輸出振興、6次産業化が重要=斎藤農水相
ゲスト:斎藤健(さいとう・けん)農林水産大臣
テーマ:農林行政
斎藤健農水相が会見した。通産官僚出身の農水相は異例だが、自民党農林部会長、農水副大臣を2年ずつ経験し、「これから仕上げの時期に入る。4年間の総括のつもりで話したい」と語った。人口減少に直面する日本農業の振興策として、輸出振興と6次産業化を含めた付加価値増大の2点が重要だと指摘した。「生産現場だけを見る農政はもうダメ。消費者への視点も大切だ」と強調した。
・バックグランドとしては通産官僚だった。23年間勤めた。経済産業省時代から人事の希望として「困難な仕事」としか書かなかったものの、自民党が野に下ったときに初当選だった5年生以下の議員に希望調書が回ってきた。そのときも「困難な仕事」と書いた。
・高市早苗政調会長から突然携帯に電話が来た。「斎藤さんには農林部会長をお願いする」。さすがに「農林部会長ですか?」「そうです。だって貴方、『困難な仕事』って書いたでしょう」。「即答をせざるを得なかった」
・いろいろ武断も含めて聞かされていた元通産官僚が農林部会長になるのは空前(過去に例のないこと)のできごと。これからの農政は従来型の発想だけではいけない。新しい発想を農政の分野に取り込んでいかないと、新しい展開はできない。そういう意識が働いたのではないか。
・当時の林芳正農水相も農林族ではなく、政府、党を含めて農林関係議員ではない。自民党が政権取り戻してからの政権の展開はこうなってきた。
・農林部会長として気付いたのは日本の農業のこれからは本当に大変だということだ。「産業としての農業は大きな曲がり角にある」。1にも2にも人口が減る。毎年20数万人だが、80万人と加速度が付く。人が減っていけば、当然マーケットが縮小していく。それが毎年、毎年確実に起こってくる。口が減っていくのは今後の農業にいかに深刻な影響を及ぼしていくか。すぐ理解できた。これをどうしていくか。これが最大の課題になっていく。
・一方で、日本の農業はそうは言っても成長の余力がものすごくある産業だということも同時に気付いた。単純な話だが、日本の周辺や世界は人口は増え、お金持ちもどんどん増えている。しかも日本食がブーム。日本の農産物に対する評価は高い。ここを攻めていく。国内のマーケットが縮小するならば、海外のマーケットを取りに行く。生き残りのための重要な政策だ。
・今までは生産分野で利益を上げていたが、これを生産分野から出ていって流通・加工での付加価値を上げていく。6次産業化。輸出振興と付加価値増大で、これから毎年毎年人口が減っていく状況を対応していくしかない。
・特に日本の農業ほど、これから海外での可能性を強く感じさせる産業はそうはないと感じた。アメリカのイチゴはレモンと言う。一定のシェアはとれる。牛肉の輸出は5割増えた。イチゴも6割、日本茶も3割くらい増えた。ようやく日本のポテンシャルが評価され始めた。まだまだ増える。
・若い人たちの挑戦しているのも事実だ。米の生産調整も来年から国よる配分調整を行わない。自主的にやっている若者がどんどん出てきている。香港で2人で「おにぎり屋」をやっている。2020年には200店舗体制。工場も建設中だ。年間4000~4500トン使用する。日本の食べる米の輸出は年間1万トン。日本全国で1万トンしか輸出ができていない。リスクを取って海外に出て行こうとす人たちを強く応援していきたい。
・日本がこれからも成長を続けようと思えば、これから伸びていくアジア・太平洋地域のエネルギーを吸収をしていく。こういう展開が極めて重要だ。成長率優先主義でやりやすくなるように努力していくのは重要な政策だ。
・一方で、オーストラリアと経済連携協定(EPA)を結んだ。農産物の自由化の急先鋒な国と締結した。欧州連合(EU)とも大枠合意に達し、TPP11も大筋合意した。ただ単に日本農業を守るだけではなく、どう折り合いを付けるかが重要だ。何とか折り合いを付けれたと思っている。確かにフランスのチーズは強いが、日本のチーズをフランスに上陸させる気概でやるのも大事だ。通商交渉と農業基盤の維持・強化を両立させていきたい。