大増税の嵐
民主党政権は6日、消費増税を柱とした社会保障と税の一体改革素案を正式に決めた。関連法案を3月末までに閣議決定し、国会に提出。6月下旬の会期末までに関連法案の採決を目指す。
同法案が可決されれば、税制抜本改革の柱である消費税(現行5%)については「2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる」と明記した。素案はこれに関し、「議員定数削減や公務員総人件費削減など自ら身を切る改革を実施した上で、税制抜本改革による消費税引き上げを実施すべきである」と書いた。
「具体的には、消費税率引き上げまでに、国民の納得と信頼を得るために、衆議院議員定数を80削減する法案を早期に国会に提出し、成立を図る。独立行政法人改革、公益法人改革、特別会計改革、国有資産見直し等の行政構造改革に向けた取り組みを進め、所要の法案を早期に国会に提出し、成立を図る。臨時特例法案及び国家公務員制度関連法案の早期成立を図る。その他、公共調達改革等の不断の行政改革及び予算の組み替えの活用等による徹底的な歳出の無駄の排除に向けた取り組みを強めて、国民の理解と協力を得ながら、社会保障と税制の改革を一体的に進める」とした。
内閣官房が6日に開催した政府・与党社会保障改革本部(本部長・野田佳彦首相)の会合で配布した「社会保障・税一体改革素案について」と題するPDF文書は50ページ(本文45ページ+別紙5ページ)。消費税を引き上げる前提として政府が自らに課した「政治改革・行政改革」は第2部第2章で、1ページにも満たない紙面で付け足し的に盛り込まれているにすぎない。上に引用したのはほぼ全文だ。もちろん、「早期に」とはうたっているものの、具体的な時期は書かれていない。これでは「初めに増税ありき」の意図があると言われても仕方あるまい。
今まさに、「大増税の嵐」が吹きまくっている。昨年11月30日には東日本大震災の復興費用のための臨時増税を盛り込んだ復興財源確保法など復興関連法が成立したばかり。増税規模は所得税7兆5000億円、住民税6000億円、法人税2兆4000億円の総額10兆5000億円。増税は大体決まるときに騒ぐが、決まってしまうとつい忘れ、実際に始まったときに「あれ!」ともう一度騒ぐのがパターンだが、これだけ続くと、忘れるわけにはいかない。1国民ができるのは「政府の監視」と「選挙での投票行動」ぐらいだが、監視を続けなければならない。
税目 内容 期間 捻出額
所得税 総額を2.1%上乗せ 13年1月から25年間 7兆5000億円
法人税 実効税率5%下げ+税額10%上乗せ 12年4月から3年間 2兆4000億円
住民税 全納税者に均等割年1000円上乗せ 14年6月から10年間 6000億円
住民税 退職金10%減税措置廃止 13年1月10年間 1700億円
このブログは事実関係を確認しながら書いているが、7日付の毎日新聞朝刊のこの図が目に入った。消費増税や復興増税などが続き、家計が負担に耐えきれなければ消費が縮み、景気に冷や水を浴びせるリスクを指摘した記事だ。同じ毎日新聞でも社説は「反対なら代替示せ」との見出しを掲げ、民主党に理解を示している。「消費増税に賛成か反対かという設問自体がもはや現実的な意味を持たない」と主張するならば、一般国民はそんな現実を作った政治にどう抵抗すればよいのか。
「今でも年間10兆円もの借金をしながらなんとか社会保障をやりくりしているのだ。少子化は改善の兆候が見えず、今後ますます現役から高齢世代への人口が移る。毎年十数兆円の財源を安定的に確保しなければならないのだ」ということぐらい、賢明な国民は分かっているのだ。説教されなくても、社会保障改革の必要性は理解している。
問題は政府や黒子役の官僚が政策ミスの責任を全く取らないばかりか、その主張に一貫性を欠くことに怒っているのだ。政治家と官僚、それと一蓮托生の大手メディアに愛想を尽かしているのだ。身を切る努力をしない政治家、官僚、メディアに愛想を尽かしているのではないか。
7日朝のBS朝日「激論!クロスファイア」で、司会者の田原総一朗氏は正月に自民党議員4人と会って話したところ、「政治と国民の距離(自分の書いたメモが読めない)がこれほど大きいことはないと言っていた」と述べた。それでも、国民生活を動かすのは政治家だ。国民の意識とかい離した政治家が国を動かしていることの恐ろしさが気になって仕方ない。