サウジ、ムハンマド皇太子に権力集中

 

WTI原油価格の推移(月次)世界経済のネタ帳から

 

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の佐藤隆一中東事務所長は11月24日都内で開いた会合で、2017年度第7回石油天然ガス最新動向のブリーフィングを行った。湾岸産油国はVAT等痛みを伴う改革を模索している一方、人口の多いサウジアラビアはムハンマド皇太子への権力集中を進める。近く改革の成果が問われるところだ。

原油価格の下落は2014年以降、過去2年間続いている。14年後半はバレル当たり100ドルを超えていたものの、16年2月には同30ドルを割り込んだ。現在は58ドル前後で推移し、今後もさほど高くない水準が続く見通しが高まっている。

石油輸出国機構(OPEC)は高生産姿勢を崩さず、米シェールの高い持久力などを背景に今の状態が今後も続く見通しが高まっている。

国際通貨基金(IMF)によると、サウジアラビアの財政収支が赤字に転落しないために必要な石油価格は70ドル、アラブ首長国連邦(UAE)60ドル、クウェートとカタールは50ドルと推定されている。これ以上下がると、サウジの財政収支は赤字になるというレベルだ。

ぜいたくな財政支出を減らすことも可能だし、赤字国債を発行することもできる。また税金をとることもできる。基準自体が極めて緩い。多くの湾岸協力会議(GCC)諸国では14年から赤字が続いている。

サウジは政府系ファンド(Sovereign Wealth Funds=SWFの運営するファンド)の外貨準備資産を取り崩したほか(7840億ドル→4850億ドル:約30兆円減)、国債等の発行による外部調達を行った。

また、サウジは公務員および軍人の給与削減を表明したものの、国民に配慮し中止した。王族への資金分配問題でも強硬な姿勢を表明した。

サウジではムハンマド皇太子への権力集中の流れが鮮明になっている。15年1月に経済開発問題会議議長、15年4月にサウジアラムコ最高会議議長、17年6月には政治安全保障問題会議議長に就任した。同年11月4日には反汚職委員会を設立し、議長にもなった。同日、唯一対抗し得るムトイブ王子・国家警備隊長ら11人の王族を含む201人を拘束した。

一方で、イエメン紛争介入やカタール断交、武器購入などを続けており、財政圧迫要因は多い。レバノンのハリリ首相が辞任を発表したのもムハンマド皇太子の関与が指摘されている。

 

昨年完成したADNOC本社ビル

 

湾岸諸国ではUAEが先頭を切って付加価値税(VAT)を導入し始めた。ADNOC初の社債を17年11月に30億ドル発行したほか、ガソリンスタンド部門のIPOも行い、資金を調達した。

ADNOCは戦略的な体制でコスト削減と技術導入を実行。石油化学・マーケットも重視し、新社風は「もはやサンタクロースではない」と強調した。

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