‘Books’ カテゴリーのアーカイブ

英語はトレーニングだ!

カテゴリー: 英語力/情報力/文章力, Books

2019/03/04  18:20


 

 

作品名:『英語をめぐる冒険』(2008年5月第1刷発行)
著者:岩村圭南(英語トレーナー)
出版社:NHK出版

 

人生に成功する秘訣はルーティン化。「人間の行動の4割は習慣からきていて、だめな習慣でもよい習慣に変えられる。小さなよい習慣をやり始めると脳のメカニズム、体のメカニズムが変わり、一気にいろんなことが変わってくる」(中尾マネジメント研究所社長の中尾隆一郎氏)

うすうす気がついていたが、残念ながら実践できなかった。実践しようとしたが、70歳からではもういかんともしがたい。

この本も『英語は音読だ!岩村流英語筋力アップ法』(岩村圭南著)を図書館から借りてきて、ついでに筆者の初のエッセイをつまみ読みした。時間もたくさんあった。

英語を改めてやろうかなと思って手に取った。最後に彼のメッセージが書かれている。これまでの過去を振り返りながら、小学生時代から現在に至るまで、『英語をめぐる冒険』を続けてきた。ローハイドを見ていた時代から、もう40年以上の歳月が流れた」。

ロディに憧れ、英語に興味を持ち、その面白さの虜になり、英語を学び続けてきた。アメリカの大学院で学ぶチャンスを得て、さらに中学、高校、短大、大学の教壇に立ち、テレビとラジオに出演する機会にも恵まれた。「英語はトレーニングだ」を実践する英語トレーナーが送る3つの「ず」

(1)焦らず=少し練習したくらいで、すぐに結果が出ると思ってはいけません。焦ってもいい結果は出ません。練習すれば間違いなくあなたの英語は上達します。焦らず、じっくり腰を据えて、こつこつ地味な努力を続けましょう。

(2)悩まず=この方法でいいのかなと悩む。しかし、悩むくらいなら練習しろ、いや、悩みながらでも練習しろ、と私は言いたいのです。練習の仕方がわからない、と悩んでいるのなら、まず、手元にある英語のテキストに載っている英文を毎日音読して覚えましょう。それでも続けば英語力はつきます。悩んでいるだけでは何も解決しないのです。

(3)諦めず=せっかく始めた練習を途中で投げ出すのが一番よくありません。短時間でもいいのです。とにかく毎日続けましょう。継続は力なり。途中で投げ出さずに、練習を続ければ、きっとあなたの英語は上達します。練習は決してあなたを裏切らないのです。

この「3つのず」を心に留め、英語のトレーニングをすれば、必ずや上達する。英語はトレーニングだ。何事も簡単なようでいて、やはり難しい。ただどうも真実はシンプルである。

 

『凶刃』(きょうじん)

カテゴリー: Books

2019/02/23  18:00


 

シリーズ第4作

 

好漢青江又八郎も今は40代半ば、若かりし用心棒稼業の日々は遠い・・・。国元での平穏な日常を破ったのは、藩の陰の組織「嗅足組」解散を伝える密命を帯びての江戸出府だった。

なつかしい女嗅足・佐知との16年ぶりの再会も束の間、藩の秘密をめぐる暗闘に巻き込まれる。幕府隠密、藩内の黒幕、嗅足組ー3つ巴の死闘の背後にある藩存亡にかかわる秘密とは何か。

『用心棒日月抄』『孤剣』『刺客』に次ぐ用心棒シリーズの第4作。前3作が短編連作だったのに対し、これは長編の形をとっている。

内容もがらりと変わった。『刺客』以後16年の長い歳月が流れ、主人公の剣客青江又八郎も40代なかばになっている。この時代、40なかばといえば、そろそろ老いを意識する年齢といっていい。人生の秋に入り始めている。その寂寥感が『凶刃』の隠し味になっている。

『用心棒日月抄』で登場したとき青江又八郎は26歳、独り身の青年剣士だったが、いま歳を重ね、自分の身体がもう若くないことに気づきはじめている。妻の由亀もあと2,3年で40歳になる。3人の子ども(上2人が女子、下が男)も大きく育っている。

かつて「私を、青江さまの江戸の妻にしてくださいまし」といった佐知ももうじき40歳になる筈だ。いつの時代も時間はあっけなく過ぎる。

北国の小藩の武士、又八郎が4たび密命を帯びて江戸に出てくるところから物語は始まる。佐知が属している嗅足組が解散されることが決まり、その知らせを密かに佐知に伝えるのがこのたびの又八郎の任務だ。

これに幕府の隠密、藩内の姿を見えない敵が絡み、3つ巴の死闘が繰り広げられていく。

文芸評論家の川本三郎は解説(ふたつの世界を生きる又八郎)の中で、「又八郎は、2つの世界を生きる両義的存在である。2つの顔を持っている」と指摘している。北国小藩の藩士としての顔と、脱藩して江戸に来た素浪人としての顔である。組織人と自由人の2つの面を合わせ持っている。

「彼は藩と江戸を往還することで、2つの世界を生きる。藩にいるときの又八郎は、組織人として藩の制約のなかに生きる。彼はまた藩内では、由亀との家庭を持つ家庭人である。3人の子どもの父親である」

「藩内にいる又八郎がインサイダーだとすれば、江戸に出てきた素浪人の又八郎はアウトサイダーである。藩の密命を帯びているのだから本質的に藩士だが、見かけだけは細谷源太夫と同じように浪人であり、そして自由人である」

脱システムこそ冒険

カテゴリー: Books

2019/02/15  11:36


 

日本人で初めて冒険の本質に迫った『新・冒険論』

 

作品名:『新・冒険論』
著者:角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)
出版社:集英社(インターナショナル新書)

 

角幡唯介氏は作家、冒険家。1976年、北海道生まれ。『空白の五マイル』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞、『雪男は向こうからやってきた』で新田次郎文学賞、『アグルーカの行方』で講談社ノンフィクション賞を受賞。

探検と冒険の違いを「脱システム」という概念で区別している。「探検というのはシステムの外側にある未知の世界を探検することに焦点をあてた言葉であり、冒険のほうはシステムの外側に飛び出すという人間の行動そのものに焦点をあてた言葉だ」という。

「私はよく探検は土地が主人公の言葉で、冒険は人間が主人公の言葉などといったりもするが、それはこういう意味である。要は同一の行為でも探検を使うのが適切な文脈もあれば、冒険を使うのがよい文脈もあるわけで、私はこうした基準でこの二つの言葉を使い分けている」。

しかし、「本書では基本的に冒険で統一することにした。冒険のほうが意味が広く、汎用性も高いので言葉としてあつかいやすいからだ」という。

「本書は冒険とは私なりに徹底的に記述した本であるが、ある意味、学生時代(早大探検部時代)にこの三原山計画に対して感じていたもやもやとした感情を論理に訴えて説明しつくしたものだともいえる」とし、「キーワードは脱システムだ」としている。

「この本では冒険がシステムの外側に飛び出す行為であることを示し、そのうえで行為としての脱システムがどのような構造になっているのかを明らかにして、説得力のある言葉で冒険の本質を迫るのが狙いである」と書いている。

要は論理でもやもやとした感情を語っているのだ。朝日新聞社をやめて冒険家になった人物だが、論理は面倒くさくて厄介である。面白くなかった。

「人はなぜ冒険をするのか。冒険者は脱システムすることで、自力で命を管理するという、いわば究極自由とでも呼びうる状態を経験することになる。この自由には圧倒的な生の手応えがあるので、一度経験するとそれなしにはいられないようなヒリヒリとした魅力というか中毒性もある。」

「じつはこの自由における矛盾した感覚にこそ、冒険者を何度も冒険の現場に向かわせる真の要因があるのではないかと、私は最近考えるようになった。」

「自由は面倒くさい。自由みたいに自分で判断しなければならない苦しい状況に比べると、管理社会にいるほうがはるかに楽である。現代人にとって自由は不要となってしまったように、私には見る」

「だが、私はそうした管理される状態を望む傾向に抗いたいと思っている。自由には今でも人間が闘って獲得するだけの価値があると思うし、実際、私が冒険的行動をやめられないのも、自然の中で感じられる自由に、生きていることそのものの秘密があるように思えるからだ」

 

『夜去り川』

カテゴリー: Books

2019/01/24  23:41


 

やはりシミタツ節が冴えている!

 

作品名:『夜去り川』(よさりがわ)
著者:志水辰夫
出版社:文芸春秋(2011年7月30日第1刷発行)

 

現代小説でデビューした志水辰夫がいつの間にか時代小説作家に変わっていた。『青に候』『みのたけの春』『つばくろ越え』などを発表。書き下ろしの『夜去り川』は長編3作目だという。

時代小説SHOW」によると、「主人公の檜山喜平次は27歳の若者。武士としての身分を隠して、渡良瀬川のほとりの村で渡し守をしている。よそ者の彼がなぜ武士としての体裁を捨てて、村民のために尽くす渡し守をしているのか、物語が進むにしたがって、その謎は明らかになっていく」。

志水の作品は主人公が何者かも知らせず、場所も地方であることが少なくない。全体がすぐに読み取れないので疲れていると読み続けるのが苦痛になる。

そこを我慢して読み進めていると、その辺が少しずつ分かってきて、その分かりようが逆に面白く、嬉しくなってくる。その醍醐味がこたえられなくて読み続けることになる。厄介な物書きだ。

舞台は上野(こうずけ)の桐生に近い渡良瀬川沿いの黒沢村と妙見村。別称上州。時代は黒船が来航した年。喜平次も黒船を見て衝撃を受け、渡し守に身を落とし、自分を見つめ直す機会を得ることができた。

新しい時代に向けて社会が大きく変わろうとしているときだ。黒船が喜平次に与えた衝撃は大きかった。

「小さな家中の剣術指南となることを、双六の上がりとしていた自分の有り様がいかに貧弱で、取るに足りないものか、どう取り繕ってみたところで意味があるとは思えなかった。骨の髄まで打ちのめされて、浦賀を離れたのである」

「あの日を境にしたもの、しようとしていたもの、しなければならないと思い込んでいたもの、それが朝露さながら、目に見えて立ち昇りながら消えてしまった。いまここに残っているわが身は抜け殻にすぎない」

正之助少年とその母親すみえ、祖母のいちの春日屋ファミリーと、喜平次の交流もいい。「かかあ天下」の起こりも上州。女の気性がすばらしい。

喜平次は物語の最後に、上州の村で、遠州浪人比島藤兵衛51歳と息子の小次郎29歳を頭目とする押し込み強盗団を討ち果たす。ハードボイルド小説を彷彿とさせるアクションシーンにしびれるのは私だ。志水ワールドを期待した読者にはたまらない。

 

「知ってはいけない」

カテゴリー: 会見メモ, 政治/外交/国際/軍事, Books

2018/12/19  23:59


 

登壇したノンフィクション作家の矢部宏治氏

 

ゲスト:矢部宏治(ノンフィクション作家)
テーマ:隠された日本支配の構造
2018年12月19日@日本記者クラブ

 

日本のあらゆる制度や仕組みは偏向していると思ってきた。日本の外交もおかしいと感じてきた。米国は大国でありながら、日本は一体何を理由に米国に対して卑屈でなければならないのかとも考えてきた。日米関係には両国が引きずってきた「闇」の部分を持っているのではないか。

私だけではない。怖い物見たさに「闇」をのぞきたい気持ちが国内的にも強まっている。ノンフィクション作家の矢部宏治氏の近著『知ってはいけない』『知ってはいけない2』(いずれも講談社現代新書)がベストセラーとなっているのはその証拠だ。

いくら河野太郎外相が独自の外交論を展開しようが、これを知れば理想的な裸の外交論は吹っ飛んでしまう。闇はそれだけの爆弾を抱えている。悲しいことだが、国民はこのことを隠されてきた。知らなかった。知らないほうが良かった。これが悲しい現実である。

日本の空は、すべて米軍に支配されている

 

『影法師』

カテゴリー: Books

2018/08/19  21:23


 

 

書名:「影法師」(The Shadow)
著者:百田尚樹(ひゃくた・なおき)
出版社:講談社(2010年5月20日第1刷発行)

1956年大阪生まれ。同志社大学法学部在学中から「ラブアタック」(ABC)に出演し、常連だったが、5年目で中退。その後、放送作家となり、「探偵!ナイトスクープ」のチーフライターを25年にわたって務めたほか、「大発見!恐怖の法則」などの番組の多数を手掛けた。

2006年、特攻隊のゼロ戦乗りを描いた『永遠の0』で作家デビュー。高校ボクシングの世界を舞台にした青春小説『ボックス』が圧倒的な支持を集め、2010年に映画公開。13年には『海賊とよばれた男』で本屋大賞を受賞。同年9月から『フォルツゥナの瞳』の週刊誌連載を開始した。

『影法師』は小説現代2009年8月号~10年4月号に連載されたものを加筆した。『海賊とよばれた男』を読んだが、それまでは周辺的なニュースで知るくらいだった。

百田氏が時代物を書くのは珍しいと思いながら何気なく読んだが、放送作家としての長いキャリアを思えば、物語の引き出しはたくさんあったのだろう。

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茅島藩(かやしまはん)8万石の筆頭国家老に抜擢されたばかりの名倉彰蔵(なくらしょうぞう)は、小柄ながらがっちりとした体躯を持ち、精悍な顔立ちは50歳には見えない。

長らく江戸家老を務めていた彰蔵が国元に戻ったのは立夏を過ぎた頃だった。三月前、突然、筆頭家老を拝命したのだ。彰蔵が国の土を踏むのは20余年ぶりだった。

彰蔵は夕立が上がったばかりの庭から涼しい風が入ってくる元中老の屋敷に手を入れた家の濡れ縁で、探索を命じていた若党の富樫九郎右衛門から報告を受けていた。

「磯貝彦四郎殿は亡くなっておられました」

「磯貝殿は名を本田五郎と変え、浦尾に住まわれていたそうですが、2年前の冬に亡くなったということです」「労咳(ろうがい)であったそうです。供養をした寺の住職にも会い、卒塔婆も確認いたしました」

磯貝彦四郎は20余年前、ある不始末により藩を逐電した男だった。「とよと申す流れ者の飯炊き女と暮らしていたようですが、女は磯貝殿の死後、刀や着物などを売って、いずこかへ立ち去ったそうです。行方はわかりませんでした」

彰蔵の脳裏には彦四郎の姿が浮かんだ。肺を病み、自暴自棄になって、素性のわからぬ飯炊き女と暮らす50男のすさんだ生活が見えるようだった。

「磯貝彦四郎は若い時は大層すぐれた人物であったと申す者が何人もおりました。学問も良くしたとのことでございます」と九郎右衛門は言った。

「学問だけではない。彦四郎は剣も藩内で敵うものがない男だった。しかし、最もすぐれたところはその人物だった」

彰蔵は呟くように言った。

「磯貝彦四郎は、儂の竹馬の友であった」

彰蔵は初めて彦四郎に会ったことを思い出した。40数年前のその日は彰蔵にとって、生涯忘れることのない日だった。

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茅島藩では藩士といえども、上士と中士と下士には厳然たる身分差がある。下士が上士と城下ですれ違う時は、草履を脱ぎ、道の脇で跪かなくてはならない。彰蔵の父、千兵衛は御徒組の下士だった。

、戸田勘一と名乗っていた彰蔵が父の千兵衛と妹の千江とともに猿木川での釣りから戻り、城下にさしかかった時は夕方近かった。

そこに2人の中間を連れた上士が通りかかった。千兵衛は千江をそばに呼び寄せた。そして自分は道の脇に土下座した。勘一も魚籠を置き、父に倣った。しかし、千江は道に座るのを躊躇った。前日の雨でぬかるんだ道に座って、新しい晴れ着が泥で汚れるのを気にしたのだ。父は懐から手拭いを取り出して道に敷き、目で千江に座るようにうながした。千江は手拭いの上に座った。

上士の一行は千兵衛の前までやってくると、そこで足をとめた。「敷物の上に土下座する法はなかろう」

千江は目を閉じて口を結んだが、閉じた目から涙がぼろぼろとこぼれた。

「それでも侍か」勘一は思わず怒鳴った。「恥を知れ」

「年端のゆかぬ者ゆえ、ご無礼は何卒ご容赦を賜りたく-」

上士はみなまで言わせず、「ならぬわっ」と一喝した。その顔は怒りで真っ赤になっていた。

「子どもであろうと武士じゃ。上士を罵倒したからにはそれなりの覚悟があろう」そう言うと、上士は刀を抜いた。武士が一旦、刀を抜けば、ただでおさまるものではない。相手を仕留めるか、それ相応の傷を負わさなければ、士道に悖るということでお咎めがあるのは必定だった。

勘一は死を覚悟した。「存分に」

千兵衛はやわらに立ち上がると、刀を抜いた。「貴様っ」と上士は怒鳴った。「上士に向かって刀を抜くか。控えろ」

「子どもを見殺しにする親など、おらぬわ」千兵衛はそう叫ぶと、踏み込んで刀を振るった。上士は腕を切られて、刀を落とした。

上士は悲鳴をあげて逃げた。千兵衛は追おうとしたが、不自由な足が泥に取られて滑った。起き上がろうとしたところを、腹を中間に槍で突かれた。勘一は俯せになった父の背中から槍の穂先が飛び出している光景を茫然と見ていた。もう1人の中間が脇差しを抜いて、父の首を掻き切ろうとしていた。

気が付くと、勘一は見知らぬ屋敷の前庭に立っていた。陽はすっかり落ち、あたりは暗かった。玄関に通じる石畳のすぐ横に、戸板に乗せられた父の遺骸が横たえられていた。

1人の中年の武士が勘一のそばにやってきた。「家人に家まで送らせよう」との声を聞いて、勘一ははっと我に返った。

涙が込み上げ、勘一はしゃくりあげた。武士が後ろから勘一の両肩にそっと大きな手を置いた。その時だった。

「泣くなっ」と怒鳴る者がいた。正面に勘一と同じ年格好の少年が立っていた。その少年は勘一の前まで歩み寄ると、仁王立ちして言った。

「武士の子が泣くものではない」勘一はその気迫に呑まれれて泣くのをやめた。

「お前の父を切ったのは伊川桃蔵配下の者。お前が敵討ちするなら、助太刀する」

それが勘一と磯貝彦四郎との出会いだった。

『終わりの感覚』

カテゴリー: Books

2018/07/31  09:04


 

『終わりの感覚』

 

書名:『終わりの記憶』(原題『THE SENSE OF AN ENDING』新潮社)
著者:ジュリアン・バーンズ(2011年に本書で英ブッカー賞受賞)
訳:土屋政雄

 

最初に飯田橋ギンレイホールで見たのは映画「ベロニカとの記憶」だった。よく分からなかった。

「小さな中古カメラ店を営みながら独り穏やかに引退生活を送るトニー。ある日、見知らぬ弁護士から手紙が届く。40年も前の初恋相手ベロニカの母親の遺品を伝えるものだった・・・。奇妙な遺品が青春時代の苦い思い出を呼び覚ましていく、老いと記憶をめぐるミステリードラマ」(ギンレイ通信Vol201)

それで訳書があると思って光が丘図書館で調べると、原作があった。それがこれだった。「精緻、深遠、洗練。英国を代表する作家の手になる優美でサスペンスフルな中編小説」(川本三郎氏)とあった。

「生きることとは過去を思いだすことなのかもしれない。年齢を重ねるほど過ぎ去った時がよみがえる。とりわけ多感な青春時代が。決して懐かしいのではない。長く忘れていた、いわば『音信不通』だった過去はあくまでも苦く重い。リタイアした60代なかばの主人公が青春時代を思い出してゆく。初めての恋人。若くして自殺した頭のいい友人。そして隠された謎が明らかになってゆく。思い出すとは悔恨に向き合うことなのだろう」(アニータ・ブルックナー)

 

『政治の衰退』(上)

カテゴリー: Books

2018/06/19  21:07


 

フランシス・フクヤマ氏

 

ゲスト:フランシス・フクヤマ氏(スタンフォード米大学フリーマン・スポグリ国際研究所上級研究員)
テーマ:『政治の衰退』(上)出版記念
2018年6月19日@日本記者クラブ

フランシス・フクヤマ氏は翻訳書『政治の衰退』(上)を出版した。米社会の亀裂の激化、世界各地で反移民や大衆迎合主義の台頭で民主主義が危機に直面していると説き、このような時だからこそ、自由な国際秩序を守るまめ、知識人が声を上げていく必要があると強調した。

・米国の社会ではあまりにも深い亀裂、分断、二極化に襲われている。共和党と民主党では考えで重なるところは全くない。何もかも抜本的なところで意見が合っていない。統治の政策や妊娠中絶や財政赤字などどこにも既得集団がいて社会が真っ二つに分かれている。

・オバマ政権時代は重要な問題について何も対処できなかった。予算案についても議会を通すことができなかった。政治姿勢について対処が不能だった。

・Vetogracy(拒否権を発動する権利)という言葉を勝手に作った。あれもいや、これもいやということによって支配をする。大変な金をもった既得権益集団は政治システムそのものを拒絶する。世界各地の国々でもみられる。

・トランプ政権は拒否権によって支配されている。多くのアメリカ人は今もシステムについては実行性ない、一般とのニーズに対してきちんと対応ができていない、システムは麻痺をしている、拒否権によって支配されていることなどに怒りを感じており、強権的な人を求めていた。トランプ氏ならできるんではないかという期待があった。

 

 

『官僚たちのアベノミクス』

カテゴリー: 経済/デリバティブ, Books

2018/04/13  21:21


 

真筆の動機から語り始めた軽部謙介氏

 

ゲスト:軽部謙介(時事通信社解説委員)
テーマ:『官僚たちのアベノミクス』(異形の経済政策)&その後

・2012年9月自民党総裁選に勝利し、総裁として経済政策を語る。同年12月の総選挙で首相として経済政策を語る。現在に至るまでのアベノミクスを検証した。

・いわばプロセスの検証だが、金融政策をど真ん中に据えた。アドバイザー的な役割を果たした方々を中心に政策がつくられていくことはこれまでほとんどなかった。それが執筆の動機だ。

・アベノミクスは論点の多い経済政策。アベノミクスの評価はあまり前面に出していない。ファクト・ファインディングの必要性。記録性を重視した本。

・政策決定は合成ベクトルに似ている。どんな当事者がどんな力学で引っ張ってその政策を推進しようとしたのか。ベクトル的な発想で考えていく必要があるのではないか。

・安倍晋三氏が自民党総裁になり、総選挙で勝って首相になり、経済政策を霞が関に落とし込んでいくプロセス。これはいったいどういったプロセスだったのか。ここで国家意思が形成されていく過程を考察したいと思ったのが執筆の動機だ。

『大友二階崩れ』

カテゴリー: 祭り/フェスティバル, Books

2018/02/21  07:35


 

受賞あいさつをする赤神諒氏

 

辻原登、高樹のぶ子、伊集院静の選考委員3人とともに

 

第9回日経小説大賞の授賞式・座談会が2月21日、東京・大手町の日経ホールで開かれた。第1部は贈賞式、第2部は辻原登、高樹のぶ子、伊集院静3氏と受賞者の赤神氏を交えての座談会が開かれた。

著者の赤神諒(あかがみ・りょう)氏は1972年京都市生まれ、同志社大学文学部卒。現在上智大学教授(環境法)、弁護士。環境法では「5本の指に入る」と自分で話す自信家で、実績もその通り。大学教授は「3日やったらやめられないのは事実です」とのたまうほど。

「関西人であることは笑いを取ることがDNA」と自分に言い聞かせ、あいさつしたゼミ生からも「いつも笑いが絶えないゼミ」と賞賛されている人物。

こんな彼が小説に挑んだ。今回の受賞作『大友二階崩れ』のほか、苦節8年。「質より量」を大切に、大友テーマだけでも6本の在庫が既にあるという。他のテーマも入れると、20冊程度は書いており、在庫もたっぷり。出版する意向のある方はぜひアプローチしてほしいと売り込んだ。風水アドバーザーやパワーストーンセラピストなどの資格もとって文字通り資格マニア。

「1つのことに優れた人は何にでも優秀だ」を地でいったようで、最初から最後まで自己PRに終始し、司会者をして「これだけ自己PRの熱心な人は初めて」と驚いた。

辻原、伊集院両氏が強く押し、それに高樹氏が賛同した。「人物」はともかく、作品は問題ない。「ストーリーの運びがプロはだし。受賞は当たり前。大友氏という実にいい鉱脈を見つけた。自分の宝庫をつくった」(辻原氏)ようだ。

 

受賞作の『大友二階崩れ』

 

天文19年(1550年)、九州・豊後(現在の大分県)の戦国大名・大友氏に起こった政変「二階崩れの変」を、時の当主・大友義鑑の腹心、吉弘兄弟を通して描いた本格歴史小説。

大友家20代当主・義鑑が愛妾の子への世継ぎのため、21歳の長子・義鎮(後の大友宗麟)を廃嫡せんとし、重臣たちが義鑑派と義鎮派に分裂、熾烈なお家騒動へと発展する。

家中での精力争いに明け暮れる重臣の中で、一途に大友家への「義」を貫いた吉弘鑑理と、その弟で数奇な運命で出会った姫への「愛」に生きた鑑広を主人公に、激しく移りゆく戦国の世の、生身の人間ドラマが繰り広げられる。