途上国頼みのIT産業

 近着の国際協力機構(JICA)広報誌「国際協力」12月号をめくっていたら、「世界の鉱物資源(非鉄金属)」(DATA BOX欄)を取り上げていた。鉱物資源はさまざまな形でわれわれの暮らしを支えているが、中でも社会基盤が高度化するに伴い、重要度を増しているのが非鉄金属資源。銅、鉛、亜鉛、アルミニウムなどの「ベースメタル」(卑金属)とニッケル、クロム、チタン、コバルト、マンガンなどの「レアメタル」(希少金属)がそれである。

 近年、特に注目されているのは「レアメタル」だ。携帯電話や液晶テレビ、電池などに利用され、IT(情報技術)産業や航空・宇宙開発などでも不可欠な鉱物。今後ますます消費量が伸びると予想されている。日本は今や、ニッケルは16%、コバルト25%と、世界最大級のレアメタル消費国になっている。

 問題はこれらレアメタルの埋蔵国が一部に限定され、しかもアフリカなど政治・経済情勢の不安定な開発途上国に偏っていることだ。政情不安や内乱などが起こった場合、一気に供給が途絶するリスクを常に抱えているわけだ。国際協力誌が「日本の産業活動の持続・発展のためにも、世界の平和と安定への国際協力が大切だ」と主張するゆえんだ。

 供給が途絶した場合の価格高騰が心配だ。それでも先物取引所に上場されていれば、高騰しても、市場メカニズムから、価格抑制力が働くが、そうでない場合は、青天井。まず、止まらない。先物でレアメタルを上場しているのはロンドン金属取引所(LME)と大阪商品取引所(OME)だけで、それも取引しているのはニッケルのみ。国内IT業界のために、何もないことを祈るだけである。

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