トレーサビリティで「海」と「消費者」を一本化しサステナブルな水産業を実現=セミナー

 

シーフードレガシーの村上春二副社長

シーフードレガシー、日本アイ・ビー・エム、海光物産など7社は9月30日、ジャパン・インターナショナル・シーフードショーと同時開催で、私たちの挑戦「由緒正しいさかなを食べて海の豊かさを守り次世代へ繋ぐ」のテーマでセミナーを開いた。

まずシーフードレガシーの村上春二副社長がトレーサビリティー(追跡可能性)の世界の動向について話した。シーフードレガシーはサステナブル(持続可能な)・シーフードに特化した専門のコンサルティング会社。設立5年後の会社だが、漁業現場のサステナビリティーの向上を目指して漁業改善プロジェクトの推進や認証取得に対するコンサルティング、なんでサステナビリティー(持続可能性)が大事なのかを水産会社のブランディングやマーケテイングの側面も提供している。

 

リスク管理をビジネス機会に

 

■リスクの観点からなぜトレーサビリティーが必要か

 

・トレーサビリティーが国際的に重要視され、浸透している背景としてはリスクとチャンスの両面があると考える。リスクとしてはIUU漁業が考えられる。IUUとはIllegal(違法),Unreported(無報告),Unregulated(無規制)で行われる業業のこと。

・自分たちがこの魚だと思って食べた魚が違う魚だったことが世界には多々ある。偽装表示に相当する。北米市場における調査対象企業が取り扱う水産物1500サンプルのうち約20%が偽装表示との結果が出た(NGO調査)。

・大規模小売りよりも小規模小売りやレストランでのケースが多く、スズキ(55%)、スナッパー(42%)、ヒラメ(26%)など白身魚が多い。

・強制労働/人権侵害はIUU漁業と密接に関係しており、この観点からもトレーサビリティーが必要だとみられている。

・チャンスの意味合いでは安心安全面で消費者の変化が肌で感じられる。

・IUU漁業は世界の総漁獲量の13~31%と推計されている。甚大な資源に対する影響を及ぼしている。きちんと資源に加味されると25~36%データ的に増加する。2.6兆円~5兆円の経済ロスにつながる。国ごとでは最大4000億円の経済ロス。

・日本でもスルメイカの推定が出された。年間240億円~460億円の経済ロス(イカ産業の15~29%)があるのではないか。正しいことを頑張っている魚業者を救うために「IUU由来」の魚を入れないことが生産現場を持続可能にしていくことにつながっていく。排除すれば短期的には魚価の向上の可能性が高いが、長期的には資源安定・安価で取引できる。

・様々なドキュメンタリー映画やリポートが報告されている。Blood and Water ,Ghost Fleet。

 

消費者の変化

 

■知ることが重要な価値に

 

・消費購買ツールがデジタル化し、「買う」という行為が非常に簡単になってきている。電子マネー、sns、ネット通販など。

・この商品を買うことで何に対して良い影響が及んでいるのか可視化されていない。伝わるストーリーに親和性がないからなかなか頭に入ってこない。

・これまでは衛生、品質、価格が一番の消費行動の基準だったが、デジタルの普及に伴い知らないことが効かなくなった。誰でも何かを知ることができる時代である。それだけに知ることが非常に重要な価値観になってきている。新しい安全安心の価値観の中に環境への影響は起きていないのか、IUU漁業に由来していなのかなどの観点もトレーサビリティーが伝えていくべき要素だ。

 

トレーサビリティーにもいろんなプラットフォームが存在する

 

■プラットフォームが重要

 

・どういう社会的活動を行えるかを情報共有するプラットフォームのRISEやプラットフォームにはどういうデータを含むべきかを議論するものなどそれぞれのプラットフォームには目的が存在する。

・水産関連企業はプラットフォームに積極的に参加し、企業責任を果たしながらビジネスへと転換する基盤として活用していく。

・米国、カナダ、メキシコでは小売り、ホスピタリティー、ケータリング会社が水産物に関する社会的課題に取り組んでいる。

・大手小売り企業がトレーサビリティーに関する行動が一番高いとの報告がある。

 

70年ぶりの漁業法改正

 

■トレーサビリティーで海と消費者をつなぐ

 

・IUU、偽装表示、強制労働/人権侵害といったところからは買わない。そうじゃないものを提供していることを証明するためにトレーサビリティー、すなわちリスク管理を徹底して安心安全の基礎を構築していくことが重要になってくる。

・魚がいないとビジネスが成り立たない水産業においては自然資本をいかに協働的に守っていきながら、競争の分野で成長していくのかという取り組みが大事だ。

・水産業だけでなく、異業種とパートナーを組むことにより画期的で戦略的な水産業の未来が描けるのではないか。

・民間の消費者と海が「トレーサビリティー」で一本化されることで、ちゃんと頑張っている水産業者から来ていると伝える手段となっていることが重要と考えている。

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