防衛庁に押し込まれる外務省

 日本のODA(政府開発援助)関係者と久しぶりに会い、最近のODAを取り巻く情勢についてレクチャーしてもらった。ODAは個人的に関心を持ってきたテーマだが、本来業務が忙し過ぎて、ここしばらく、ご無沙汰していた。個人的に感じていることを確認、あるいは修正したかった。
 
 何と言っても大きな変化は軍事色が急激に強まったことだ。防衛庁・自衛隊の存在が非常に大きくなった。もちろん、その背景にあるのはイラク戦争。従来の国連平和維持活動(PKO)の枠を一気に超え、イラクに自衛隊を派遣。派遣期間の1年延長もほとんど議論のないまま12月9日、閣議決定された。小泉首相は決定後記者会見し、自分の考えを語ったが、どう考えても、順番が逆だと思う。

 防衛庁は、来年1月から始まる通常国会に自衛隊法改正案を提出し、PKOへの協力や物資輸送などの「国際貢献」活動を現行の「付随的任務」から、国土防衛と並ぶ「本来任務」に格上げすることを目指していたが、断念。しかし直後の12月26日朝発生したスマトラ島沖地震に絡み、タイ側の要請を受けた形とはいえ、海上自衛隊の護衛艦など3隻を国際緊急援助隊派遣法に基づき、プーケット島に派遣。海外活動への取り組み意欲は実に旺盛だ。

 防衛庁・自衛隊に押されっぱなしなのが外務省・国際協力機構(JICA)連合。平時は「人道援助」が重要だが、いざ戦時なり、緊急時にはどうしても「軍事援助」に敵わないということなのか。2005年度ODA政府予算案は前年度3・8%減の7862億円と6年連続の減額。予算もさることながら、気になるのは外務省・JICA連合軍の影の薄さだ。押し込まれるのはODAへの取り組みに対する理論武装が弱体化しているのでないか。テロを生む最大の理由は「貧困」であり、それを解消するのは武力ではないはずだ。そのメッセージを訴える力が衰えていると感じるのは私だけだろうか。

2 thoughts on “防衛庁に押し込まれる外務省

  1. Anonymous says:

    SECRET: 0
     これを書いた時点では、確かに自衛隊法改正はいったん断念されたはずだったが、その後、スマトラ沖地震・インド洋大津波の被災国に対する国際・国内世論の盛り上がりもあってか、防衛庁側はどうやら”いける”と考え直したようだ。国際平和協力活動を「付随的任務」から「本来任務」に格上げするための法改正を1月21日召集の通常国会に提出する方針に転じた。

  2. Anonymous says:

    SECRET: 0
    またまた方針転換。てっきり改正案が提出されたものとばかり思い込んでいたら、実は提出されていなかった。自民党は意欲的だったが、公明党が慎重姿勢を崩さず、与党内の調整が付かなかったのが実情のようだ。政府提出法案の期限は3月15日なので、防衛庁の粘り腰があるかもしれないが・・・。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

映画/TV/音楽/芸術

Next article

酔画仙