【らん展】遺伝子組み換え技術で「青い胡蝶蘭」を作出したばかりなのに今回は「光る胡蝶蘭」の世界初公開された「東京ドーム」ではテイラー・スウィフトがコンサート
■100万輪の蘭が会場を染め上げる
東京ドームシティプリズムホール(東京都文京区)で開催されている「世界らん展2024ー花と緑の祭典ー」(2月7日~14日)に行ってきた。
15年前に送別会でもらった1本立ちの胡蝶蘭(ファレノプシス)を大切に育てているらん愛好者の1人としてらん展をのぞいたものだが、らん愛好者のあまりの多さに正直びっくりした。
昔は会場が東京ドーム自体だったらしいが、今はプリズムホールに変わっている。34回を迎える今回は1000種以上、100万輪のらんが会場を色鮮やかに染め上げていた。
主催は世界らん展実行委員会(読売新聞社、NHK、世界らん展組織委員会、東京ドーム)。読売グループが34年間にもわたって育ててきた展示会がこれだけの動員を誇る規模に育ち上がったことを示すもので流石と感じ入った。
漆喰の夜空に星のように球体の蘭が浮かぶ。この球体は直径1.6mで、胡蝶蘭で覆われ幻想的な展示を表現している。
真夜中の静寂の中に、蘭が幻想的に浮かび上がる様子は夜でも変わらぬ蘭の美しさを示している。
■デンドロビュームポリアンサム”タカコ”に日本大賞
今年、「世界らん展日本大賞2024」に輝いたのは神奈川県の紙谷多佳子さん(湘南蘭友会)のデンドロビュームポリアンサム”タカコ”。
審査委員長のジェイ・バルチャン氏は「この見事な蘭は、個体の美しさだけでなく、全体のバランスも素晴らしく選ばれました。1つ1つ隣り合う花は兄弟姉妹のように重なり、滝のような美しい姿です」と講評した。
みんなの趣味の園芸はまた、「圧倒的な株姿はもちろん、存在感あるリップ(唇弁)の黄色と淡いピンクのペタル(花弁)やセパル(がく片)のコントラスト、流れるように垂れ下がるバルブ(茎の下の棒状で膨らんでいるところ=栄養タンク)のテクスチャーも印象的で、見応えのある作品だ」としている。
今回の「日本大賞審査部門」の出品作は438点。大賞賞金は200万円。
■世界初公開「光るコチョウラン」
今回の世界らん展の目玉の1つが世界初公開となる「光るコチョウラン」。ブラックライトを当てると、花を含む植物全体が黄緑色の強い蛍光を発し、暗がりでも鮮やかに輝く。
海洋プランクトンの一種であるキリディウス・ポッペイの蛍光タンパク質の遺伝子を、遺伝子組み換え技術を使ってコチョウランに導入して作出した。
蛍光タンパク質の遺伝子はNECソリューションイノベータおよび奈良先端科学技術大学院大学が開発した。
青いコチョウランの作出に成功した千葉大学環境健康フィールド科学センターの三位正洋名誉教授、陳東波特任研究員のグループが遺伝子組み換え技術でコチョウランに導入して作出した。
■遺伝子組み換え技術で「青い」胡蝶蘭を作出
世界中から選りすぐりの蘭や花が集まるボタニカルマーケットを歩いていたら、化学メーカーの石原産業(大阪市)のブースで青い胡蝶蘭「ブルジーン」(Blue Gene)と出会った。
「青い」花色を作出するのは至難の技といわれているのが植物の世界。バラやキク、カーネーションにも「青い」花色は存在しないと言われ、その作出は古くから園芸家たちの垂涎の的であり、研究の対象だった。
それが遺伝子組み換え技術を利用して作出に成功。石原産業は2022年の本らん展に出展した。石原産業中央研究所生物科学研究室の湯木俊次さんが青い胡蝶蘭を作出しようと思ったかについてインタビューに答えている。
湯木氏は「2005年にこれまでになかった青い胡蝶蘭を作りたいとの思いから始めた。それから15年にわたり、研究開発を重ね、最新のバイオ技術と情熱の結晶としてついに夢を実現した。遺伝子組み換えによるものは初めてではないか」と述べている。
「胡蝶蘭はもともと青色色素をつくる遺伝子を持たない植物。当社の中央研究所のある滋賀県草津市では古くからツユクサの一種である『アオバナ』が栽培されており、市の花にもなっている。このツユクサの青色遺伝子を遺伝子組み換えによって胡蝶蘭に導入し成功した」という。
会場でパンフレットを配布していたスタッフは「自分は専門家ではないが、会社の机の上で普通に育てている。何も特別のこともしていませんよ」と言っていた。
■すぐそばでスウィフトが歌っている!
あまりの蘭の多さにすっかり染まってしまった。アフター5チケット(1500円)を買って会場を1時間半ほど観賞して外に出ると、周辺がどうも騒がしい。蘭展の関係かなと思っていたら違った。
世界的人気歌手テイラー・スウィフトさんの東京ドーム公演が7日から4日連続で行われていたのだ。テイラー・スウィフトって誰?彼女を知らないのはあまりにも時代遅れで、2023年の全米ツアーは巨額の経済効果をもたらし、同国の国内総生産(GDP)の押し上げ要因にもなったという。
これは米国の話でもあるが、日経が2月8日付朝刊で大々的に報じている。大騒ぎである。投資利益に税金がかからない新NISA(少額投資非課税制度)の宣伝を紙面を挙げて行っている日経がきらいで購読を止めたいと常に考えているが、日経に代わる新聞がなかなか見つからない。
好き嫌いにかかわらずテイラー・スウィフトさんが2023年の全米ツアーで、間接支出も含めると計100億ドル(約1.5兆円)の経済効果があったとも指摘している。
米国はやはりおかしい。日本は本当にこの国を目指すのだろうか。デジタルの時代は何でも針小棒大にしてしまう。巨額の緩和マネーが世界を漂流しているだけだ。
それを日本に当てはめて、さも大変そうに大報道するのは品がない。そう思いながらも、同時瞬間的にすぐそばにVIPな人間がいることに圧倒されているのも事実である。人間は実に厄介な存在である。
(2009.11.7 NBCサタデーナイトライヴにホスト役として登場)
音楽配信サービスのスポティファイでテイラーさんの曲が再生された回数は261億回に上った。2023年の最多歌手だ。
米音楽界最高の名誉とされるグラミー賞を今年も2つ獲得し、受賞回数は計14回となった。午後6時30分すぎ。こんな世界的歌手が東京ドームでいままさに歌っている。その余波が外にも伝わってきて、歌声が周辺にも響いてくる。
テイラー・スウィフトさんの名前もよく知らない75歳のおじさんが彼女が歌っている東京ドームのそばをとぼとぼ歩いていたなんて誰も知らない。知る必要もない。すごい落差である。格差である。もうびっくらポンである。