【街歩き】上野・御徒町エリアでは有名な「吉池食堂」でランチ会合し、週末は牛久まで足を伸ばした秋の日
■41.8度と最も暑い夏
今年の夏はぐったりするほど暑かった。酷暑と言えば相応しいのだろうが、暑さは自分で実際に実感してみないと分からない。
気象庁が9月1日発表したところによると、今年の夏(6~8月)の全国の平均気温は平年より2.36度高く、統計のある1898年以降で最も高かった。
これまで最高だった2024年と23年のプラス1.76度を大幅に超えた。気象庁の担当者は「130年近い統計データのなかで断トツだ」と述べ、異常気象を認めた。
日本の上空では今年の夏は偏西風が北寄りに流れ、列島は南からの暖かい空気に覆われた。加えて大陸からのチベット高気圧と海からの太平洋高気圧がいずれも勢力を強め、晴れて気温が上がった。
とにかく最高気温が40度を超えた。それも全国25地点である。群馬県伊勢崎市で41.8度(8月5日)、静岡市41.4度、埼玉県鳩山町41.4度、群馬県桐生市41.2度、兵庫県丹波市41.2度を記録している。
■欧州襲う熱波、パリでも45度
こうした地球温暖化による熱波は日本だけに起こっているわけではない。地球規模で発生している。
ポルトガルで6月の観測史上最高となる46.6度を記録。5年ぶりに高温警報を発令したフランスでは1350校が休校し、エッフェル塔の頂上も閉鎖された。冷却水不足への懸念から一部の原子力発電所は稼働を止めた。
ドイツではライン川の水位低下で物流網に混乱が生じている。自動車専用道路アウトバーンも一部速度制限を実施せざるを得なかった。
英国でも線路膨張で鉄道の速度制限を実施したほか、イタリアでも13州で日中の屋外作業に中止勧告が出た。セルビアでも観測史上最高の44.9度を記録。ギリシャでも冷房を備えた公共施設を開放する措置を講じたほどだ。
深刻なのは欧州は家庭用エアコン設置比率が低いことだ。2003年の熱波ではフランスやイタリアを中心に7万人が死亡したが、国際エネルギー機関(IEA)によると、欧州全体で19%どまり。
90%を超える日本や米国に比べ依然低く、エアコンがなければ自宅の中で熱中症にかかって死亡する人も出てきて当然だ。
■ショップと鮮魚を組み合わせた9階建てビル
とにかく今年の7月、8月は死ぬほど暑かった。よくもまあこんなに暑い日が続くものだと天を恨んでいた。
9月も昨年、一昨年に匹敵する高温が続き、このままだと10月も酷暑かとなかば覚悟していたが、台風襲来もあって高温傾向が軟化。ぐずついた天気が多くなっている。
会社で同僚だった仲間から「JR御徒町駅」待ち合わせの声が掛かったのはそんなぐずついた日だった。
御徒町と言えば上野の隣駅。そこにどんと吉池本店ビルを建てているのが株式会社吉池(東京都台東区上野3-27-12)。大正9年創業の鮮魚小売店だが、その後総合食料品店に多角化。外食、水産加工、ホテル事業にも進出した。
1階は鮮魚売り場だが、1~4階まではユニクロ、5~6階はGU,7階は生活雑貨のユザワヤ、9階ぼてち”ゅう、カプリチョーザなどのレストラン、9階が吉池食堂(放心亭、寿司処しゅん、池田屋)となっている。
御徒町のランドマークは吉池だと主張し、ショップとフードの組み合わせという周辺でも外にはないユニークな存在感を発揮しているようだ。このあたりで「吉池」と言えば知らない人はいないらしい。
■御徒町エリアで「行くならここ」
上野・御徒町地区はさまざまな飲食店が立ち並ぶエリア。吉池は客に「行くならここと決めている店は何軒あるか」と尋ねる。
「吉池は本店最上階に吉池食堂と銘打ち、御徒町の新たな食空間をつくった」と指摘し、「行くならここ」とこの街の名所を目指すと強調する。
和、洋、寿司の3店を、壁や仕切りを設けない1つの空間にレイアウトし、自在に注文。自由に堪能。東京スカイツリーを望める大宴会場も普段はテーブル席として開放し、小上がり席や個室なども充実させた。
こんな楽しい食空間を演出した吉池食堂なら是非一度は行ってみたいと思わせる工夫は流石である。
■「アメ横」に並行して「上中」も
せっかく上野周辺まで行ったので「アメ横」を歩いてみることにした。天気も曇り空でいまにも雨が降りそう。どんよりと寒々しかった。天気が悪いとなかなか勢いが付かない。
それでもJR上野駅と御徒町駅の間を走っているアメヤ横丁、通称「アメ横」は鮮魚店や食品店も多く、食べ歩きも楽しめる活気のある商店街で、心が浮き立つものだ。
このアメ横と並行して走っているのが上中(うえちゅん)。正式には上野中通り商店街。スポーツ用品、カバン、靴屋などが中心で、アメ横より落ち着いた雰囲気が残っている。
どちらも戦後のヤミ市から発展し、アメ横はかつて飴を売る店が多かったようで「アメヤ横丁」と呼ばれるようになったという。今では年末商品を買い求めるお客さんでごった返すテレビ映像がまぶたに焼き付いている。
■介護保険使わない90代夫婦
家人の親族が亡くなって、運転手役を司った。親族の1人を瑞穂斎場(東京都西多摩郡瑞穂町)から茨城県牛久市の自宅まで送ったが、距離にして150キロほど。
斎場はJR八高線「箱根ヶ崎駅」からタクシーで5分、JR青梅線「羽村駅」からだと15分、西武池袋線「狭山ヶ丘駅」から20分という不便なところだった。
東京都の圏央道「狭山インター」から「牛久インター」まで届けた。91歳の高齢者(女性)だが、実にしっかりしている。頭も体もピンピンで70代と見られても不思議ではない。
高齢者も実年齢ではなく人次第。その人によって大きく変わることを実感した。60代でもよぼよぼの人がいる一方、90代でもまだ元気はつらつな人もいることを目のあたりにした。
これは何に起因しているのだろうか。ご主人も健在で94歳。耳は衰えたものの、頭はクリアで自分の名前もしっかり言えるし字も読め理解できる。足もしっかりしており、トイレも自分で行ける。娘が介護人として目を光らせている。
2人はまだ老人ホームのヘルパーの助けを借りないで自宅で頑張っている。この歳で介護保険も使ったことがないという。どうせならこういう老人になりたいものだ。
■自社醸造のクラフトビールも
近くにあるのが牛久市の象徴である牛久シャトー(牛久市中央3-20-1)。昔一度バーベキューを楽しんだこともある観光名所で、今では牛久大仏もできている。
牛久シャトーは醸造しているワインが有名だが、最近は地ビールも造っており、「牛久シャトービール」として販売しているとか。
これが地元牛久産小麦「ゆめかおり」を使用した「うしく ゆめかおり エール」。ほのかな柑橘系のさわやかな香りで、泡が細かく口当たりが滑らか。エール酵母特有のフルーティーな味わいが何とも言えない。アルコール度数5度。
ほかに輝く黄金色のミュンヘナー・ヘルス(アルコール度数5度)と赤みがかった褐色でコクがあり、さらりとした苦味が特徴のメルツェン(同6.5度)の3本セットをいただいた。

牛久シャトー(HPから)
■もともとは本格的なワイン醸造所
牛久シャトーは実業家の神谷傳兵衞が1903年に牛久市に開設したボルドー地方の技術を用いた本格的ワイン醸造場。
しかし母体企業(オエノンホールディングス)の業績悪化による事業撤退とその後の新型コロナウイルス禍による集客難などが響いて2018年にレストランや物販事業から撤退した。
その後は牛久市が19年に「牛久シャトー」を設立した運営を引き継いだが、コロナ禍の影響もあって赤字が続いている。
現在、市が主導して事業再生計画の策定や指定管理者制度の導入などを進めている。現在は新たなレストランもオープンし、ショップも物販を開始しているとか。
老人夫婦も頑張っているなら、牛久シャトーもぜひ再興を図ってもらいたいものだ。







