【会見】米大統領選まで何でも起こりうる9カ月間で勝者を予想するには時期尚早=グレン・S・フクシマ氏

グレン・S・フクシマ氏

 

ゲスト:グレン・S・フクシマ氏(米先端政策研究所上席研究員)
テーマ:2024年の米大統領選挙、課題と展望
オンライン視聴@2024年3月14日@日本記者クラブ

 

元在日米商工会議所会頭で現在米先端政策研究所上席研究員を務めるグレン・S・フクシマ氏が3月14日、9カ月後の11月5日に迫った米大統領選について「まだあまりに変数が多く、予想するにはあまりにも時期尚早である」と語った。

 

■「スイング・ステート」で勝負

 

選挙戦でとりわけ重要になるのは、選挙のたびに勝利政党が入れ替わる「スイングステート(揺れる州)」だ。「注目州」、「揺れ動く州」、「パープル・ステート」などとも呼ばれる。

2024年大統領選挙の激戦州といわれる7州はアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの各州。

大統領選は全50州と首都ワシントンでの投票で争われ、ハワイ州なら民主党、アラスカ州なら共和党など支持政党が明確な州が多い中で、7州は両党の支持が拮抗しており、事実上7州で勝負が付くと言われている。

米総合情報サービス企業ブルームバーグと調査会社モーニング・コンサルタントは2023年12月14日、世論調査結果を発表。もし大統領選挙がきょう実施されたら、バイデン氏かトランプ氏のどちらに投票するかという問いを発した。

同調査ではトランプ氏が全7州でバイデン氏を上回った。11月に発表された別の世論調査でもウィスコンシン州を除き、トランプ氏がバイデン氏を上回る結果が出た。

 

■なかでも3産業州が決め手

 

日本のメディアでは世論調査だけをみて「もしトラ」や「ほぼトラ」のキャッチフレーズが飛び交っているが、米ブルームバーグ通信は2024年3月15日、バイデン氏の陣営が同氏の再選の可能性を信じる楽観的な見通しを示していると報じた。

それが7激戦州のうち3つの産業州、いわゆる「ブルーウォール」(ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア州)の選挙人がバイデン氏に投票すればバイデン氏が勝利を得られるというものだ。

ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの3州は2016年にトランプ氏が勝利するまでは民主党候補が票を集める時期が長く続いた。それが20年にはバイデン氏が3州全てを制した。

 

■ケネディ氏ら第3の候補者も

 

第3の候補者も選挙戦の鍵を握るかもしれない。無所属で出馬する故ケネディ元大統領のおい、ロバート・ケネディ・ジュニアに注目が集まっている。1968年に暗殺されたロバート・ケネディ元司法長官の息子でもある。

ニューヨーク・タイムズ紙などの世論調査によると、バイデン、トランプ、ケネディ氏の3つどもえの場合、ジョージアやネバダなど接戦6州での支持率はトランプ氏35%、バイデン氏33%、ケネディ氏24%。

18~29歳に限定すると、ケネディ氏の支持率は34%で、30%のバイデン氏と29%のトランプ氏を上回った。

読売新聞によると、ケネディ氏の横顔は首都ワシントン生まれ、ハーバード大卒。環境問題に熱心。新型コロナウイルスワクチンには懐疑的な姿勢を示している。3度の結婚を経験。現在の妻は女優。7人の子どもがいる。

 

■バカにはできない独立系候補

 

第3党や独立系候補の出馬も可能だが、投票用紙に名前を載せるには数万人の署名を集めるなど各州が定めた条件を満たす必要があるという。

それでもこれら候補者の存在はあなどれない。1992年の大統領選では実業家のロス・ペロー氏が独立系候補として立候補し、現職のジョージ・ブッシュ氏(父)から保守票を奪った。結果的に民主党のビル・クリントン氏が「漁夫の利」を得て当選した。

2000年大統領選では「緑の党」から出馬したラルフ・ネーダー氏が民主党の左派票を一部獲得し、共和党のジョージ・ブッシュ氏(子)の当選を助けたといわれる。

 

■バイデンはなぜこれほど選挙に弱いのか

 

世論調査などでトランプ氏の有利が明確になったが、逆に言えば「なぜこれだけバイデンが弱いのか」も問題である。バイデン氏が単に高齢だとか言い間違いをすることだけではなく、彼はそもそも選挙に強い政治家ではない。

ペンシルベニア州で生まれデラウエア州で育ち29歳の選挙で当選し、36年間上院議員を務めた。ワシントン以外での経験が極めて乏しい。デラウエア州はいったん当選するとほぼ再選される環境で育った。

オバマ大統領が当選した2008年は自分がハワイで育ちワシントンは全く未経験。だからある程度年を取っていて経験があって白人の男性であることなど「自分の持っていないものを持っている人物」を副大統領に据えた。

バイデン氏はこれまでも大統領選に出馬している。大統領になることが夢だったのかもしれない。しかし彼は選挙も強くなく人気もないのが実情だ。

2020年に出馬したときも民主党から28名の出馬があった。バーニー・サンダーズ上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員もいてサンダースが選ばれた場合、トランプには勝てないだろうとの判断で2人が撤退し最終的にバイデンが選ばれ、トランプを破った事情がある。

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