「七草がゆ」にパラリと振る「食塩」の不思議

 

春の七草

 

お椀に盛って・・・

 

正月7日は七草がゆをいただくのが習わしだ。同じことを毎年書くのも変なので控えているが、ほぼ例年食べている。そのまま食べたり、柚子(ゆず)を絞ったり、さらにはゆず2個分の果汁を入れ込んだ高果汁ぽんず「ゆずか」(キッコーマン)を落としたりしている。

七草がゆだけだとほとんど味気がないが、それに煎りゴマや食塩を加えることで味が引き立つのだ。現代人には薄味よりも濃厚な味に慣れている。味付けにはゆずかはぴったりだ。

毎年、大分県産だったが、今年は神奈川県産の「春の七草」だった。七草の名前はどうもよく覚えられない。セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。何とか出てきた。

神奈川新聞によると、横須賀市・三浦の農家4軒で「三浦七草会」を組織し、12ヘクタールの畑でセリやナズナなどを育て、2018~19シーズンは約140万戸の出荷を予定しているという。

パック詰めには主婦や学生のアルバイトを動員している。七草がゆなんていったい誰が食べるのかと不思議に思っていたが、スーパーの野菜売場には山積みしてあった。需要があるということだ。

七草がゆは古い中国の習慣が日本に伝わり、醍醐天皇の延喜11年(911)から正月7日に七草の若菜を調進(調達)することが公式化されたという。七草がゆを炊いて、無病息災を祈る習わしができた。あとはこれを持続するかどうかだが、1100年間続いている。立派なものである。

 

塩の結晶体(ウィキペディア)

 

 

今年はゆずかをかけなかった。その代わりにパラリと振ったのは塩だった。実はわれわれは塩と簡単に呼んでいるが、調べてみると、複雑怪奇である。主成分は塩化ナトリウム(NaCI)で、無色正六面体の結晶だ。

他はナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムだ。

伯方の塩」によると、世界的には岩塩や天日製塩などさまざまな製塩法があるが、日本では縄文・弥生時代から海水を凝縮し、釜を煮詰める直煮製塩を実施してきた。

その後、奈良時代には藻に海水を付着させる「藻塩焼」、室町中期には海水を浜に揚げて天日で乾燥させる「揚浜式」、江戸時代には潮の干満を利用して海水を浜に揚げる「入浜式」、1953~71年までは流下式枝条架併用式と技術を高めてきた。

室町時代に生まれた揚浜式は敷きつめた砂の上に海水を運搬し、天日で乾燥させる製法。塩田が初めて登場した。塩田に人力で大量の海水を運搬する。撒いた海水の水分が蒸発して潮が付着した砂を集めて海水の洗いを繰り返して濃い塩水を作って煮詰める。それでも海水の運搬は重労働だった。

江戸時代になって潮の干満を利用して海水を塩田に取り込む入浜式が取り入れられ、海水を運搬する必要がなくなった。主に地形に恵まれている瀬戸内海沿岸で発達し、江戸中期の元禄時代には播州・赤穂が日本の製塩の50%を生産する製塩産業の中心地となった。

1953年から71年にかけて主流となったのは流下式。立体的な枝条架とゆるい傾斜の流下盤を利用したもので、それまでの入浜式より数倍効率的なものだった。この塩田で採れた塩はにがりが塩全体の1~2%前後で、味もよく、食用にも適した塩だった。

1971年(昭和46年)4月には塩業近代化臨時措置法が施行される。民間企業が日本に海水から塩を製造してはならない、独自に海外から塩を輸入してはならないという内容で、日本専売公社(現日本たばこ産業)が設立され、国内需給確保を目的に、イオン交換膜製法による塩の独占販売を開始する。

1985年(昭和60年)に日本専売公社が民営化され、1997年に塩専売法も廃止され、2002年からは塩の販売も自由化され海外の塩が輸入できるようになったが、塩が自由に製造販売できるようになった今日でも、流通している塩がミネラルをほとんど含まない塩化ナトリウムの塊なのは、設備が揃っていて安く作れるイオン交換膜製法が主流のためである。

 

塩をぱらりとかけて

 

日本海水によると、塩と健康は切っても切れない関係にある。塩がなくては身体はあっという間にダウンしてしまう一方、塩分の取り過ぎも身体にはよくない。そのバランスが実に難しい。

われわれの食べるものは植物性食品か動物性食品に分類されるが、唯一塩だけがそのどちらにも属さない食品なのだという。

「これだけ科学の発達した現代でも、塩に代わるものを人工的に造り出す方法はありません。砂糖や酢の成分は、ほかのものでも補給することができます。しかし塩だけは、代用のきかない、地球上に唯一無二の食品なのです」。

また、「味覚的にも、人の塩に対する要求はひときわ強いことが知られている。塩は、栄養的にも味覚の上でも代わることのない、かけがえのない食品なのです」

塩は何とも厄介な食品である。しかも塩分の取り過ぎばかりが喧伝される中で、塩が不足すると栄養をきちんと吸収できなくなり、体内の機能が衰えることもはっきりしている。細胞を正常に保ったり、神経や筋肉の働きを調整したり、食欲や味覚の正常化も司っているのである。

「塩は脂肪やタンパク質と異なり、身体のエネルギーにはならないが、身体の中では塩素とナトリウムに別れ、血液やリンパ液に約0.9%の割合で溶け込んでいる。一定の濃さで血液に溶け込むことで、身体の水分の量を調整する役目を果たしている」(ナチュラルソルトドットコム)

「人間の身体にとって水はとても重要で、適当な水分量が保たれていることで、栄養をきちっと吸収することができる。その水分量を塩がコントールしている」(同)という。

塩にもいろんな成分がある。純粋な塩とは塩化ナトリウムの純度が高い。99.9%ならば、塩辛く、美味しいとはほど遠い。よって美味しい塩は塩化ナトリウム以外のミネラルバランスで味が変わってくる。「マイルドな塩」「苦みのある塩」「コクのある塩」などのように変わる。

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