【賃金】うっすらと雪化粧した東京の自宅でリモート会見を聞いたりキムチ鍋をつついたりしているうちに日本は先進国から滑り落ちる寸前に!

 

7分咲きの梅の花の上にも降雪が・・・(10時34分)

 

■東京も薄らと雪化粧

 

いつの間にか2月も10日になってしまった。毎度のことだが、時間のたつのは本当に早い。関東甲信には雪雲がかかり始め、東京都内でも朝方から雪が降り始めた。

都内23区内の練馬区でも3センチほどの積雪となった。車の上も3センチほど積もっている。あっという間に自宅周辺部も薄化粧をし始めた。

東京は毎冬、一度くらいは降雪があるものの、そんなに寒くはならない。今年の冬もいつもの冬同様寒かったが、まだ雪は積もっていなかった。昨年も今の時期に降った。10センチくらい積もった。

本当は新宿にあるジムに行くつもりだった。しかし余りにも寒いので取りやめた。へたに外に出て、風邪でも引いて体を壊したら大変だ。そんな自由が効くのが定年後人生の気楽さでもある。嬉しいと言えば嬉しいが、悲しいと思えば悲しい。社会から何も期待されていないとなると悔しい。

家人が通っている絵画教室も休みになった。何せ教えている先生が80歳を超えている。生徒も老いている。全員が高齢者だ。滑って転んだら、再起できない。恐らく休講の連絡が入るだろうと思っていたら案の上連絡がきた。

 

■寒い日の「キムチ鍋」は最高!

 

キムチ鍋

 

雪である。寒い。外には出ない。となると食事は鍋しかない。昼間から鍋をやることにした。最近よく食べているのが「キムチ鍋」。韓国料理は嫌いではないが、あんまり辛すぎるのも困るのが正直なところ。

いつもは、キムチを鍋に入れ、それらしき味のつゆにし、その中にキムチを投入。肉やキノコや野菜を放り込む。簡単に辛口の鍋ができる。いつもはスーパーで買ってきた「叙々苑」のキムチを鍋に入れているが、今日は市販のつゆを使った。むしろ市販のつゆを使う方が一般的だ。

使ったのはミツカン(愛知県半田市)の「キムチ鍋つゆ」(3~4人前、ストレートタイプ)750グラム。アミノ酸液(大豆を含む)、果糖ぶどう糖液糖、みそ(大豆を含む)、食塩、醸造酢、魚醤、にんにく、唐辛子、ごま油、コチュジャン(大豆を含む)、ラージャンなど多くの香辛料が使われている。

「こくがあって濃厚な味わい」「炒めた韓国産唐辛子とニンニクの食をそそる香り」がうまそうだが、あまりに味付けも濃く辛い。やはり薄めの味のほうが自分の身体には望ましい。

キムチ鍋はキムチを使っているので韓国料理だと思われがちだが、大阪・鶴橋で1966年に創業し50年以上営業しているキムチ専門店「豊田商店」によると、キムチ鍋は日本発祥の料理だという。

キムチを使った日本風チゲ(鍋料理)である。キムチ鍋も正確に言えば、「キムチチゲ」というらしい。「チゲ」が朝鮮半島から日本へ渡ってくる途中で呼び名が変わったようだ。ちなみに韓国ではチゲは1人用小鍋で提供されることが一般的らしい。

キムチチゲはキムチや肉類を先に炒めてから調味料と出汁で鍋にするのが韓国風。本場のキムチは酸味が強く、そのまま煮込むと酸っぱすぎるため、炒めて酸味を飛ばすのだという。

 

”リモート日和”にリモート会見した野口悠紀雄氏

 

日本記者クラブの会見はオンラインでも行われている。この日のゲストは一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏だったが、会見場を設けずリモートでの会見だった。「どうすれば日本人の賃金は上がるのか?」と題して話した。要旨は以下の通り。

 

■日本の付加価値・賃金は1990年代から停滞

 

 

・日本の付加価値や賃金は1990年代から停滞している。付加価値とは企業が生み出した価値のこと。大雑把に言うと、売り上げから売り上げ原価を引いた粗利益と大体等しい。この付加価値あるいは粗利益から賃金が支払われる。このことが重要だ。

・企業が最適な行動を取っていると、賃金の分配率は技術的にほぼ一定しており、恣意的に動かすことはできない。賃金を増やそうと思えば付加価値を増やすしかない。

・マルクス経済学の影響を受けた人の中には賃金が上がらないのは分配率の問題だと考える人が多いが、それは間違いだ。(表が示すように)分配率はほぼ一定だ。

・日本の付加価値は高度成長期を通じて増えてきたが、1990年頃に頭打ちになった。それ以降は大体横ばいに推移している。賃金も伸びていない状態が続いている。

・付加価値は90年代初めになぜ頭打ちになったのか。これは中国の工業化に対してうまく対応できなかったためだ。日本は産業構造を変えるのではなく、円安・賃金固定化政策を取ったためだ。

・日本企業の付加価値はコロナからの回復でかなり高くなったが、企業が恒常的な回復と見なさない限り、賃金が恒常的に上がると考えるのは難しい。

 

■世界の賃金は上昇。日本は横ばい

 

OECDのデータによる

 

・OECD(経済協力開発機構)によると、2000年以降の日本の賃金(ドルベース)の伸び率は1.02倍しかない。これに対しアメリカは1.2倍、韓国は1.45倍。米国、韓国の賃金がかなり高い伸びを示したにもかかわらず、日本の賃金は伸びていない。

・日本が停滞しているために世界の中で日本の地位がどんどん下がってきている。OECDの統計は平均的な賃金比較だが、米国で顕著に見られることは高度専門家の年収伸び率が非常に高いことだ。

・GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)で働いているトップ技術者の年収が1億円であることは希ではない。場合によっては2億円になる。同じようなレベルの日本の技術者はせいぜい1000万円程度。先端的な高度専門家については賃金格差が10倍、20倍にまでと信じられない事態が生じてしまった。

・アメリカは平均でも高いが、高度専門家は日本よりずっと高い。同じことが韓国や中国でも言える。中国は平均的な賃金水準は日本より低いが、高度専門家をとると日本よりずっと高い。

・これは米国や韓国が中国の工業化に適切に対応したためだ。高度専門家が新しい産業構造を作っていくことによって付加価値を高めることに成功したことを示唆している。

・具体的な方法は米国や韓国の高度専門家は新しい技術を開発し新しいビジネスモデルを作っていくことが大変重要な意味を持っている。

 

■米国のインフレは需要けん引型

 

・2021年秋頃から22年にかけて日米両国ではインフレが襲ったが、内容が異なっている。米国では21年秋頃からコロナからの回復に伴い需要が増えた。政府による給付金が出回り、それが需要に結び付いた。またコロナで抑えられていた需要が出てきたこともある。それによって賃金が増え物価が上がった。デマンドプルインフレ。

・日本も22年には物価が上昇したが、これをもたらしたのは米国と違う。輸入物価が高騰し円安になったために国内の物価が外からの要因によって上昇した。需要がけん引した米国のインフレとは違い外生的な要因によるインフレだった。

・必要なことは金融緩和をやめて円安に対処することが重要だった。それを行わなかったために日本では物価上昇が続いた。

 

■日本の停滞する中で世界は成長

 

1人当たりGDP

 

・1人当たりGDPは賃金とは違うが、ほぼ賃金と同じような指標だ。世界には日本よりGDPが上の国がたくさんある。日本は世界24位で先進国の中ではより下に位置している。

・韓国は日本よりまだ低いが、このグラフにない台湾が22年に日本を抜いた。韓国も成長率が高いことを考えてみると、この1~2年のうちに日本を抜くのはほぼ間違いない。

・日本は最高位のルクセンブルグと比較すると3分の1くらい。米国の63%にすぎない。成長率の伸びと同じことが生じている。

・日本が停滞している一方、世界は非常に高い成長を続けている。だから日本の地位がだんだん下がっている。ある意味では当然のことだ。

・英国の作家であるルイス・キャロルの代表作『不思議の国のアリス』に出てくる「赤の女王」の言葉に「同じ場所に留まるためには一生懸命走らなければならない」という台詞がある。これは日本の状況を予言している。世界がものすごいスピードで前進しているのに日本は止まっている。だから日本は同じ場所に留まることができない。一生懸命走らなかったのだから地位が下がっていくのは当然のことだ。

 

■中国の工業化への対応に失敗

 

・日本は1990年代初め頃に付加価値の増加が止まって頭打ちになった。なぜそうなったのか。中国の工業化に対応しなかったためだ。

・中国は1980年代、改革開放路線によって工業化に成功した。安い労働力を使って安い工業製品を世界中に輸出し始めた。それまでの世界の先進国の主要な産業は製造業だった。それと同じような製品をはるかに安い労働力ではるかに安い価格で輸出してきた。

・当然のことながら世界の先進国にとって大きな脅威になった。先進国はどう対処したのか。対処した国は1人当たりGDPの上位グループ。どう対処したのか。産業構造を変え新技術を開発することで対応した。その典型的な例が米国だ。

・米国は1980年代に経済の不調に陥り米国の没落が明確になった。しかし80年代、90年代を通じて新しい産業を作り上げることに成功した。特に顕著に表れたのがITの分野。IT革命という言葉を生んだ。産業構造を新しくした。それによって中国の工業化に対応できた。韓国も従来の産業構造を変えることによって高付加価値化を実現した。

 

■問題は技術進歩率

 

OECDによる2020-40年の経済成長予測(単位%)

 

・日本の成長率が低いのは高齢化が進み、労働力の減少が大きな要因だ。ドイツでも小幅減少しているし、韓国もそんなに高くはない。それにもかかわらずなぜ成長率が高いのか。技術進歩率の高さが物を言っている。

・日本が労働力で不利な立場にいることは間違いないが、韓国のように高い技術進歩率を実現することができたら日本の成長率を高めることはできたはず。

・日本の場合、労働力人口増加率が大きくマイナスに働くことはどうしようもない。岸田政権も出生率引き上げに努力しているが、経済成長という観点だけから考えれば、むしろ成長の妨げになる。すぐには労働力の増加には貢献しない。

・韓国もそうだが、技術進歩率が非常に高い。このために経済成長率は労働力増加率がマイナスになるにもかかわらず高い成長率を維持できる。

・将来を考えた場合、技術進歩を実現できるのか。これが大変重要な課題になる。日本が高度専門家を果たして処遇できるのかに大きく係わっている。

 

■先進国から脱落寸前の日本

 

先進国から脱落寸前の日本

 

・日本のグラフは山型になっている。1960年代は平均の半分程度だったが、高度成長を続けて平均になり、さらに成長街道をばく進。90年代には米国を抜くに至った。日本は所得の高い国になった。

・70年代に先進国の仲間入りした日本はさらに地位を高め、世界で最も優れた国になった。しかし1994年当たりがピークでその後傾向的に低下し2022年の位置は1に戻ってしまった。

・このままだと日本は先進国から脱落し、さらに地位を低めていくことがあり得る。今は1ぐらいで、すべり落ちるかどうかちょうど瀬戸際にきている。

・先進国の仲間入りした70年代。そこから約50年間。先進国の地位を享受してきたが、このままいけば先進国の地位から滑り落ちるのではないか。

・今年のG7は日本で行われるが、アジアの代表として日本は相応しい国なのかどうか。今はイタリアと最下位を争っている。

・2000年のG7議長国だった日本が2023年にはG7の中で最下位を争う事態になってしまった。どうすれば挽回できるのか。これが我々に課せられた重要な課題である。

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