ブロックチェーン技術を使って食の「デジタルプラットフォーム」を構築=日本IBM
日本IBMブロックチェーン事業部長の高田充康氏は第22回ジャパン・インターナショナル・シーフードショーのセミナーで、「持続可能な食品産業を支えるデジタルプラットフォーム」と題して話した。
・トレーサビリティーを図るためにはデータが必要。このデータをためる部分をIBMが提供させてもらっている。昔は旅行に行ったとき現地から絵はがきを送っていたが、インターネットの普及で今や写真付きメールが主流。コミュニケーションのスピードが非常に速くなった。
・snsの時代はリアルタイムが当たり前の時代になっている。ビジネスに置き換えると、自分のサプライチェーンの前後くらいがつながっている程度で、その先は見えない。普段われわれが当たり前と思っていることがビジネスの中では当たり前になっていないのが現状ではないか。他業界でも起こっており、これがコロナ禍の中で明らかになった。
・まずウォールマートとトレーサビリティーの実験を開始した。きっかけはブロックチェーン技術。チームスポーツ。参加者の多いサプライチェーンの中で情報共有が難しかったが、このブロックチェーン技術を使うとトレーサビリティーを改ざんされない形で瞬時に共通できるのではないかという機運がでてきた。
・それに一番早く目を付けたのがウォルマートだった。何か問題が起こったときに発生源を突き止めるのに数日間かかっていたのが数秒でできることが分かった。使えるんじゃないか。食の業界と一緒に2017年にコンソーシアムを立ち上げてプラットフォームを作り始めた。
・2018年ごろからウォルマートが「フードトラスト」という食のプラットフォームを立ち上げ、現在商用化されている。今回の「Ocean to Table Council」もこれをベースにしている。
・米ウォルマートは「リコール対応」(食の安全)ということで始めたが、仏カルフールは他の使い方をしてブランド価値を上げている。
・従来型の技術でデータを集めてやるのは技術的には可能。ウォルマートが集中しているところには個別企業は具体的なデータを入れずらい。業界共通でクロスボーダーのデータが使われることで抵抗感がなくなる。
・コーヒーの持続可能性に注視して取り組んでいるところもある。フェアトレードがきちんと行われているか。寄付プロジェクトも作ろうとしている。
・消費者とコミュニケーションするツールとして使っている。
■客とコミュニケーションするツールとして活用
・ノルウェーは水産王国だが、ノルウェーサーモンと名乗る偽物が横行しているのが現実で課題も抱えている。魚の由来や養殖のノウハウ、管理方法を追跡・証明する術を持たない。結果、不正や食品ロスが生まれる。
・IBMはIBM Food Trustのブロックチェーン技術を応用したIBM Blockchain Transparent Supply Platformでトレーサビリティー・プラットフォームを構築。Iotデータと連携し、消費者にサーモンの生育環境、輸送、保存状態等をQRコードで瞬時に提供し解決を図った。
・これにより、偽物を排除し、ノルウェーブランドの品質の高さを消費者に直接伝えることが可能になったほか、ブランド価値の証明で販売価格の向上、販路の拡大にもつながった。水産業界全体で品質向上のノウハウを蓄積している。
ノルウェーから来る物にはQRコードが必ず付いていてそれをスキャンすれば履歴も見られる。こういう世界が来るんではないか。
・世界的にフードトラストという仕組みを使って単に追跡するだけではなく、サプライチェーンを高度化したり、ブランドの価値を上げたり、輸出品の価値を上げたりする。客とコミュニケーションするツールとしてプラットフォームを導入する。日本の水産業に貢献できれば幸いだ。