今が旬の「長崎ビワ」を賞味する=糖度はさほど高くなくあっさり食感がむしろたまらない

 

いかにも美味しそうな長崎びわ

 

■日本一のびわ産地は長崎県

 

ひとくちに「びわ」と言っても、種類はさまざまだが、生産量で日本一なのは長崎県がここのところずっと占めている。この長崎びわ(JA全農ながさき)をスーパーの果実売り場で見つけ、買ってきた。

イチゴやオレンジ、バナナ、キウイなどに比べても、価格は圧倒的に高い。

高いからうまいのかと思いきや、びわよりも圧倒的に安く味ももっと強烈なバナナにはとても追いつけない。小玉8個入りで478円。1個60円ほどだ。この値段ではなかなか人の口には上らない。メーンの商品棚には並ばない。後ろの奥の高級品の一角だ。

バナナやイチゴ、キウイなどに比べても味は淡泊である。あっさりして食べやすいが、小ぶりなのに種が大きすぎて果肉が少ない。1個食べても満腹感にはほど遠く、つい2個3個と手が出てしまう。もっと大玉の出現でこれを克服しようと懸命だが、成功しているのかどうか。

ちょうど旬だから買った。2度買うかどうかは分からない。多分買わないだろう。ビワは昔、よくあちこちの庭先で見掛ける果実だったように思える。自分の家にもあって、この季節になるともいで口にしていた記憶がかすかにある。それが今や今や高級果実として扱われている。

何となく、和のイメージが強く、若い人たちには今ひとつ食いつきもよくなさそう。半面、季節感が非常に強く、色合いも良く、30代後半を過ぎた方たちには十分受けそうな気もしている。洋食のデザートや洋菓子でも取り入れたい食材だと思う。

 

2019年産びわの都道府県別収穫量(農林水産統計より)

 

 

■長崎市茂木町には今も原木が残っている

 

長崎は江戸時代に唯一海外に開かれていた街。出島である。出島を通じて世界各地からさまざまなものが持ち込まれ、出島を通して長崎から全国各地に流通していったのはよく知られている。

ある時、代官屋敷で働いていた三浦シオという女性が、唐(現在の中国)から持ち込まれたびわの種をもらった。三浦シオは茂木の自宅の庭に種を播き、大切に育てた。そのビワが現在の「茂木びわ」となっていく。

茂木種の栽培面積は全国シェアの54%で、長崎びわの主流となっている。長崎早生は早生品種の代表格で、果肉は柔らかくジューシーで、上品な甘さが口の中に広がる。福原早生の果実は大きく、ボリューム感とトップクラス。店頭では「長崎甘香」の名称で呼ばれている。

果肉が柔らかく食味に優れ、長崎びわの新たなエースとなったのが新品種が「なつたより」。長崎県農林技術開発センターで長崎早生と福原早生を組み合わせ育成され、2009年(平成21年)に品種徳録された新種だ。

なつたよりは果実が茂木種と比べ大きいほか、糖度も高く食味も良好で、成熟も茂木種より速く、5月中旬~下旬ごろに出荷される。

 

最寄り駅までの家の側に植わっているビワの木にはたくさんの実がなっていた

 

■山地は全国各地に

 

農水水産統計によると、2019年産びわの収穫量は3430トンで前年産に比べ640トン増加した。自家消費などを差し引いた出荷量は2820トンで、同520トン増えた。

栽培面積は2010年の1630ヘクタールから19年には1110ヘクタールに減少した。高齢化による労力不足による廃園が影響したものだ。その割に増産となったのは好天のたまで、悪天候で作柄が悪かった前年産を上回った。

ビワは長崎県が33%とトップのほか、千葉県16%、鹿児島県7%、香川県’7%、愛媛県6%と並んでいる。ほかにも静岡県伊豆市土肥地区の特産物「白ビワ」や房州の田中ビワなど特産品が多い。

 

ふるいつきたくなるようなジューシーさはたまらない

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