ゆうちょ銀行も硬貨手数料を有料化=デジタル化で現金がなくなる日がやってくる

家の中から小銭が集まった

 

■ゆうちょ銀行も硬貨手数料を有料化

 

通貨の世界で変革が起こりつつある。使えるのは交通系を含むカードのみで現金は使えない店が出てきたり、現金への風当たりが強まっているからだ。世の中もデジタル化に舵を切る一方で、「キャッシュレス化」の流れは時代の趨勢かもしれない。

自分の影響の出ない範囲ならばそれでも仕方ないなと我慢できるものの、自分に直接影響が出てくると、俄然話は違ってくる。どうしても影響を避けようと、回避行動に出るからだ。

現役を退いてから情報収集活動が甘くなっている。通常の情報収集は朝夕刊の新聞だけ。テレビはあまり見ない。現役時ならば、仕事がらみの関連ニュースは普通に入ってくるほか、職場の同僚などとの日常的な会話の中でも仕入れることができる。

その職場がないのだ。だからといって、テレビの前に一日中どんと座っているわけにもいかない。そうすると、テレビの前にいる時間が圧倒的に長い家人に情報を依存するしかない。

その家人が1月13日(木)にゆうちょ銀行が硬貨の扱いを有料化するニュースをみたという。実施は週明け17日(月)から。既に大手銀行は実施済みで、最後の砦だったゆうちょ銀行もそれに追随するのだという。知らなかった!

それで家人が家中から集めてきたのが小銭貯金箱。1円玉や5円玉、10円玉などで、カリカリ梅の容器などに過去20年間ほど何かにつけてポンポンと投げ込んできた。貯めていずれ困った人たちの義援金にしたいという目的だった。

 

1円玉も5円玉も10円玉も一緒くたにされた!

 

■手数料は硬貨の枚数で決める

 

ゆうちょ銀行によると、これまで無料だった硬貨取扱料金は17日から以下のように変わる。

1~50枚    無料
51~100枚  550円
101~500枚  825円
501~1000枚 1100円 
1001枚以上は500枚ごとに550円が加算される

 

1枚~50枚までは無料だが、51~100枚は550円、101枚から500枚は825円、501枚~1,000枚が1,100円、1,001枚以上は500枚毎に550円が加算される。

しかもこの手数料は金額ではなく枚数で決まるという。自宅で数えたら1円玉3630枚(3630円)、5円玉570枚(2850円)、10円玉は590枚(5900円)あった。合計で4790枚(1万2380円)だった。

金額ではなく枚数で決まるとなると、1円玉を多く持っている人は極めて不利。不利というよりも大きな損を被ることになる。私の計算では1円玉3630円を交換すると、4400円かかる。手元にお金が残らないどころか770円も余分に支払うことになるという。

わが家でさえこういう状態だから、小銭で商売しているゲームセンターや食券購入を券売機に依存している飲食店、さらには年末年始で多くの小銭が集まる神社などに影響は出そう。小銭を扱うこと自体が金融機関にとっては非常に負担になっていることだ。

最近のコンビニ。現金で払おうとすると、機械の指示に従って操作をしなくてはならない購入者だ。店員は機械の前で何もせずにぼーと立っているだけ。これまでと立場が逆転したほどだ。

 

野村證券の木内登英氏

 

■デジタル通貨導入の最大のメリットはコスト削減

 

現金に代わる通貨として世界が検討しているのがデジタル通貨だ。仮想通貨も広い意味でデジタル通貨。特に先頭を走りつつある中国はデジタル人民元を試験的に発行しており、北京オリンピックを契機に本格発行に踏み切る可能性も取り沙汰されている。

野村総合研究所の木内登英(きうち・たかひで)エグゼクティブ・エコノミストは昨年10月26日、日本記者クラブで、中国のデジタル人民元発行について、「米国による対中包囲網が背景にある」と話した。

中国は経済規模でいうと、数年ほどで米国を追い抜く。貿易規模でいうと、既に世界1。しかしながら通貨・金融の世界では相当遅れを取っていて、米国と戦っていくためには大きなアキレス腱となっている。

木内氏は、中国が米国の金融支配への対抗手段と考えているのがデジタル人民元ではないかと指摘した。現状の延長線上で考えると、中国は独自の経済圏、通貨圏を構築しているのではないかとみている。

導入のメリットは大きい。経済の効率化に貢献するほか、現金を使わないとコストを削減できるからだ。現金はGDP比で1.2%を占める。逆に言えば、現金を使うコストがGDPの1.2%程度だ。脱税が一番大きい。

日本は現金をGDP比で20%弱くらい使う経済だ。米国の2.5倍。現金がなくなった場合の経済の効果は大きい。新型コロナなどの感染症対策からも有効だ。

身近な決済でデジタル化が進むことは遅れているデジタル社会になじんでいく入り口にもなると木内氏は指摘する。

とは言っても現金への愛着はものすごい。「使い勝手がいいし、使っていても何も問題ない」からだ。スウェーデンの現金使用率は1%台で現金が消えつつあるのに対し、日本人は現金が好きだ。

問題は現金にはコストがかかっていることを国民はどれだけ意識しているか。使い勝手がいいことも、日銀が現金輸送車で全国津々浦々現金を安全に送り込んだり、傷んだ紙幣をチェックしたりする日銀の涙ぐましい努力があってこそだ。便利さの裏側にはコストがかかっていることを国民が理解することが望ましいが、果たしてどうか。

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