そして屋敷森は消えた
風景は変わる。あっという間にガラッと変わる。その姿を目の前で目撃した。連休前に我が家の前の空き地がマンションになることが判明した。着工は7月からだが、その前に土地の整備が始まったのだ。工事に入る前の前処理。工事予定区域の植栽の伐採やフェンスなどの撤去だ。
土曜日の朝から工事用クレーン車などが敷地に入り、そぼ降る雨の中、作業を開始した。これまで木々に覆われて見えなかった地主の家がはっきり見えるようになった。
我が家が地主から土地を買ってささやかな家を建てた17年前はヒマラヤ杉もそんなに高くはなかった。それがいつの間にか大きく育ち、ケヤキや柿の木などを含め、うっそうとした屋敷森になっていた。セキレイやオナガなどが飛んできて、休息場になっていた。
いつもきていた休息場が消えてしまい、鳥たちはさぞ悲しんだことだろう。新しい休息場を見つけたのだろうか。創造や建設は時間がかかるが、破壊は一瞬である。
17年間も当たり前だった風景がある日、あっという間に全く違う風景に転換する。その新しい風景があっという間に、かなり前からずっとそこにあった風景のように思われ、それが当たり前と感じるようになるに違いない。
それにしても、クレーンのアームの一振りで倒されるように伐採される木も哀れだ。もう少し木に敬意を表した伐採方法もあるのではないか。そんなことでは作業にならないのだろうが、あれではヒマラヤ杉が浮かばれない。