日本にとって最悪は「朝鮮半島に核を持った反日国家ができること」と河野前統合幕僚長(中)

 

河野前統合幕僚長

河野氏が揮毫したのは「簡潔明瞭」

 

米国はどう変わってきたか。もともとは「モンロー主義」(相互不干渉を主張する外交原則)で、他国には介入しないが、自分たちの国への介入もさせない国。これがおおまかな流れだった。第1次大戦への参加も欧州の戦争になぜ行く必要があるのかという世論だった。

ドイツのUボートに米艦が攻撃を受けて参戦した。第2次大戦も日本軍のパールハーバー攻撃でようやく参戦する流れになった。米国には他国への参戦を歴史的に嫌う流れがあった。

第2次大戦末期から米ソ冷戦が表面化し、米国は西側のトップリーダーとして主導せざるを得なかった。同盟のネットワークを築いて東側と対峙した。

オバマ大統領は米国は世界の警察官ではないと宣言し、トランプ大統領も米国は世界の大統領ではないと述べた。今は本来の米国に戻りつつあるのではないか。冷戦期の米国が特別であって、冷戦期が終わって本来の米国に戻りつつあるのではないか。

トップリーダーには理念先行型のリーダーと算盤を弾くリーダーがいる。理念先行型のリーダーは「理念のためには」と武力行使のハードルが低い。経済的損失を超えるもっと上の価値を認めているからだ。経済的損失を考える人は戦争は割に合わない。トランプ大統領は後者の部類に入る。武力行使には慎重だ。

トランプ大統領の軍事(安全保障)へのスタンスは「世界のことは面倒見ない。地域のことは地域で責任を持ってやるべきだ」。ただ米国の国益、もっと言えば米国人の命を奪うような場合は断固として制裁する。これがトランプスタイルだ。

トランプは特異だとする向きもあるが、私はこれは米国の意思と見るべきだと考える。民主党政権が誕生したとしても、国民皆保険を始めて莫大な資金が必要だ。外に目を向けることができなくなる。米国はそういう状況になっている。

安保条約を締結したときは西側の覇者として次代に責任をもって取り組む次代だった。そういうバックグランドが無くなりつつある。そこは見る必要があると思う。

日本をめぐる状況はどうか。習近平中国国家主席を国賓で迎えることのデメリットを安倍総理は100も承知だと思う。その上で「国賓で呼ぶ」という決断を下しており、それはそれで尊重すべきだと考える。

しかし、日中のホットスポットでは中国はよりアグレッシブなスタンスを崩していない。全く変わっていない。経済成長を遂げるために海洋権益を考えれば、必然的に海洋進出が伴う。米国も同じだ。

かつて中国人民解放軍はイコール陸軍だった。鄧小平の時代に海軍力増強に力を入れだし、ホットスポットの発端を作った。必然だ。尖閣に限らず、いろんなところで目の前で接触している。今後も続くだろう。

韓国の文在寅政権の北朝鮮対策は「もはや脅威ではない」と明言している。もともと脅威ではなかった。文在寅政権は北にものすごいアプローチをかけている。2045年の統一を目指している。

日本にとって最悪は「朝鮮半島に統一国家として核を持った反日国家ができること」。そこに在韓米軍がいることは予想できないので、在韓米軍もいない。このシナリオは日本にとって最悪だ。

安全保障を考える人間にとっては1つのケースとしてこのシナリオも考えておくべきだと考える。そうなった場合、どういう地政学的環境になるか。統一朝鮮、中国、ロシアという大陸ネットワークと日本、米国、豪州という海洋ネットワークが日本海を挟んで対峙する構図ができないとも限らない。

海上自衛隊の仕事はシーレーン防衛。これまでは太平洋が視野にあり、「日本海」は水産庁などの仕事と見なしていた。しかし、これからは「日本海」は防衛の1つのテーマとして見ていかなければならない時代にきていると思っている。

日本の安全保障をどうやって維持するか。最大の海洋国家である米国との日米安保体制がどうしても不可欠な存在となってくると思わざるを得ない。

米国が引こうとしている匂いがする。統一朝鮮ができそうな匂いがする。日本が独自で対処する方法もあるかもしれないが、それは現実的ではない。日米同盟の一層の強化が図られるべきと考える。

同盟というのは日本の運命を託す根幹中の根幹の安全保障政策。同盟は絶対に2カ国に限ると思う。多国間同盟ほどアテにならないものはない。ワルシャワ条約機構が無くなって、「北大西洋条約機構(NATO)は脳死状態」(マクロン仏大統領)。そういう運命になる。

結果として日本がロシアに占領されるかもしれない乾坤一擲の大決戦で日本を勝利に導いたのは日英同盟による英側の貢献が大きかったことを忘れてはなるまい。日本海に向かったバルティック艦隊に途上、さまざまな嫌がらせを行い、戦場に着いたときはフラフラの状態だった。一方の日本連合艦隊は準備万端の態勢で、完膚なき会戦だった。

米国からは何かと言えば不公平感が示される一方で、日本にとって同盟は不可欠ならば、この連立方程式をどう解けばよいか。今後米国は駐留経費を吹っかけてくると思うが、これは絶対に呑むべきではない。いまくらい払っている国はないからだ。もっと払うとなれば、もう同盟の体をなさない。

5条と6条のバランスを取っていると強調するのは危険だ。5条は何かがあれば米国は兵士の血を差し出すということだ。向こうの論理だと、「こちらは命を賭けているんだ。だったら10倍払え」ということになりかねない。よって5条の世界で何とか双務的な形に変えていくのが私の考えだ。

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