日本ではなぜ「医療ひっ迫」が1年間も続くのか=民間病院は経営への影響を懸念

 

FNNプライムオンライン(2月22日)

 

■感染者数がリバウンドする可能性

 

22日夜、報道ステーションを見ていて、「都が都立公園を閉める」ことを知ってちょっとびっくりした。新型コロナウイルスの新規感染者数も下げ止まりの傾向を示していたからだ。大阪、京都、兵庫はむしろ非常事態宣言終結の前倒し解除を申し入れる意向なのに。

東京都の小池知事の発言はこの期待を裏切るものだった。規模の大きい57の都立公園の駐車場を閉鎖するとともに野球場やテニスコートなどの運動施設も閉鎖するという。

22日は1日の178人と約3カ月ぶりに100人台だったが、都知事は「残念ながら、まだ東京、1都3県、首都圏については、厳しい状況が続いていることに変わりない」と言明した。

専門家からはむしろ下げ止まりで、「感染者数がリバウンドする可能性がある」との警告が出されたという。医療の観点から助言すれば、そうかもしれない。政治家の知事はまた別の判断があると思った。

都知事は「リバウンドする可能性があるということ。変異株についても、クラスター化すると一気に増えるとの警告(もある)。ワクチン情報は、ずいぶん出ていて、大丈夫という意識が広がってしまうおそれ(がある)」などと述べた。

今ここで急いで解除してもそんなに効果はないかもしれない。むしろ今こそ踏みとどまるべきだと思ったのかもしれない。

 

「医療逼迫は民間病院のせいか」と指摘する朝日新聞医療サイト「アピタル」

 

■「重症者はすぐには良くならない」「コロナ病床増設が難しい」

 

新型コロナが感染拡大し始めてから1年間ずっと医療逼迫が問題になっている。それもここへきて新規感染者が減りつつあるのに医療逼迫は解消されない。これはずっと気になっていた。なぜか。

nippon.comの齊藤勝久氏の記事によると、聖マリアンヌ医科大学感染症学講座の國島広之教授の解説として「重症者はすぐには良くならない」点と「コロナ病床の増設が難しい」ことの2点を挙げている。

國島教授によると、「コロナ患者はそれぞれ症状が千差万別で、軽症者と重症者では医療が全く異なる。重症者は入院すると1カ月以上にわたる医療が必要なほか、ICU(集中治療室)などでかなりの医療スタッフが必要になる。このため新規発症者が減少に転じても、当分の間、コロナ患者の病床は満床状態が解消されず、逼迫した状態が改善されない」という。

長期入院していた患者はリハビリが必要なケースが多いが、元患者を受け入れる病院・施設は多くないともいう。回復した患者が入院先に留まっていることもあり、入退院の流れが停滞している点も指摘している。

コロナ対応病床は看護・介護度が高く、通常病棟よりも多くの看護師を要する。コロナ病床を増やせば、非コロナ病床は減少する。しかし、急患に対応する急性期病院ではコロナ以外で搬送されてくる患者も多く、現状をあまり動かせない。

コロナ病床の負担も大きい。コロナ病床を設けるには病院の感染防止、病院の区分け(ゾーニング)を行い、飛沫対策などのため空調工事も必要。通常の病院では医師やスタッフへのトレーニングが必要で、時間がかかる。

日本の病院は8割が民間病院で、東京では約9割を占めるとも言われる。大半の病院は規模が小さく、コロナ病床数を増やしたくても経営上のリスクを考え、資金、人材、設備などから応じられない民間病院がほとんどだと言われる。

 

コロナ病床が欧米の10分の1以下だと報じる記事(2月23日付日経朝刊)

 

■コロナ病床、英米の1割

 

23日付の日経が「国内で新型コロナウイルスの患者を受け入れる病床の割合が欧米の10分の1以下にとどまることが分かった」と報じている。

全病床に占めるコロナ病床の割合は1月下旬時点で0.87%と、英国の22.5%や米国の11.2%に比べ桁違いに少ない。平時から医療機関の連携が密な海外と違い、日本は病院間の役割分担が不明確で柔軟に病床を確保出来ない実態が浮かび上がると指摘している。

英国は人口比の感染者数は約6%と日本より多いが、全病床の2割超をコロナ対応に使う。米国は地域ごとなどに400以上あるとみられる非営利組織「医療事業体」に多くの医療機関が属する.患者情報を共有し、入院や転院を受け渡す土台にもなる。

日本は全国に約8000の病院が散らばり、個々にコロナ対応を判断する。人手や設備が手厚い85の「特定機能病院」でも1月初旬時点で重症患者が5人未満の病院が62もあった。公立病院の多くがコロナ患者を受け入れているのに対し、民間の受け入れは3割弱にとどまる実態もある。民間が懸念しているのは経営への影響だ。

東京新聞1月14日付朝刊によると、20床以上の病床がある病院は8247施設。全国の病院の稼働状況を一元管理する厚労省の情報システムに登録している7403施設(20年11月末時点)のうち、コロナ患者を受け入れ可能としたのは1872施設で、全体の25%。一般病床や感染症病床は計約89万床あるが、コロナ対応は2万7600床と3%にとどまる。

1日で万単位の感染者が出る米国と比べると日本は100分の1の百単位。それにもかかわらず、「医療崩壊の可能性がある」と危機感を”強要”されている。こういう情勢では「はい、分かりました」とは言いたくても言えないのだ。

感染症法が改正され、ようやく都道府県知事が病院にコロナ対応の協力を「勧告」できるようになった。従わない場合は病院名を公表できるが、強権的になるだけに運用は透明性が求められる。

 

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.