「政治は困難化し価値が動揺」

 

会見する髙見澤氏

会見する髙見澤氏

 

ゲスト:高見澤将林(たかみざわ・のぶしげ)前内閣官房副長官補 (事態対処・危機管理担当)
テーマ:変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選

 

安倍官邸で安保政策を立案した防衛官僚。世界各国で最近の選挙プロセスに見られる共通的な現象・症状は何か。これについては①政治の困難化②価値の動揺③格差の拡大④情報の拡散⑤内政の重視-の5点を挙げた。

①政治の困難化=課題が複雑になって増えている。弱化する指導力と統合力、あるいは急速に進む急進ナショナリズム。強い指導者への渇望があるのではないか。

②価値の動揺=国際システム(Rules based order)が動揺しているのでないか。民主主義の不信の増大であり、新興国の調整にどう対応するか。国際政治学会のパネルで、今の民主主義はどうなんだという議論が行われた。リベラリズムはうまくいくと話と、そうは言っても至るところで破綻している。うまくいっているのは経済のリベラリズムだけではないか。私は価値の動揺が起きていると思っている。

なぜ秩序が揺れているのか。元々従っている国際的な枠組みのOriginは何か。人権は共産主義を追い込むための枠組みだった。国際主義が客観的なことから出てきたのではなく、時代背景の中で出てきた。その意味で、その正当性(Righteousness)はよく考えなければいけない。そこへ持ってきて事態が多様化(Diversity)していて集中する力と分散する力(Decentralization)の中でOrderをどう考えていかなければならない。それ以外にいったんできた秩序に対してどのように実行してくのか(Enforcement)、あるいはどう拡大( Enlargement)していくのか。チャレンジにさらされている。ウクライナや中東で起きていることを見れば、民主主義の拡大というか押し付けの部分は反発が出ている。揺れを招いている。今回EnforcementとEnlargementの部分は違った部分が出てくるのではないか。オバマ政権が理念を前に拡大してきたが、それは力というよりもNGOを使ったりした部分がどうなっていくのか。そういう意味でorderは揺れている。そういった現実が生まれている中で持続可能性はどうなのか。このシステムはResiliencyとRespect。国際社会が守っていくのか。少なくても国際的枠組みから出ることは非常にハードルが高かったのに、今やこの国際的秩序そのものについても、あまり尊重しないという風潮がある。そういう中でトランプは気候変動の話をしているのはどういう意味を持つのか。

政治が困難化し価値が動揺しているのは1つはSpeed。とにかく変化が早い。ネット、ソーシャルメディアの時代なら報道しているうちに新しい情報が入ってくる。Severity。これは状況が厳しい。命の掛かってくる状況がいろんなところで生まれている。冷戦崩壊後に新たな闘いを始めたのは8カ国ある。今の政権の政策というのはネットの世界を含めてあらゆるところから検証(Scrutiny)にさらされ、ほじくり返されることもある。それゆえ政府側が従来のようなアドバンテージな立場を持てなくなって、その結果、事態はSuspicionが生まれている。一方でグローバリズムが進んだ結果、分断(Separation)が進んだ。一方でSelf-esteemが生まれている。

④情報の拡散=比較的ニュートラルなインフォメーションが拡散することもあるが、Disinformationもある。Misinformationもある。今まで以上に言葉の上での闘いが激しく行われるようになっている。従来はヒトと手間をかけて行われなければならなかった情報戦がいわば日常化している。良い話は情報の海の中から拾わなければならないが、悪い話も情報の海の中でどんどん広がっていく。その難しい状況に政治が今直面している。

⑤内政の重視=今状況が複雑化している中で価値が動揺したり、格差が増大している。それが内政を重視しなければならないことになっている。

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