【試写会】「娘は私が取り返す」と誓った母親の想像を絶する愛と執念の物語「母の聖戦」=メキシコの実話をベースに『誘拐ビジネス』の闇に迫る

娘は私が取り返すー母の聖戦

 

テーマ:試写会『母の聖戦』(原題:La Civil=市民)
監督:テオドラ・アナ・ミハイ
キャスト シエロ:アルセリア・ラミレス
グスタボ:アルバロ・ゲレロ
ラウラ:デニッセ・アスピルクエタ
2021年/ベルギー・ルーマニア・メキシコ合作/135分/スペイン語
2022年11月30日@日本記者クラブ
2023年1月20日以降、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開へ

 

■メキシコの実話を基に「誘拐ビジネス」の闇に迫る

 

「メキシコ北部の町で暮らすシングルマザーのシエロ。一人娘である10代のラウラが犯罪組織に誘拐された。冷酷な脅迫者の要求に従い、20万ペソの身代金を支払っても、ラウラは帰ってこない。警察に相談しても相手にしてもらえないシエロは、自力で娘を取り戻すことを胸に誓い、犯罪組織の調査に乗り出す」(イントロダクション)

「そのさなか、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結び、組織に関する情報を提供したシエロは、誘拐ビジネスの闇の血なまぐさい実態を目の当たりにしていく。人生観が一変するほどのおぞましい経験に打ち震えながらも、行方知れずの最愛の娘を探し続けるシエロは、いかなる真実をたぐり寄せるのか・・・」(同)

作品はメキシコの実話をベースに、巨大化された「誘拐ビジネス」の闇に迫ったルーマニア生まれでベルギーを拠点に活動するテオドラ・アナ・ミハイ監督の劇映画デビュー作。犯罪組織に誘拐された娘を取り戻すために、命がけの闘争に身を投じた女性の実話をベースに、ごく平凡なシングルマザーの主人公がたどる想像を絶する運命を映し出す。

社会派ドラマであると同時に優れたクライム・スリラーでもある作品はシエロの視点でストーリーが展開され、観る者を誘拐ビジセスの闇の奥深くへと誘い、理不尽な暴力現場を体験させる緊迫感あふれるドキュメンタリー的な要素を持った作品でもある。

と同時に娘を連れ戻すといった凄まじい執念の源である「母性愛」こそがミハイ監督が追求したもう1つの重要なテーマである。

 

■メキシコでは推定年間6万件の誘拐事件が頻発

 

メキシコでは2020年に826件の誘拐事件が報告されている。ただし治安当局への届け出を前提とするこの件数は「うのみにできない」と映画パンフレットのイントロダクションは指摘する。

同国の国立統計地理情報院によると、「届出率はわずか1.4%。実際には年間約6万件にも及ぶ誘拐事件が頻発していると推定され、多くの庶民が組織の報復を恐れて泣き寝入りを強いられている」という。

警察庁によると、日本でも行方不明者の人数は毎年約8万件と過去10年間ほぼ横ばいで推移している。人口10万人当たりで行方不明者の割合が多いのは20歳代と10歳代だが、近年は「認知症」が原因で高齢者の行方不明者が増えているのが特徴だ。

2020年11月時点の情報では2018年に9歳以下が1年に約1200人も行方不明になっている。1日に約3~4人行方不明者が出ている勘定だ。

 

■日本では毎日3~4人、アメリカでは2000人も

 

公務員の情報サイト「公務員総研」によると、子どもがいなくなる原因では家族関係のトラブルが多く、具体的には家出や置き去り、離婚した親や親族間の連れ去り、外出先ではぐれてしまうことなどが挙げられる。

2018年の13歳未満の子どもが「誘拐」の被害者件数は110件だった。これを多いと考えるか、少ないと考えるか。アメリカでは1日当たり2000人の子どもが行方不明になっているという統計もあるという。

フロリダ州マイアミに拠点を置くオンライン新聞「Infobae」(4月16日付)によると、メキシコでは2022年4月時点で「平均して毎日7人の女性が姿を消している」という。年初から4月14日までに748人の女性が行方不明と報告されている。このうち10歳から19歳が320人を占めている。

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