何となく知ってしまった赤城乳業『ガリガリ君』の誕生秘話
アイスの王様「ガリガリ君」で有名な赤城乳業(埼玉県深谷市)。1961年(昭和36年)に設立されたアイス一筋のメーカーだが、最初にヒットしたのは64年の「赤城しぐれ」だった。
この「赤城しぐれ」は世の中に受け入れられ、ヒット商品となったが、やはりそこは会社。次の商品が欲しい。80年に「子どもが遊びながら片手で食べられるかき氷が出来ないか?」という発想から商品開発が始まった。
それで81年に決まったのが赤城しぐれに棒を突き刺したアイスだった。それが「ガリガリ君」だった。
ほとんどテレビも見ない私だが、「ガリガリ君」のアイスは知っている。食べたこともある。第23回いたばし産業見本市(東板橋体育館)で赤城乳業の鈴木政次・元常務取締役開発本部長が『ガリガリ君 誕生秘話 商品開発の極意』の話をするというので聞きに行った。
ガリガリ君は同社の主力商品ではあったものの、現在ほどの知名度はなかった。パッケージも「田舎臭い」「歯茎が汚い」「汗が泥臭い」などむしろ嫌われキャラで、反応は良くなかった。
鈴木氏によると、どんな大ヒットした商品でも必ずヒットが止まるプラトー(高原)現象が訪れるという。「何をやっても伸びない」状態が続いた。そこでキャラクター(ガリガリ君)のリニューアルを考えた。
アイスを購入する6割は「女性」だという。だから「女性にノーと言われて反発されたらだめ」。パッケージを変更するときに調査会社を使った。
その調査会社(社長と事務員の2人の会社)の社長に「21世紀に向けて商品を変えてリニューアルしてパッケージも変えて」と言ったら、どうしても私にやらせろと言う。なぜなのと聞いたら「この業界で私以上にガリガリ君を愛している奴はいない」と言った。
社内の新進気鋭のデザイナーは昔のことから逃げられない。若い人でもそういうことが起きる。その会社を使った。そして大ヒットにつながった。だから「外の意見を入れることはとても大切だと思う」という。
鈴木氏はヒット商品を作るポイントについて、以下の8点を挙げた。
1.基本の徹底と変化への対応
2.過去を否定し、失敗を恐れず前進すること
3.お客様の声を聞く(ユーザーイン)
4.お客様を驚かせる
5.お客様がこれを買ったらどんなメリットがあるかを明確にする
6.口コミしやすいネーミングを考える(5/7/5/7/7)売場でアイスを買うか買わないかを決め るのは「0.3秒」←私が入社した40年前は3秒と言われていたが、10倍速くなった。それも好きか嫌いか、知ってるかどうかだけで決める。
7.オープンイノベーション←アイデアは自分でもみんなで商品開発する時代
8.情報が集まる自分となる←情報が集まらない人間になるには2つある。部下から情報を持ってきたときに部下をへこます2つは「ああそれは知っているよ」「今忙しいから後にしてくれ」。この2つを言えば、情報が集まらない人になれる。データではない、その世代の空気感、肌感覚が重要だ。情報を集めるのではなくもらえる自分がいるほうがよほど大切だ。
情報が重要だ。集まる会社にすることが必要だ。
鈴木氏は大きな企業になる必要はなく、「強水カンパニー」になるのがいいと述べた。つまり「小さくても強い会社」のことだ。
また会社は学生時代には情報処理能力の高い人間を求めるが、社会人になった場合、経営者が求めるのは問題発見能力と問題解決能力であると述べた。
鈴木氏は計算でコンピューターに勝つことはできない。最終的に決めるのは人間であると語った。
今や国民的アイスにまで育った「ガリガリ君」。1981の発売開始から38年になる。ひとつの味につき、3種類のパッケージを展開し、年間売り上げは4億本以上。
最近では2014年3月に「ガリガリ君リッチナポリタン味」、19年10月からは「ガリガリ君リッチたまご焼き味」の発売を開始している。
「おいしい」に加え、「元気」で「楽しい」とも要素も入れているという。ショーケースの中からお客さんに呼び掛けているようなイメージだという。