『トゥルー・グリット』

 1878年、アメリカ西部アーカンソー州の辺境の町フォートスミス(現オクラホマ州)。その駅に着いた蒸気機関車から、ひとりの少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)が降り立った。雇っていたチェイニーに撃ち殺された牧場主の父親の遺体を引き取りにやってきた14歳の娘だ。

 マティは自らの手で父の仇を討つため、「トゥルー・グリッド」(真の勇気)であるといわれる大酒飲みの連邦保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジズ)を雇う。別の容疑でチェイニーを追ってフォートスミスへ来ていた若きテキサス・レンジャーのラビーフ(マット・デイモン)も加わり、犯人追跡の過酷な旅が始まった。

 1775年にアメリカ独立戦争が始まり、翌76年7月4日に独立を宣言。それから100年後の1878年当時のアメリカ国土は38州。アーカンソー州フォートスミスは文明化された社会の最西端にある町で、そこから先は、人々が恐れる自然のままの荒野が広がっていた。

 州境のすぐ向こうは1834年インディアン・インターコース法で定められたアメリカ原住民のための土地。1907年にオクラホマ州になるまではどこの州にも属していなかった。この緩衝地帯には逃亡者や脱走した奴隷など、行方をくらましたい者がやってきて、森や山岳地帯に身を隠した。マティら3人がチェイニーを追って踏み込む土地はそういう世界だった。

 マティ・ロスを演じるヘイリー・スタインフェルドがいい。13歳のときに全米規模のオーディションでこの役を射止め、これが映画デビュー作。2人のトゥルー・グリッドと真正面から向き合う責任感の強い純粋で硬質な少女役にぴったりだ。

 正義と復讐、荒野と聖域、個人主義と忠誠心、現実と伝説。映画で描かれている舞台は西部開拓時代の最後の日々だ。アメリカ人にとっては郷愁をかき立てる時代と場所らしい。

作品名:『トゥルー・グリット』
監督/脚色/製作:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
原作:チャールズ・ポーティス(『トゥルー・グリッド』早川書房刊)
作品:2010年アメリカ映画(110分)
上映館:新宿武蔵野館2

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