北朝鮮の脅威、「フルスペクトラムで捉える必要」が重要

 

会見する阪田神田外語大学教授

 

ゲスト:阪田恭代(さかた・やすよ)神田外語大学教授
テーマ:北朝鮮の核・ミサイル危機と日米韓協力
研究会:2017年9月25日@日本記者クラブ

 

神田外語大学の阪田恭代教授が北朝鮮の核・ミサイル開発状況について整理し、日米韓協力の在り方について話した。地域および国際政治の視点と安全保障の視点の2つの視点から話した。

戦後最も厳しい局面に直面している北朝鮮については「久々のクライシス」だとの認識を示し、この脅威に最もさらされている日米韓3カ国の協力関係について考えた。

危機が高まれば高まるほど米国任せ、米中任せの比率が高まっている。米中の協力を得ながら、日本、韓国がどのように主体的に動いていくのかが問われているとの認識を示した。

日本の北朝鮮問題に対する基本的な姿勢は「国家安全保障戦略」(2013年12月17日、閣議決定)に書かれている。その中でも北朝鮮については「北朝鮮の軍事力の増強と挑発行為」として明文化されている。ここに問題のすべてが網羅的に定義している。

・朝鮮半島においては、韓国と北朝鮮双方の大規模な軍事力が対峙している。北朝鮮は、現在も深刻な経済困難に直面しており、人権状況も全く改善しない一方で、軍事面に資源を重点的に配分している。

・また、北朝鮮は、核兵器を始めとする大量破壊兵器や弾道ミサイルの能力を増強するとともに、朝鮮半島における軍事的な挑発行為や我が国に対するものも含め様々な挑発的言動を繰り返し、地域の緊張を高めている。

・特に北朝鮮による米国本土を射程に含む弾道ミサイルの開発や、核兵器の小型化及び弾道ミサイルへの搭載の試みは、我が国を含む地域の安全保障に対する脅威を質的に深刻化させるものである。また、大量破壊兵器等の不拡散の観点からも、国際社会全体にとって深刻な課題となっている。

・さらに、金正恩国防委員会第1委員長を中心とする体制確立が進められる中で、北朝鮮内の情勢も引き続き注視していく必要がある。

・加えて、北朝鮮による拉致問題は我が国の主権と国民の生命・安全に関わる重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の課題である。また、基本的人権の侵害という国際社会の普遍的問題である。

北朝鮮の問題は複合的かつ網羅的な問題であり、その中でも突出しているのが核とミサイルの問題だ。今年の防衛白書においても、「核兵器についても、小型化・弾頭化の実現に至っている可能性が考えられ、、(中略)、、わが国が射程内に入る核弾頭搭載弾道ミサイルが配備されるリスクが増大していくもの、、、。」とし、「核とミサイル」から「核ミサイル」を保有したとして「新たな段階の脅威」と捉えた。

北朝鮮は「核保有」から「核武装」へと進展し、脅威が新たな段階に至ったと認識している。核武装を完成したら、あとは「使用する」「使用しない」の段階だ。われわれはこの段階にどう対処すべきか。

メディアの報道についても、北朝鮮の脅威に対処するためには圧力、対話・交渉、軍事攻撃などフルスペクトラム(全範囲領域の、full-spectrum)でるということ、AかBではなくてAとBがダメだったらAとBCといったような包括的に考えた上で、今どの部分かを考えないと必要以上にパニックを起こすことになる。軍事攻撃を掲げながらも対話はどうか、圧力はどうか。バランス良く伝えていくことが重要であると強調した。

 

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.