【太陽電池】2025年の実用化目指ししのぎ削る「ペロブスカイト太陽電池」開発最前線=JR西日本「うめきた(大阪)地下駅」に設置

「ゆりかもめ」から

 

第17回再生可能エネルギー世界展示会&フォーラム(主催・再生可能エネルギー協議会)が2月1日、東京ビッグサイト(江東区有明)で始まった。会期は3日まで。

初日に行われた主催者セミナー「ペロブスカイト太陽電池最前線」を聞いた。太陽光はかつて日本のお家芸とも言われたが、現在は中国勢が席巻している状態。日本勢は現在、巻き返しを図っている分野でもあり、ペロブスカイト太陽電池には関係者の関心も高かった。

 

■50年には再エネの割合は36~38%に

 

「太陽光発電に係わるグリーンイノベーション基金事業の概要」と題して最初に講演したのは経済産業省傘下の国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)新エネルギー部太陽光グルーム主任研究員の山崎光治氏。

太陽光発電は2012年7月に始まった固定価格買取制度(FIT)を受け、導入が加速した。その後も太陽電池モジュールの価格低下や価格競争力を持つ海外企業のシェア拡大などを背景に、環境は大きく変化した。

2022年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」の下では2050年度の電源構成は再生エネルギーが36~38%、原子力は20~22%、LNGは20%、石油2%、水素・アンモニア1%となっている。

再エネで最も多いのは太陽光の14~16%、次いで水力11%、風力とバイオマスが各5%、地熱は1%を見込んでいる。

地方では大規模な開発が難しくなっている現状があると指摘。対象も建物の屋根だけでなく、ビルの壁面や工場倉庫屋根、移動体などより新しい領域への設置が求められているという。

NEDOではペロブスカイト太陽電池だけでなく、次世代型太陽電池の開発も進めている。日本として競争力を持っていくかが重要であると指摘している。

 

■総額2兆円の「グリーンイノベーション基金」で企業を後押し

 

菅義偉元首相が温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標(2050年カーボンニュートラル)を表明したのが2020年10月。脱炭素の実現には官民で50年までに約340兆円、1年当たり約11兆円が必要になるとの試算もあり、壁は高い。

この宣言を踏まえ、経済と環境の好循環につなげるための日本の新たな成長戦略として「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定され、企業の挑戦を後押しする2兆円の「グリーンイノベーション基金」がNEDOに創設された。

カーボンニュートラルとは様々な経済/社会活動を行う中で排出される温室効果ガスを「実質ゼロ」にすること、言い換えれば、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロ」にすることを意味する。世界140カ国以上が取り組みを表明している。

これまでの環境対策は、取り組む企業や団体にとって「コスト」となり、成長の制約につながると思われていたが、「2050年カーボンニュートラル」はコストではなく「成長の機会」と捉え積極的な対策を行うことがさらなる成長につながると発想を転換したのだ。

グリーン成長戦略は今後成長が期待される14分野を示し、政策ツールを総動員して取り組むことにした。こうした取り組みにより2030年で年額約140兆円、2050年で同約290兆円の経済効果を見込んでいる。

このうちエネルギー関連では①洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)②水素・燃料・アンモニア産業③次世代熱エネルギー産業④原子力産業ーが含まれている。

国の取り組みの中で主要な役割を果たすのがNEDOに創設された総額2兆円の「グリーンイノベーション基金」。研究開発・実証から社会実装までを見据え、官民で野心的かつ具体的な目標を共有し、企業などの取り組みに対して10年間の継続的な支援を行う。

 

 

フイルム型ペロブスカイト太陽電池(出所:積水化学工業HPから)

 

■JR西日本「うめきた地下駅」にペロブスカイト太陽電池を世界初導入

 

西日本旅客鉄道(JR西日本)は2023年春に一部開業予定の「うめきた(大阪)地下駅」に、駅広場部分にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置する。一般共用施設への設置計画としては世界初の事例になる。環境に配慮した「eco ステーション」に向けた取り組みの一環だ。この日のセミナーでJR西日本鉄道本部イノベーション本部地球環境保護推進課長の千田誠氏が説明した。

開発した積水化学工業によると、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を用いた次世代太陽電池。軽量で柔軟という特徴を持ち、ビルの壁面や耐荷重の小さい屋根、あるいは車体などの曲面といった様々な場所に設置が可能だ。

また、塗布などによる連続生産が可能であること、レアメタルを必要としないことなど、既存のシリコン太陽電池の生産面での課題も解決が見込まれる。発電した電力は自家消費する。地上ビルが完成し全面開業する2025年春ごろに稼働する。

積水化学は、独自技術の「封止、成膜、材料、プロセス技術」によって、30cm幅のロール・ツー・ロール製造プロセスを構築し、屋外耐久性10年相当を確認した。同プロセスを用いて変換効率15.0%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に成功した。現在は実用化に向けて1m幅の製造プロセスの確立、耐久性や効率のさらなる向上を目指している。

 

JR西日本

JR西日本は、うめきた(大阪)地下駅を「JR西日本技術ビジョン」に挑戦する駅としている。イノベーションの実験場「JR WEST LABO」を開設し、最先端の技術を社会に発信し続ける考えだ。

 

 

 

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