「リーマン・ショック」から1年


             (2008年11月13日、ニューヨーク・ウォール街)

 米大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界経済に激震が走ったのはちょうど1年前の2008年9月15日(日本時間では16日)。「リーマン・ショック」だ。もう、あれから1年経つ。早いものだ。世界経済は金融動乱に見舞われ、大収縮に陥り、それにつれて日本経済も大不況にもがいている。

 震源地・米国を中心に、日本を含めた各国がなりふり構わぬ財政出動で、辛うじて大恐慌への転落を瀬戸際で食い止めたが、これはあくまで非常時の緊急措置。当座の止血策にすぎず、いつまでもそれに依存し続ければ、むしろその逆作用が早晩頭をもたげるのは必至。金利高騰・超インフレの来襲だ。正常化策が早急に必要だ。

 金融動乱は収まったものの、逆にデフレが進行し、それがスパイラル化すればしたらで、インフレよりももっと大変なことになる。既に、日本経済はその道を歩みつつある。要はどちらに転んでも、世界経済は実に危ない橋を渡っているのだ。

 米国経済があれだけ痛んだ以上、世界経済の牽引役は好むと好まざるにかかわらず、購買力の強い中国、インド、ブラジルなどの新興諸国に依存せざるを得ない。日米欧では世界経済を支えきれないのは歴然だからだ。

 米経済が世界で優位に立てるのは今やITと金融のみ。その一方の旗頭だった金融は今回の危機で、大きな打撃を受けた。サブプライム・ローンに代表される融資債権を原資産とする証券化商品を粗製乱造し、とんでもない荒稼ぎをした報いである。

 ウォール・ストリートのマネートレーダーらがグリード(強欲)の赴くまま、寄ってたかって、金融市場を食い散らかしてくれた結果だ。彼らにとっては、笑いが止まらなかった。低金利で日本円を調達し、それを右から左に動かすだけで、巨万の富を生み出すのだから、グリードにならないほうがどうかしていた。

 リーマン・ショックから1年。痛い目に遭ったはずのウォール街で、また、グリードが復活し始めているという。米政府から、破綻救済の名目で借り入れた巨額の無利子融資を担保に、新たな投機活動が始まっているという。ウォール街というのは資本の論理を追求する場であるから、それを問題視することこそ、問題ではあるものの、もと来た道をた辿るのは馬鹿のやることである。

 オバマ大統領は現地14日正午、ニューヨークで演説し、金融規制を強化する決意を表明、投機的な行動を牽制した。人間には学習効果があって然るべきだが、なかなか懲りないのもまた人間であるのは否定できないところだ。資本主義が揺らいでいる。われわれの暮らしも揺らいでいる。

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