彼は売られたと言っていた。ちょっとでも不安だったら行かないと言う判断もあったはずだ。

取材する上で一番大事なのは取材のセッティングや通訳をやってくれるフィクサー。CNNやBBCと仕事をしているプロから学生みたいな金ほしさでやっているフィクサーもどきもいて、けちると身に危険が及ぶ。安心してもらえる人を紹介してもらうのが重要だ。高いのが難点だが、人間関係が重要だ。

取材経験の浅いジャーナリストは判断が難しい。おいしい話があっても、それは次回にしようと判断する。欲をかくと変なことになりかねない。ベトナム戦争当時は牧歌的な戦争だったが、いまは容赦なくジャーナリスト=お金だ。来たらお金にしてしまう難しい状況に毎年なっている。

IS発行の許可証を持って2014年3月にIS(イスラム国)支配下のラッカに入った。「非常に平和だった」ことに驚いた。「邪悪で残忍な町というイメージが覆された」という。ラッカは同年6月にISの首都になり圧政を受けたが、クルド人主体の「シリア民主軍」(SDF)は3年半後の17年10月、奪還作戦が完了したと発表した。

さらにISのシリア内で最後の拠点であるバグズ町を19年3月に完全に制圧したと発表した。ISは最大時にはシリア西部からイラクの首都バグダッド郊外まで770万人を支配。税金、料金、罰金を資金源とした。

試写会『バイス』

カテゴリー: 政治/外交/国際/軍事, 映画/テレビ/舞台

2019/03/15  23:21


 

アメリカ史上最強で最凶の副大統領、ディック・チェイニー

作品名:バイス
監督・脚本・製作:アダム・マッケイ
キャスト:ディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)
リン・チェイニー(エイミー・アダムス)
ドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)
ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)
コリン・パウエル(タイラー・ペリー)
2018年アメリカ映画132分@日本記者クラブ
4月5日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

 

『バイス』はバイス・プレジデント(副大統領)のほか、悪徳・邪悪という意味もある。世界をめちゃくちゃにした悪名高いバイスのディック・チェイニー。まさかの実話であり、社会派エンターテインメントである。

米大統領は世界最強の権力者で、ハリウッドも幾多の「大統領映画」を製作してきたが、本作品は大統領ならぬ「副大統領」を主人公とした前代未聞の作品である点がユニークだ。

「常に陰に隠れた副大統領は、大統領が死亡したり辞任した際にその代わりとして昇格するポジションであるため、『大統領の死を待つのが仕事』と揶揄する者もいる。

「しかし、この副大統領が目立たない地位を逆手にとって、大統領を操って強大な権力を振るい、すべきでない戦争を他国に仕掛けた挙げ句、アメリカや世界中を変えてしまった!

「この作品はそんなまさかの『陰の大統領』が本当に存在したことを証明し、現代米国政治史における最も謎に包まれた人物に光を当てた野心作。その主人公の名は第46代副大統領ディック・チェイニーである」(パンフレットのイントロダクションから)