5月31日までの「緊急事態宣言」延長で考えさせられた国民の命=スピード感欠く日本政府の新型コロナ対策

 

1カ月の延長を求めると話す安倍晋三首相(NHK)

 

■政府、緊急事態宣言を5月31日まで延長

 

政府は4日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を開き、6日で期限の切れる緊急事態宣言を47都道府県を対象に今月31日まで延長することを決めた。安倍晋三首相は会見で、専門家の分析次第では期限を待たずに解除する考えを示したが、解除するに当たって明確な科学的な指針を示さなかったことから、その出口戦略についてさまざまな声が上がっている。

神奈川県の黒岩祐治知事は記者団に「どうやって解除するのか。本当に31日で済むのか、済まないのか」。「すいません。もう1カ月我慢してくださいというのは簡単ではない」とコメントした。

首相は、東京都など13の「特定警戒都道府県」には外出自粛や休業の継続を求めた。要は国民に対し、これまでと変わらない厳しいものだ。

 

やっと届いたマスク

 

■布マスクは2枚届いたものの・・・

 

定年退職者にできるのは自粛対象外の散歩くらい。自宅で自粛するくらいで、事実上他は何もできない。もう1カ月以上電車に乗っていない。出掛けていない。人間は移動する動物だ。外に出歩けないというのは何と辛いことか。

政府から布マスクが届いた。4月30日だった。不評で回収したと聞いていたが、配布し直したようだ。一住所当たり2枚だが、それまでしていたマスクに比べるとあまりにも小さい。子供用だ。あまり大きすぎるのも問題だが、反対に小さすぎるのも使い勝手が悪い。

国民は勝手なことを言うものだが、マスクにはあきれた。国民1人1人ではなく、むしろ医療現場に集中的に配布すべきだ。大々的に発表した割には、配られた国民がそんなに喜んでいるとは思えない。政府のやることはどうも空回りしている感じだ。

普通のサラリーマンはテレワークやリモートワークでそれなりに大変だし、中小企業は事業継続に四苦八苦している。地方から都会に来ている大学生は家賃や生活費に困窮し始めている。居酒屋やレストラン経営者など小規模事業者も厳しい。

安穏としているのは公務員と年金生活者だけだが、仕事が一気に増えた公務員は辛いだろうが、厚労省以外の公務員は縦割り制度に守られ、のんきだろう。

年金生活者もいくら食べることが保障されても生活の張りがなくなって、これはこれで人に言われぬ辛さを味わっている。年金生活者=高齢者であり、いくつもの基礎疾患を抱えている。これほどヒタヒタと近寄ってくれば、「コロナにかかれば、助からない」と思っているからだ。「罹れば終わり」である。

 

■PCR検査目標 日本はドイツの14分の1

 

こんな恐怖をなぜ味遭わせたのか。安倍首相は「PCR検査を1日2万件実施できる体制を整えた」とかなり前から言っているが、「実際の検査件数は同8000~9000件にとどまる」(3日付日経)。米国は現在1日23万件のペースで実施している。これを5月中の目標として、4月中旬(1日15万件)の2倍の29万件を掲げている。

ドイツは現在7万件を20万件に、英国は3万件を10万件に、フランスは2万件を10万件に引き上げる。日本は8000~9000件を2万件に引き上げるが、人口比でドイツの検査目標は日本の14倍だ。英仏が9倍、米国は5倍だ。他国は経済再開と検査拡充をセットにして出口戦略を立てており、日本は大きく出遅れている。

日本政府は検体採取業務を歯科医師にも認めると決めたほか、ドライブスルー検査の実施を自治体に促す対策を講じた。ただ安倍首相も国会答弁で「目詰まりや地域差がある」と認めている。

検査拡充で感染実態が把握できなければ、緊急事態宣言の解除はおぼつかない。

 

「新しい生活様式」を求める専門家会議(NHK)

 

■練馬光が丘病院でクラスター感染、外来初診を中止

 

安倍首相は「現時点で感染者の減少は十分なレベルとは言えない。医療現場の逼迫した状況を改善するには1カ月程度の期間が必要だ」と説明した。

私の住んでいる練馬区では区内の総合病院である「練馬光が丘病院」(病床数342床)でクラスター感染が発生している。5月1日には新たに職員13人(医師1人、看護師9人、事務2人、給食スタッフ1人)と入院患者2人の計15人の感染を確認し、合計で52人となった。死者も5人となっている。

同病院は地域の中核病院で、急性期医療を担っているが、4月18日以降、外来診療と入院の新規受け入れを中止している。再診患者については電話での受付を再開したが、診療制限を続けているのは間違いなく、急性期医療(救急患者)の受け入れという病院本来の目的を停止している。コロナ感染者のために他の多くの患者を診察できない状況に追い込まれたわけだ。

区内にはほかに順天堂病院医学部附属練馬病院(練馬区高野台、400床)があるが、今のところクラスターは発生していない。そこでも来院時のマスク着用をお願いしたり、紹介状なくしての外来診察の受付を停止している。

■順天堂練馬病院も検査お断り

練馬光が丘病院のホームページには「当院はPCR検査実施対象医療機関ではありません」(4月13日付)とあった。順天堂練馬病院でも「練馬区保健所」に相談するよう要請している。これでは練馬区民は一体どこでPCR検査を受けられるのかと不安になった。

PCR検査の相談は「帰国者・接触者相談センター」か保健所だが、相談が殺到し、窓口はパンク状態。つながるまで2~3日待ち、その間に病態が悪化し、重篤化したケースも出ている。

保健所の対応不備を補う形で動き出したのが各地区の医師会。しかし、これも遅れている。練馬区医師会でも大きな赤字で「新型コロナウイルスのPCR検査による診断はできません」と警告している。

不安な方は「帰国者・接触者電話相談センター」へ相談してくださいとあるが、患者(親族)はセンターへの電話がつながらないからこそあらゆるところに電話をするのだ。センターに電話してもつながらない。

「体温が高温のまま2~3日待たされた」と訴える声がテレビで聞こえてくる。「胸の苦しみは実に辛い」ことを不整脈患者の私もよく分かっている。「苦しくで医者に診てもらいたい」と思っても、「しばらく待ってくれ」と言われたときの絶望感はどう表現してよいのか。

医師会は最初から「できない」と拒否することで”逃げ”を打っている。患者はどこへいけばいいのか。

■医師会、ようやく8日からPCRセンターを開設

練馬区HPは練馬区医師会は新型コロナウイルスPCR検査の体制拡充を図るため、「練馬区新型コロナウイルス検査検体採取センター」を5月8日(金)に開設する。当面は週に3日(1日2時間程度)を予定している。

地域のかかりつけ医が検査を必要と判断した場合、保健所介さずにドライブスルー方式により検体を採取する。徒歩や自転車での来所にも対応する。開設期間は6月30日(火)まで。設置場所は光が丘第七小学校跡施設(光が丘2丁目6番1号)。

開設時期は8日と2度目の緊急事態宣言が4日出てから4日たってからと遅いが、開設されないよりいいのかもしれない。韓国がさっさとやって成果が上がったことを受けて4月半ばから始まった。ことほどさように政府のやることは遅い。

■日本政府は国民の命を助けない!

米国は米国民が1人敵国にとらわれた場合、米軍の戦艦を投入してでも救助・救難に向かうということを繰り返し聞いたことがある。それほど国民の命は大切なものだ。比べて、日本では命は虫けらである。人が殺すのではない。硬直的な行政システムが人を殺すのだ。

日経新聞は5日付紙面の一面に青木慎一科学技術部長の署名記事を載せ、「スピード感に欠く対応は霞が関の縦割り行政に問題がある。感染症対策は厚労省がほぼ一手に担い、他省庁は関与しない」とこの国の現状を一刀両断した。

「強い権限をもった行政システムが20世紀の日本の成長を支えたが、その成功体験が21世紀モデルへの転換を阻んだ。オンラインによる診療や教育に出遅れたのも、20世紀型の行政から抜けきれなかったからだ。その足元を新型ウイルスに突かれた」と書いている。

■”カラ便”を飛ばす羽田増便対策

コロナ対策と航空対策とは別だろうが、気になるので言っておきたい。国交省は羽田増便対策として新ルートの運用が3月29日から正式に始まった。国際空港としての羽田の存在感を高めるためだが、皮肉なことに新型コロナの感染拡大が増便にブレーキをかけている。

しかし国交省は縦割り的に大幅減便にもかかわらず、通常の飛行任務を止めない。ほとんど乗客の乗っていない飛行機を飛ばしている。今が戦時であることを全く考えないまま空便を運航している。これが日本の役所のやり方だ。自分のところは無関係といわんばかりだ。

騒音への懸念も解消されたとは言えない。東京都庁(新宿区)付近で上空1000㍍、JR恵比寿駅(渋谷区)付近で700㍍を飛び、「パチンコ店内程度」とされる80デシベルに近い音が想定される地点もある。

同省は騒音軽減策として、都心上空から着陸する場合には航空機の降下角度を一般的な3度から3.45度に引き上げ、より高い位置を飛ばす方針をとった。これにより0.1~1.1デシベルの騒音軽減効果を確認したという。

新型コロナが収束したからと言ってすぐに訪日客が急増するわけではない。国交省は実効性のない羽田増便対策をあきらめるべきだと考えるが、「いずれ戻る」とみている。それは1年後を想定しているのか2年後なのか。

今は初夏である。窓を開けて外の空気を入れている。少しの音でも気になりだしたら我慢できない。午後3時になると、そろそろ空から騒音が降ってきそうである。南風時の運用と限定的だが、春から秋にかけては7割近い。

訪日客はもうそんなに期待できないのなら、新航路の運用も止めたらどうか。それが国交省の仕事だと思うが、いちど決めたことは”戦時に”なっても止められない。これが日本の現状だ。

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