‘科学/技術/イノベーション’ カテゴリーのアーカイブ

「Thinktankを超えDotankに」桜田謙悟氏

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション, 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

2019/05/31  21:05


 

SOMPOホールディングスグループCEO

 

SOMPOホールディングスグループCEO(最高経営責任者)兼代表取締役社長で、今年4月から経済同友会代表幹事に就任している桜田謙悟氏が5月31日、国立情報学研究所のオープンハウスで基調講演した。成長戦略の新たな司令塔として平成28年(2016)9月に設立された未来投資会議のメンバーでもある。

・私は金融サービスの社長をしている。デジタルイノベーションの世界で最も先にディスラプト(崩壊、分裂)される可能性のある損保業界の社長であると同時に日本にとっては最も重要かつ急成長している介護業界を扱っている業界のトップでもある。現場の声や悩みや提案をしてくれということが分かった。

・データというのは何なのか。喜連側川優国立情報学研究所長が先ほど科学的な発想から眺められたが、ビジネスサイドの人間としては「データ イズ マネー」だとか「データ イズ ニューオイル」ということを何となく分かっているものの、本当に分かっているビジネスマンは世界にはいない。正解ということではなく、私の考えを話したい。

・SOMPOは売り上げで約3兆6000億円。雇用者数8万名。30カ国、218都市で事業展開している。

・損保にとって昨年は厳しい年だった。業界全体で支払った保険金は1兆5000億円。SOMPO だけでも5000億円。とんでもない金額だ。準備金や再保険があるからストレートに決算に響いてはいないが、皮肉に「もう損保事業には新規参入したくない」と言われる。あまりメリットない。

・業界の外からも猛烈にディスラプトされてきている。もしかしたら銀行のほうが厳しいかもしれないが、金融サービス業はこういう状況だ。

・VUCA。私が大好きな言葉だ。Volatility(変動性)、Uncertainity(不安定性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧模糊性)の略語だ。もともと軍事用語だったが、現在はビジネスでも使われている。無茶苦茶の時代、何を考えてもしようがない時代。

・今年のダボス会議でパネルをやってきた。セールスフォース、U2、ラッパー。彼らはIT産業に巨額の投資を行っている。「データはおれたちのものだ」「データを取り戻せ」「GAFAにただでやるな」などと言っている。スウェーデンで地球環境を守ることで闘っている高校生もいる。こういう人たちが集まって議論する。オープンイノベーション。エコシステムができる。全然違う経験を持った人たちが集まってきたオープンハウス。

・今第4次産業革命の時代と言われている。社会の抱えている課題にソリューションを提供することに意義があった。第1次産業革命は農業で飢えに対するソリューションを提供した。第2次は蒸気機関で、筋肉に対するソリューションを提供した。第3次はインターネット革命。距離とか時間に対する制約を取っ払った。第4次産業革命は何か。世界のアーキテクチャ―を作れ。答えはない。良い意味でも悪い意味でも脳に対する挑戦が始まった。脳に対するダークサイドであればクライシスでもある。

・トランプ米大統領もなかなかチャーミングなおっさんだが、変なことも言っている。ヨーロッパもぐちゃぐちゃ。中国もしっかりしているように思えるが、中は大変。格差を広げるかもしれない。

・一般社会の中ではデータに対するアレルギー、嫌悪感が出始めている。これは絶対に起こしてはいけない。すべてのテクノロジーは英知を適用することによって人類のためにあることをはっきりさせなければならない。データとゲノムについてはこの問題が顕著になってくる。

・新渡戸稲造氏の唱える武士道。3.11の整然とした行為。はっきりした宗教ではない。これが日本を形作っているのではないか。

・保険の社会は思いっきりディスラプションする。自動車保険があるが、自動運転、シェアリングによって・・の世界に組み込まれていく。火災保険。ニューリスクだけ。

・世界の保険会社が頭を悩ましているのはサイバーテロだ。全く読めない。損害の規模が分からない。発生するチェーンも分からない。

・これまでは自動車会社、保険会社、銀行とあったが、プラットフォーマーがくる、Xaas(X=未知の値、aas=as a Service=クラウドサービス全般)がくる、スタートアップ、銀行の名前が無用のアリペイがくる。保険業法、銀行業法など法律で管理・監督できたが、業界・産業という定義が完全に崩れた。横から見ていかないとこれからの産業は成り立たないし、あらゆる法律は機能しない。横をどう見るか。法律そのものが無意味になってくる。ただ遅れてくるだけでなく機能しなくなる。

・Xaasはどこで区切るのか。アリペイは保険会社か。法律がビジネスや社会の変化に追いついてこなくなってきている。

・会社の存在意義に書いてあるのは最高水準の安心・安全・健康のサービスを提供するために存在する。保険とは書いてない。安心・安全・健康のテーマパークと言っている。具体的に身に見え触れるものを提供する。保険は一番下に置いているラストリゾートだ。みなさんが考えたくないことを考えてきた。

・人とデジタル。東京、シリコンバレーにデジタルラボを作った。シリコンバレーに来る天才の多くはインドとテルアビブや深圳。GEがリストラしたので彼らを雇った。ラッキーだった。

・1000億円くらいかけ2つの会社を買収し介護事業に新規参入した。SOMPOケアグループは国内2位の介護事業者になった。400施設。利用者数8万人、職員数2万4000人。

・入ってみて気づいた。リアルデータの宝庫だった。バーチャルデータとの交換のオファーがあったが、お断りした。バーチャルデータの怖さはそれが本物かどうか分からない。それによって操られる人が多いのであたかもそれが影響力があるようにみえる。データは何かという教育が大事だ。

・長寿社会をネガティブにとらえているが、日本の持つ最大のアセットかもしれない。105歳以上の行動パターン、生活パターンについてのリアルデータは日本ほどたくさんあるところはどこにもない。105歳すぎたら長生きする人が多い。なぜか。意外と認知症になる人も少ない。日本はデータの宝庫だ。

・日本はいなくてはならない国になりたい。予定調和とソフトパワー、それに武士道という規律に支えられた国が何をしてくるのか。世界は見ている。

・Think tankを超えてDo tankになりたい。問題ははっきりしている。問題はなぜできないか。どうやってやるかに切り替えている。やるしかない。

「AIは万能ではない」

カテゴリー: 会見メモ, 科学/技術/イノベーション

2019/05/27  15:37


 

新井紀子国立情報学研究所教授

 

ゲスト:新井紀子(国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授)
一般社団法人 教育のための科学研究所理事長・所長
テーマ:日本記者クラブ総会記念講演会
2019年5月27日@日本記者クラブ

 

国立情報学研究所の新井紀子教授(1962年10月~)は27日、日本記者クラブで講演した。新井教授は「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト(東ロボくん)を指揮する一方、幅広い年齢層を対象に読解力を調べる「リーディングスキルテスト」を主導した。

これらの経験をもとにした著書『AIvs教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社、2018)で示された子どもたちの読解力とAI開発の現状は話題を呼んだ。

また近著『日本を殺すのは、誰よ!』(新井紀子、ぐっちーさん、2019、東邦出版)ではAIの台頭でホワイトカラーの半分が機械代替される時代になりつつある日本の課題とその処方せんについて聞いた。

新井教授は日本の数学者。一橋大学法学部に入学したものの、数学の面白さに目覚め、4年の時に数学基礎論の研究が盛んだった米イリノイ大学数学科に留学し、竹内外史教授に師事。1年でイリノイ大学数学科を1年で卒業し、奨学金を受けて、修士課程に進学。1990年に修士号を取得し、帰国した。

AI学者は物理学者に多いが、新井教授は数学者。東大理学部物理学科卒業のサイエンス作家、竹内薫氏によると、「数学と物理学とは小説とノンフィクションの差」があるという。

・2010年に『コンピュータが仕事を奪う』(日経出版社)を出したが、売れなかった。出版が早すぎたんだと思う。当時は検索しても人工知能やAIという言葉は1回も出てこなかった。13年くらいに『AIが仕事を奪う』と書けば、ベストセラーになっていたはずだ。10年にAIブームが始まると思っている日本人はいなかった。

・コンピュータと書いたが、実際はディープラーニングを含めた機械学習。この機械学習とデジタリゼーションがホワイトカラーの仕事を半分奪うというのが『コンピュータが仕事を奪う』の結論だ。今も変わらない思いだ。

・AIに対する危機感が日本人は薄い。この危機感を共有してもらえるかと考えた。これが11年に「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを立ち上げた理由だ。

・AIは人間と同じように考えられるニューラルネットワーク(神経網)とどの記者も書いたが、これは間違いだ。人間がどのように考えるかという数字モデルを使ったことでしかない。AIは万能ではない。

・AIはソフトウエアにすぎない。関数の一部に計算可能関数(数字)があって、その一部にAIと呼ばれている関数が含まれている。

・機械翻訳の場合は、日本語の文字列というセットから英語の文字列というセットへの転換だ。言葉がどんな確率分布に従っているかはだれも知らない。

・機械学習においては正解は人間が作る。それを100%正しいと信じているので正解データの誤りをデータは越えられない。AIが人間の誤りを直すことはできない。人間を越えるシンギュラリティ(技術的特異点=AIが人類の知能を越える転換点)を越えることはあり得ない。

・AIと言えども、Siri (Appleの開発したAIアシスタント)もAlexa(Amazonの開発したAIアシスタント)もペッパーくん(ソフトバンクの開発したヒューマノイドロボット)も東ロボくん(国立情報学研究所の開発したAI)はどれも日本語も英語も全く分からないし理解できない。このことをきちんと書いた記者が過去4年間いなかったのは非常に残念だ。仕組みを分からずに記事を書くことが問題点でもあったことを意味している。

・素敵な手品には必ずタネと仕掛けがある。あばいてこそがメディアなのにこの4年間それをしてこなかった。大変残念なことだ。

・人類の歴史上、どんなにお金を積まれてもすぐできないことがあって、それは数学だ。双子素数。3と5、11と13、17と19などだ。無限にあるか。古代ギリシャのときから問われてきたが、いまでもどうやって解いたらいいのかとっかかりすら分からない。2000年経っても分からない。数学は金を積まれても無理なものは無理。

・GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)がどんなに金を積んでも無理なものは無理。

・変なホテルのロボットが激減している。太郎は男の子か女の子か聞くと、分からない。AIは意味を考えていない。われわれがどんなにAIに踊らされてきたか。

・統計が分厚いところと薄いところ。みんなが言いそうなことなら言える。

・AIに関心のある記者ならこれくらいの根性がないとだめだ。本当のことに迫ることはできない。機械翻訳というのは日本語の文を英語の文に訳するのではなくて、日本の文字列を英語の文字列に変換する。文と非文の境が分からないから。でも結構正しい。なので、ホワイトカラーのすべては代替されないしシンギュラリティはこないけれども、それでもホワイトカラーの多くは代替される。

・10年に東ロボくんプロジェクトで相談に行った。私は今のAIは東大に入れないことは分かっている。AIブームが来る。アメリカの検索などのサービス系からくる。どこまでがAIができてどこからができないのか。誰かがその限界を確定する必要がある。そのリスクはAI学者はとれない。AI学者は長くブームが続くことを祈るだけ。そうでなければ修士の学生を食べさせていけない。口が腐ってもAIに限界があるとは言えない。これを言えるのは金を必要としていない数学者だけだ。

・数学、特に数理論理学はAIを作った張本人だ。コンピューターとAIという概念をもともと作ったのはうちの分野。私には責任がある。

・東ロボくんプロジェクトは16年に関関同立に入れる。しかし、東大には絶対入れない。日本の70%の大学で合格可能性が80%以上という成績を取っている。

・GAFAはすばらしいテクノロジーを無償で提供すると言っているが、恐ろしい。そのことを通じて結局はデータとお金がGAFAに集積している。各地域から一番頭の良い人がどんどんGAFAに取られている。グーグルCEOのサンダー・ピチャイだってグーグルに行った。奨学金をもらってシリコンバレーに行った。

・どんどんローカルコミュニティーは疲弊して富の再分配なんてできない。これはどうするんですか?バージン諸島に隠し口座を持っていて国際的な富の再分配に寄与しない。インスタグラムなんかすごい悪い会社だ。1000人も雇用していないのに価値が高すぎる。

・日本の会社は生産性が低いとメディアは叩くが、雇用をしてくれるのは最大の社会貢献だ。大して金ももらっていなくても雇用を守ってくれている。文句を言わないでほしい。

多摩六都科学館

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション

2019/05/11  23:08


 

我々を宇宙にいざなう投映機「ケイロンⅡ」

 

ムーンウォーカー

 

地球の1kgの重さは他の惑星ではどのくらい重いのだろうか?

 

竜巻はどうしてできるの?

 

大型アンモナイト

 

プラネタリウムの入ったサイエンスエッグ

 

小平市の東京側に西東京市がある。東京があまりにも大きくて、西東京市と言われてもピンとこない。田無市と保谷市が2001年1月に合併して誕生した市だが、旧名のほうがなじみが強い。

多摩六都科学館(西東京市芝久保町5)は1994年3月に開館した。開館当時は6市が運営していたが、西東京市の誕生で5市となったが、名前は変わっていない。

ウィキペディアによると、直径27.5㍍の傾斜型ドーム「サイエンスエッグ」は世界第4位の大きさを誇る。12年7月のリニューアルに伴い、最新鋭の投映機「CHIRONⅡ」(ケイロンⅡ)を導入し、「最も先進的なプラネタリウム」とされている。

ケイロンⅡは70センチの球体。1億4000万個と世界で最も多くの星を投映するプラネタリウムとして世界一に認められている。

専門スタッフ7人によるライブ解説で宇宙に関する旬な話題を提供しているプラネタリウムとして有名だ。また、全天周デジタル映像システムを駆使した高精細で臨場感あふれる大型映像もライド感覚があふれ楽しそう。

展示室もリフォームされ、「チャレンジの部屋」「からだの部屋」「しくみの部屋」「自然の部屋」「地球の部屋」の5つの部屋とその中にある4つのラボで体験しながら学べる場になっている。2014年3月1日で開館20周年を迎えた。

食をめぐるゲノム編集

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション, 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

2019/02/10  23:25


 

DNAは自然でもなくなる?

推進派と慎重派

 

食に関するゲノム編集の安全・安心性をめぐって、積極派でマッスルマダイを育種している京都大学大学院の木下政人助教と慎重派の北海道大学の石井哲也氏、さらには主催者のたねと食とひと@フォーラム共同代表の吉森弘子氏3者によるシンポジウムが10日、日比谷図書文化館の日比谷コンベンションホールで開かれた。

金属3Ⅾプリンタで成功したGEの秘訣

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション, 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

2019/02/06  18:25


 

GE additiveの一体鋳造自動車用ホイール

 

第1回次世代3Dプリンタ展が2月6日、東京ビッグサイトで開催され、GE アディティブ日本統括責任者のトーマス・パン氏が金属3Dプリンタ成功の秘訣「アディティブ・マインドセット」と題して話をした。

・GEの創立者はトーマス・エジソン。彼は1万回も失敗しているが、なぜそんなに失敗したのかと聞かれ、「私は失敗していない。9999回のテストしたものが動かないことが分かっただけだ」と答えた。これこそマインドセットの1つ。

・GEの産業ビジネスの柱は①エネルギー供給②人々を安全に運ぶ③人々の生命を救う-の3つ。将来に向けた成功要素にはアディティブ、デジタル、研究開発、グローバル・オペレーション、キャピタルの5つだが、最初に取り上げ重要視しているのがアディティブ技術だ。

・アディティブのマーケットは今後急速な成長が見込まれる。2017年度比21%増の約73億ドル(約8000億円)。金属アディティブは77%成長。樹脂対金属は2対1(2014年)から1対1(2027年)へ。金属アディティブの年平均成長率は10年間で29%増。アディティブへの総投資額は2017年まで4年間で130億ドルだったが、今後10年間で2800億ドル(約30兆円)に上る見通し。

・アディティブ技術は新規技術で、イノベーションから生まれる。GEは世界を対象に「イノベーション・バロメーター」を調査した結果、3Dプリンティングがビジネスに効果を与えると答えた企業幹部が世界で63%だったのに対し、日本は36%にすぎなかった。「期待が低い」。これが日本の現状のマインドセットではないか。

・面白さは感じているが、それが実際にビジネスに影響を与えるかどうかについては日本ではまだ意識が低い。

・金属3Dプリンティングはレーザー式(粉末材料)、電子ビーム式(溶接や形成の難しい難削合金)、バインダージェット式(高速造形スピード&低単価パーツ)などいろんな手法があるが、レーザー式と電子ビーム式が金属3Dプリンタのすべてを占めている。

・金属3Dプリンティングの面白いところは通常加工がしにくい、鋳造できてもなかなか形成しにくい、精度を出しにくいなどいろんな課題のある素材が粉末を使って作ることによってたくさん作れること。樹脂の金属3Dプリンタとは全く位置づけを持っている。

・複雑な金属。組成、ドメインなどを含めて局所的にエネルギーを与える。この手法によってさまざまなことができる。なぜ使うのか。

・スピードが速くなる。何でもいいわけではない。画期的な製品&パフォーマンスも正しい製品を選ばなければ画期的にならない。何を作っても3dプリンティングが速くなるということは絶対ない。設計・デザインに重点が置かれる技術である。

・またサプライチェーン効果も大きい。フローが変るため。後述。

・GEアディティブでアディティブを使いだしたのは2009年から2010年。エアバスとボーイング用のLEAPエンジンの燃料ノズル開発に苦労していた。3Ⅾプリンティングが台頭し始めているころでそれを使ってみたら開発ができた。すぐに量産に進むが、当時のマインドセットは「開発には使うよ。けれど製造はしないよ」。

・それでいろいろトライしたができなかった。モーリス・テクノロジー社と一緒に量産に道筋がつくかどうかをトライした。道筋がついた瞬間に同社を買収しアディティブテクノロジーセンターを構築した。LEAPLジェットエンジン燃料ノズルのFA認証を取得し2016年から量産をスタートさせている。

・社内のマインドセットがどんどん変わってきた。これはできないか、あれはできないか。量産できるじゃないか。成功によってポジティブスパイラルになっていく。

・アディティブ・マニュファクチャリングで量産しているLEAPジェットエンジン燃料ノズルは在庫の削減95%、コスト効率が30%、重量の削減25%、パーツの点数が20個→1個、疲労強度・靭性が5倍以上に向上した。

・同ノズルは2015年にFA認証取得、16年から量産を開始。昨年10月2日に3万台の出荷を達成した。エアバスの6割くらい、同730には100%乗っている。300機~400機世界で飛び回っている。

・アディティブで設計したa-CT7エンジンのミッドフレームは7つのアセンブリーを1つに集約。300部品を1点に統合。5キロの重量削減。エンジン全体では99部品が16点に集約した。

・考えられないパーツの統合・集約になる。300部品1部品になると在庫管理からエンジニアも激減する。品質管理も同様。サプライチェーンは従来工法をベースに作っている。技術だけでなくコスト効果も大きい。

・もっと大きなエンジンにアディティブを使っている。ボーイング777x用のGE9Xターボファンジェットエンジンはすべてアディティブになる。

・「アディティブ=何でもできる」というイメージがあるが、そうではない。絶対にできない。自由設計ではない。しっかりとしたアディティ設計(Design for Additive)ルールがある。アディティブ設計を社内に育てないとアディティブはできない。高いハードルがある。

・何を作るのか。どうして作るのか。これができたらどうなるのか。技術観点だけでなく、ビジネスとして考えるべき。採算を考えないと研究開発はともかく、量産にはならない。試作ができたから量産にはいかない。ハードル高い。

・アディティブ製造への成功への道を開く「AddWorks」。ビジネスの採算性→デザイン設計→試作→量産最適化→量産認証

・魔法の箱。ただデジタルデータを入れれば最終製品が出てくるというマインドで考えられているのとは全く違う。アディティブジャーニーを早く始めてもらいたい。始めないとどんなものか分からない。

・箱に入った小さな鋳造工場。

・欧米企業は始めている。始めないとどんなものか分からない。自動車、医療、衛星、ロケット、アビエーションなど様々な応用産業。

・電話からスマートフォンにあっという間に切り替わった。馬車→車、白熱灯→LED、真空管→半導体。前にあったものが不要になった。アディティブに投資をしている。

・GEのミッションはエコシステムの構築。いろんなことにトライしている。ネットワークを構築し社内で1000から2000くらいのプロジェクトを進行させている。18年から社外に向けたサービスを開始した。

・ATC=アディティブ・テクノロジーセンター(オハイオ州シンシナティ)は航空機関連、CEC=カスタマー・エクスペリエンスセンター(ペンシルベニア州ピッツバーグ)はカスタマー対応。

・金属3Ⅾプリンタの発祥の地はドイツ。GEアディティブカスタマー・エクスペリエンスセンター(ドイツ・ミュンヘン)を17年末に完成させた。エンジニア教育、コラボレーション、トレーニングなどを行っている。

・技術を入れる装置を買うだけでなく、社内の組織を動かすためのアディティブマインドセットを作らなければならない。

「はやりを作るのが仕事」VIDA Corporation社長

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション, 経済/デリバティブ

2019/02/04  19:45


VIDA Corporationの杉本大社長

 

2019年度上期企業価値フォーラムが4日、パレスホテル東京で開催され、認定企業3社の社長が事例を報告した。経済産業省中小企業庁と中小企業基盤整備機構が後援している。

同フォーラムは早稲田大学商学部を卒業し、三菱レイヨン、日本経営合理化協会を経て2009年にコンサルタントしとして独立した武井則夫氏が設立した企業価値協会が開催している。

中堅中小企業が対象に、自社が持つ特徴的価値の発見(価値認定)、広報(メディア交流)、進化(活性化)を支援する業務を行っている。

具体的には認定企業を選定し、年2回の認定式を開催。企業とメディアをつなげる業務を行っている。認定を受けると、メディアとのパイプができ、取り上げられる機会が増える。今はテレビの威力が大きいが、テレビ局の記者は「必ず新聞記事を持って取材にくる」(佐田展隆・佐田社長)という。

最初に登壇したのは29歳で創業したVIDA Corporationの杉本大社長。2005年設立。vidaはポルトガル語でライフスタイルの意味。カー用品総合専門店のオートバックスセブンに入社し、米たばこ会社のフィリップモリスジャパンに転職した。創業するのが目的だった。

・車好きの人ばかりだったオートバックスで居酒屋にいったときに、自分が飲みやすい店、先輩と話やすい店をつくろうと思った。「無の空間を笑える空間に変貌させたい」。自分の使い勝手の良い会社を作ろうと思ったのが内装工事業を始めたのがきっかけだ。建築や不動産の勉強をしていたわけでもないが、自分のやりたいことを先に決めた。ポルトガル語のライフスタイルという言葉はそこからきている。

・グループ企業4社で「空間価値を創造する」のがビジネスモデル。物件を探す(不動産仲介業=VIDAマネジメントサービス)、店舗を造る(VIDA Corporation=内装工事業)、守る(VIDAメンテサービス)。それと海外出店サポートのVIDAデザインインターナショナル)。1個ずつだと売り切り商売で終わる。毎回新しい客を開拓しなければならない。新しい商材を作らなければならない。この3つをつなぐことでスポットの仕事からストップの仕事に移行。点から線を作っていく。

・グループ会社が大きくなることで円も大きくなる。8000社の顧客リストを持っている。これが成長基盤であり、大きなビジネスモデルになっている。

・2Dではなく3Dで組織図を見る。・総務・人事など管理系の部署を1つ置く。真ん中に1つを作ることによってビジョンの共有を行う管理体制をとる。

・理念の創造として「ハッピーの創造」。社員数50人。創業して10年間は自分の考えできたが、10年後以降は社員のハッピーを具現化する。

・「うどんやを造ってくれ」といわれた際にうどんやをつくるだけなら単なる請負業。頼まれたことを形にするだけ。価格競争に飲み込まれていく。わたしたちなりの味付けをし物事を生み出す提案をする。これをかなえるためにビジネス自体をデザインする。こうしていったほうがうどんが売れるんじゃないですか。こうやってレイアウト組んだほうが効率が良いのではないか。われわれの提案を付け加えることによってビジネスをもっとうまくするためにデザインする。

・その行為論で不動産を紹介したり、その行為論で設計をしたり、その行為論でメインテナンスを行う。行為で稼ぐのではなく、目的で稼ぐ。そうした体制を強化していきたい。

・小型案件(1~10店舗)から中型案件(11~50店舗)を主戦場としている。小型案件は店長をやりながら社長をやっている。コンテンツはあるが、店舗の広げ方が分からない。自分で不動産を見つけにいけない。この小型案件を中規模に持ち上げていく。

・この小規模なラーメン屋やうどん屋に対して一気通貫でやれますよという会社は存在していない。ここがわれわれの主戦場となっている。

・東京は1つのマーケットプレース。名古屋から東京に出てきた居酒屋(新時代)。名古屋のコンテンツが売り。札幌のお好みやや岩手のそばやが東京出店。東京で名をはせたイタリアンが全国に出て行く。東京新橋で生まれたQueen of Chickensが長岡、京都、大阪と全国展開中だ。東京で認知度を上げることによって地方でも経営したい。地方から強いコンテンツが東京にきて東京でブランディングをかけるビジネスを支援し多角展開していく。

・外食産業もアパレル産業も人口の多い国で出て行く。進出をしやすい受け皿にもなっている。千房は上海に進出している。

・農林水産省とがっつりタッグを組んでいる。米や肉などの国内消費量が減っていく。海外で和食店を作って一次産業を世界に輸出する。外貨を稼ぐ。VIDAがサポート。日本食料理人の海外展開支援事業、日本食サポーター認定制度、調理師技能認定制度の3つを農水省から受託している。農水省との枠組みの中で取り組みができているのは国内ではVIDAだけだ。

・国内では都市部に出て行くか、海外に出て行くか。都市部は競争が激化している。ブルーオーシャンを目指す人も多い。2018年は300人がセミナーに参加した。すべて助成金で賄っている。テストマーケティング、立地調査、渡航費、ホテル代、セミナー費用も税金で賄っている。いわば「味見」だ。

・「なんちゃって寿司屋」などが海外にはたくさんある。競合・類似品との差別化を図るために農水省はロゴ認定マークを出している。日本の農水省が認定した食材を使っている店。

・退店も多い。主因は従業員の雇用が維持できない。修了証を出す。フレンチやイタリアンも出しており、それの農水省版。やめるタームをどう長くするか。1年ではなく3年。海外戦略の支援をしている。今時点ではわれわれだけだ。

・世界各地に商業施設を50個所ほど作りたい。中国福建省福州の中城大洋百貨内にジャパンフードタウン。和食は世界で名の通った食べ物。日本のカルチャーに興味を持った人が集まってくる。集客の武器として和食を使う。

・日本文化を知ってもらって、その国の文化をもっとハッピーにしてもらう。和食を知ってもらってハッピーのなってもらう。日本カルチャーの幸せのお裾分け。そこでテストマーケティングしてリアルマーケティングの場を構築していきたい。これが海外戦略の1つだ。

・ロシアやドバイ万博(2020)。和食ももっと知りたい。ロシアの平均寿命は約58歳。寒いし味の濃いものを食べる。味噌や納豆などに興味持っている。長生きしたい思いが強い。「和食を食べれば長寿になれる」というイメージが海外では強い。マレーシア、台湾など。

・外国人労働者の雇用が4月以降増える。3~4万人。労働環境の進化が求められる。工場の設計はこれまで作業場という捉え方をしていたが、効率重視だった。労働環境も改善が求められる。工場の作り方に対する注文も増えている。

・過去にやったことのないことにどうチャンレンジしていくかが重要だ。過去の実績から積み上げて物事を考えるのではなく、時代を横軸でみて、今年は何がはやってどう動くのか。来年のトレンドは何か。毎日ミーティングを行っている。

・ある編集者は「はやりやムーブメントに乗るのは私たちの仕事ではない。それを作るのが自分たちの仕事だ」。VIDAグループも「ムーブメントをいろいろ提供していって楽しみに変えていき、今後も事業を進めていきたい」。

「模倣こそ持続可能なイノベーション」

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション

2019/02/01  23:48


 

バイオナノテク戦略について語る東大農学生命科学研究科の五十嵐圭日子氏

 

世界最大級のナノテクノロジーの展示会「nano tech 2019=第18回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」が1月30日~2月1日、東京ビッグサイトで開催された。

展示会には500社が出展し、自動車、次世代センサー、次世代半導体、AI・ディープラーニング、MEMS・マイクロマシン、軽量化材料、化粧品、再生医療、ウェアラブルデバイス、航空・宇宙、農業、バイオミメックスなど、あらゆる産業に向けた革新的な最先端技術・材料を披露した。

ナノテクビジネスを交換するプラットフォームとして設立されたのがナノテクノロジービジネス推進協議会(NBCI)で、今展示会では「バイオミメティクス」をテーマに下村正嗣理事長の話を聞いた。

・バイオミメティクスは滑舌が悪い言葉だが、非常に古い歴史を持っている。日本語に訳すると「生物模倣」という考え方だが、生物を見てそれにインスピレーションをかき立てられて、まねていろんなものをつくる分野。

・歴史は古くて、レオナルド・ダ・ビンチが鳥を見て飛行機の設計に思いをはせた時代に遡る。日常生活にも結構ある。発泡性のスポンジは動物の海綿をまねたもの。今世紀に入ってから急激に論文の数やパテント、国際会議、コンベンションの数が増えた。

・ネイチャーに2016年調査によると、いろんな分野で論文が増えている。いったい何があったのか。実はお金も動いている。米サンディエゴ動物園が出した経済リポート「Global biomimetics Report」によると、economics game changer と書かれている。ダビンチ指標。

・スイスでは投資に関する会議も開かれている。2011年からバイオミメティクスの国際標準化の動きが始まっている。既に3つの国際標準が動き始めている。日本からも標準化の提案をしている。

・きっかけになった研究例はナノテクノロジーと生物学がウィンーウィンのコラボレーションがあって、今世紀に入って爆発的な論文、パテントの増加につながっている。

・メゾスケールの干渉色、構造色。毛が生えていてそれによって表面積が拡大し天井にひっついたりする構造吸着、蓮の葉が水をはじくことをドイツの化学メーカーが特許を取った。鮫肌もようを考えた流体系をルフトハンザ航空が採用している。

・ナノからマイクロにかけての生物が持っている構造がエコの機能を持っている。これが爆発的な論文の数を増やしている。インダストリー4.0もバイオミメティクスが使える。自立分散型のロボットをインダストリ-4.0に絡めて出している。アリというエコシステムをうまく使ったエコシステムIOTを支えるロボット。

・ナノテクが支援していろんなマテリアルが出てきたが、ヨーロッパではさらに生態系をまねたシステムという考え方が出てきている。環境との関係。ドイツでも大きなプロジェクトが走っている。バイオテクト建築も進んでいる。構造の最適化が進んでいる。ISOの中でも一番早く標準化になった。生物の構造をまねて車のデザインをつくる。

・もっと言うとスマートシティー。そういう考え方が浸透してきている。インド・ムンバイ郊外でスマートシティーができている。

・分子レベルの分野では絹糸を想定したナイロン。ナノテクが生物学とコラボすることでマテリアル系の・・・。機械系バイオミメティクスとして昆虫型のロボットやソナーのようなセンシングシステム。新幹線の500系の形が鳥のくちばしをまねている。

・いままでもあったが、世界のトレンドはロボシステムに移行している。悪く言えば総花、良く言えば統合的な・・・。目指しているのがーサステナビリティというのが欧米ではスタンダードになっている。

・アメリカではバイオミミックリーという言葉が使われている。環境問題のソリューションだと主張している。エコロジカルな視点でもある。生物多様性をいかに環境と調和しながら経済活動に利用していくか。これがSDGSのベースになる考え方だ。

・sustainabilityとdiverisityとのどう関係するのか。マイクロプラスチックが蓄積されて新しい地層ができる。オゾンホールの研究でノーベル賞をもらったクルッテン氏が主張している。新世代の第4期にあると言われているが、彼は「既にそれは終わった。(マイクロプラスチックのような)人の活動が残る地質時代に入った」と言う。

・化石燃料系の燃料を使ってユビキタスであるけれども、使うためには還元しなければならない。ビルを作り空を飛び情報を司る。それに対して生物はどこにでもあるものを使っており時間はかかるものの、再生可能エネルギーを使っている。これをまねるのは1つの方法だ。

・蓮の葉が水をはじく姿を紹介したが、私たちが水をはじく材料を欲しいと思ったらすぐテフロン。しかし、植物はテフロンを使わずに表面の構造で旅をする。何か機能発電する際に、パラダイムが違う生物がほしい。プロセスも異なる。生物が作るプロセスはサステナブルだ。それを使えばバイオエコノミーだが、生物がやっているプロセスをまねて何かしようとするのがバイオミメティクスとなる。

・どうすればいいのか。膨大なビッグデータからどう技術移転をするかということを考えなければいけない。それで提案したいのがバイオミメティクスインフォマティクスだ。マテリアル系のデータはあるが、虫の表面の構造はどうなっているかなど形態に関するものはほとんどない。画像を中心としたデータがほしい。

・帝人のナノフロント。浜松医大の春山教授。抗がん剤の副作用で指紋が。新聞がめくれない。ナノフロントで手袋をつくる。新聞がめくれる。

・生物学の持っている膨大なデータをエンジニアリングに移転するためにはあまり着目されていない形態のデータを組織的に集めて検索エンジンを使いながら構築させたい。マテリアル系のデータベースとコラボしながらバイオミメティクスインフォマティクスを作っていきたい。

 

「イノベーションを生み出すリーダーシップ」

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション

2019/01/31  22:15


 

基調講演する森本博行長野県立大学教授

 

第23回高度技術・技能展「おおた工業フェア」が1月31日(木)と2月1日(金)、大田区産業プラザPIOで開かれた。今年のテーマはものづくりのニュースタンダート「熟練×革新」。

大田区はもの作りのメッカで、とりわけ中小企業が集中している。31日の基調講演「ものづくり企業の戦略発想とリーダーシップ」を聴いた。イノベーションを生む出すリーダーシップとは何かについて森本博行長野県立大学グローバルマネジメント学部教授(首都大学東京名誉教授)が語った。

元ソニー幹部の森本氏はエレクトロニクス部門(VAIO、平面ブラウン管テレビ、プレイステーション)の成功で5257億円の連結営業利益を上げた1997年からリーマン・ショックを受けた2008年に2278億円の赤字に転落。その後10年間で再び7349億円の黒字を計上するなど結構浮き沈みの激しい経営を行ったことを紹介した。

森本氏はイノベーションこそが競争優位の根源に当たると指摘。研究開発、技術開発、応用開発(新製品)などの価値の創造が高収益の根幹だったが、1997年以降、ソニーは何もイノベーションを生んでいないと述べた。

またイノベーションは①新しい製品とサービスの創造②新しい生産方式の導入③新しい市場・販路の開拓④原料の新しい供給源の獲得⑤新しい産業組織、独占的地位の形成―であるとシュンペーターの理論を紹介。駅馬車は何台つないでも機関車にはならない。経済社会の発展は起業家(アントレプレナー)によるイノベーションにあると強調した。

新しいイノベーションが生まれると、それに応じて需要創造、生産技術の革新、投資戦略、マーケティング戦略など価値の獲得が必要であるという。

 

テラヘルツ研究は何ができるか

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション

2019/01/23  22:52


 

テラヘルツ電磁波について話す平川一彦東大生産技術研教授

 

国立情報学研究所(千代田区一ツ橋)の市民講座「情報学最前線」の5回目が23日、学術総合センターで開催された。同研量子情報国際研究センターのメンバーで東京大学生産技術研究所教授の平川一彦氏が「テラヘルツ電磁波の新展開―遠赤外線はコーヒー豆を煎るだけではない―」と題して講演した。

 

・テラヘルツ電磁波はほとんどなじみのない単語だ。ちらほら出始めたのは20年くらい前。しかし今も未開発の電磁波といわれている。この20年くらいでどういうことができるようになったのか、これから先どういうところに進んでいく可能性があるか。

・テラは10の12乗を表す接頭語。すなわち1兆。ヘルツは周波数の単位。テラヘルツは10の12乗ヘルツを意味する。電磁波とは電波や光を包含する広い概念だ。

・これまでエレクトロニクスであまり使われてこなかった100ghzで、上は100テラヘルツ(thz)以下の間。昔は遠赤外線とかサブミリ波と呼ばれていた。何となく新しい感じがするが、もともとある電磁波の領域だ。

・遠赤外線と聞かれてピンとくるのはコーヒーの焙煎。炭火には遠赤外線効果により食物の成分、性質を壊さずに、芯までじっくりと焼き上げる特性がある。

・もう一つは石焼き芋。熱せられた石から放射される遠赤外線(黒体輻射)で芋が焼ける。めらめら炎を焼かれているわけではなく、熱くなった石の上に芋が置かれている。石から遠赤外線が出ていて、それが芋の表面で吸収されて焼ける。

・水による遠赤外線の吸収は非常に大きく、表面から100ミクロン(0.1ミリ)程度の深さにまでしか遠赤外線は入っていかない。表面の薄皮1枚しか焼けない。ほっこり焼けるのは複雑な物理がある。熱伝導を繰り返しながら中まで焼ける。奥が深い。

・コーヒーと石焼き芋しか応用がない。それはテラヘルツが半導体が最も苦手とする周波数帯になっているから。

・マイクロ波は携帯電話で使っている周波数。トランジスターというすぐれたデバイスがある。半導体が得意としている。これをどんどん早くしていけばテラヘルツにいくじゃないかというが、これはなかなか難しい。

・光デバイスは半導体レーザー、光通信などが密に使われている。これをもっと低い周波数に行けばいいじゃないか。これも難しい。

・テラヘルツ電磁波はプロの研究者というかそれを仕事にしている研究者やお宅っぽい「特殊な電磁波」と考えられてきたが、もっと多くの人が恩恵を受ける「普通の電磁波」にもっていけないかという研究がこの20年くらい進められている。

・テラヘルツ電磁波の特徴。テラヘルツの周波数を持っている。波が振動する時間が非常に早い時間で振動する。波長が長く、透過性がある。光の粒の電磁波が持っている小さな光子エネルギーを持っている。

・物質固有の吸収。糖尿病の分子構造。

・「早い」ことを利用して通信への応用が考えられている。有線や無線通信には向かない。大気の中で吸収されるために減衰する。これを生かして行っているのが情報キオスク。駅の改札でスイカ、パスモを使っているが、その1秒の時間を使って映画1本くらいの情報をダウンロードできる超近距離高速データ通信を可能にする研究がどんどん進んでいる。

・衣服などを通して見ることができる。両手を挙げて壁が一周する保安検査が行われている。テラヘルツの電磁波を使ってイメージングを行っている。衣服の下に何かを隠していればそれが上から見える。

・黒体輻射。宇宙の中では光が満ち満ちている。宇宙に存在する光子の98%はわれわれの目には見えないテラヘルツ領域のものだ。宇宙物理の研究や波長の短い暗視装置を作れる。身体の出す黒体輻射を像にすると人の存在を指摘できるし、災害現場でサーモグラフィーを使って体温があるかどうかを判断する。災害救助にも使える。

・乳がんの検査もテラヘルツで可能。がんの部分は細胞が増殖中で、そこだけ体温が高い。熱の分布を見ることでここががんかもしれないと分かることが最近知られている。

・今後30年、40年でどんな進展があるか。応用物理学会で調べた。エレクトロニクスの王道だと思う情報通信に加え、セキュリティー応用、物質科学・創薬、生体・医療、農業・工業、エネルギー・環境・宇宙・・など。

・いままでエレクトロニクスがそれほど得意としてこなかったところをカバーできる可能性を秘めている。テラヘルツはこれまでエレクトロニクスが守備範囲としてこなかった分野をカバーする新しい可能性を持っている。

東大レアース泥開発推進コンソーシアム活動報告会

カテゴリー: 科学/技術/イノベーション, 講演会/シンポ/セミナー/勉強会, 資源/エネルギー/環境

2018/10/30  15:38


 

全体報告する加藤泰浩教授

 

現在の主なレアアース製品群

 

 

 

コミュニテーセンターの前を闊歩する東大生(左手が福武ホール)

 

300年の歴史薫る東大の日本酒「淡青」好評発売中!(コミュニケーションセンター)

 

東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム(座長・加藤泰浩大学院工学系研究科教授)の第4年度活動報告会が30日、東大情報学環・福武ホール福武ラーニングシアター(地下2階)で開かれた。