腰部脊柱管狭窄症

実にさまざまな病気があるものだ。ガンや心筋梗塞など「死に至る病」は深刻だが、簡単なケガや耳や歯などの痛みもそれなりに辛い。それまで人ごとだった病気が自分の身に直接起きると、もう「この世の終わり」のように思う。

人間は実に弱い存在だ。ちょっとした痛みにも耐えるのが大変だ。ましてや重傷となると、致命的な恐怖におののく。暴力が恐怖なのも、身体が傷付けられることに本能的な恐怖を感じるためだ。

1週間ほど前から、歩くと足の後ろが痛く、しびれる症状が現れた。疲れから来ているのかもしれないと様子を見ていたが、症状はひどくなるばかり。歩くのも苦痛で、それが増すので途中で足が止まってしまう。

ネットで調べると、下肢のしびれや痛みを伴う代表的な疾患として、「腰部脊柱管狭窄症」(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)と「腰椎椎間板ヘルニア」(ようついついかんばんへるにあ)が取り上げられていた。前者の症状はこうだ。

●下肢(足)のしびれ、痛み
●腰痛、腰の痛み
●臀部痛、臀部のしびれ、痛み
●安静時は症状はないが、歩くとしびれが出て、前屈みになって休むと楽になり、また歩ける(間欠跛行)

「腰部脊柱管狭窄症」は比較的に高齢者に多い疾患だという。7月に65歳になった。立派な前期高齢者の仲間入りした。自慢じゃないが、こうした症状が現れてもおかしくない年齢になったということだ。

脊柱管は腰の骨の中の神経の通り道。これが狭くなり、神経を圧迫することで症状が出現するという。適切な処置を取らないと、車いす生活が待っていると脅かされたら、放置するわけにもいかない。

自立歩行できることが人間に進化をもたらした最大の理由。歩けなくなれば、もう人間ではないとも言える。そんなことを考え出すと、居ても立ってもおれず、仕事を休んでこれまでに二度診察を受けた銀座医院に行った。

どうやら、腰部脊柱管狭窄症らしいが、的確な治療をするためにはMRI(Magnetic Resonance Imaging=核磁気共鳴画像法)による検査が必要と言われ、外部クリニックでの受検を勧められた。

医者に勧められて断るのは難しい。保険診療でも1万円ほどかかると言われると、尻込みしたくなる。しかし、病状がさらに悪化したときのことを考えると、お金のことに拘っているわけにもいかない。

仕事を休んでそのまま行ったのが「メディカルスキャニング銀座」。豪華ビルの2階で、何か場違いなところに来た気分になったが、もうまな板の上の鯉だ。

メディカルスキャニングは画像検査・診断専門のクリニックだとか。都内外に15カ所ほどの検査機関を持っており、ネットワークを形成している。普通こうした検査は病気になってから受けるものだが、そうではなくて、予防医療の観点から検査を実施する点が新しいらしい(その場合は自由診療扱い)。

全身がん検査やマンモ(乳房)、子宮・卵巣などの女性検査、脳検査、心臓検査のほか、体幹部(肝臓・膵臓・胆嚢、腰椎、肺、甲状腺・腹部、骨粗しょう症)検査などを行っている。この日受けたのは腰椎だった。

会社勤め時代に脳のMRIを受検したことを思い出した。こうして外来で受検しているのはまだ恵まれているのだろう。そのうち、入院を余儀なくされ、自分の家に帰りたくても帰れない状態になるのだろう。

その日が来るのはいつなのか、誰も知らない。知らないけれど、必ずやってくる。誰にもやってくる。人生の終末がやってくる。これに不確実性はない。

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