【旅路】浜名湖に一泊したついで渥美半島突端まで行ってきた=「菜の花」が咲き乱れ春の嵐に浮かぶ伊良湖岬灯台

1929年に建てられてからずっと海を見守る伊良湖岬灯台はまるで一幅の絵葉書みたいだ

 

■ルートイン浜名湖はグッドチョイス

 

3月28日に東京・練馬の自宅を出て4月4日に帰る予定を組んで関西方面に向かった。それも高齢者だから大阪までに途中で一泊する配慮までした。

それが大阪で「もしものコロナ」に罹り旅先でうんうんうなる始末。季節はまさに桜の時期。楽しい旅路がすっかり暗転した。行きは良い良い帰りは恐い、である。

最初に向かったのは東京と大阪にちょうど中間地点の静岡県浜松湖。どこというわけではなかったが、渥美半島辺りが気になっていた。宿は適当にビジネスホテルのホテルルートイン浜名湖(静岡県湖西市)と決めた。

結果的にこのホテルはリラックスできる大浴場(人工温泉)もあって、朝食もバイキングながら無料で提供され、超お得感に溢れていた。泊まるのは初めてだったが、気ままな観光旅行でも全く問題なかった。

ちょっとした旅行なら十分使える。こんなルートイングループが静岡県内だけで19カ所。全国だと344ホテル(2024年1月1日現在)もあるという。海外もベトナム、サイパンなどに進出している。

 

老舗うなぎ屋の「うな善」

 

■浜松は「うなぎ養殖発祥の地」

 

もともと浜名湖には天然うなぎが生息していた。養殖も明治に入って始まった。浜名湖は誰も知るうなぎの本場である。高価になったとはいえ、浜名湖まできてうなぎを食べないで帰るのはバカに等しい。

1879年(明治12年)に東京で初めてうなぎの養殖に成功した服部倉次郎という人物が浜名湖でうなぎの養殖をやろうと1897年(明治30年)に調査を始めた。

大日本水産会伝習所(現東京海洋大学)の協力のもと、約8ヘクタールの養鰻場を作ったのが浜名湖でのうなぎ養殖の始まりだと言われている。

今や生産量こそ他県に譲ったものの、浜名湖のうなぎ消費量は全国ナンバーワンだとか。1人当たりの蒲焼き購入金額が日本一になるなどうなぎとは切っても切り離せない関係があり、湖畔には名店がひしめいている。

大雨が接近している28日にホテルから一番近い「うな善」(湖西市)に行ってそこで「特」(きも吸付き、5700円)をいただいた。

うな善では江戸焼(関東風)の調理を主体としているが、注文に応じて地焼(関西風)も提供している。関東式は背開き、関西式は腹開きで調理するが、どちらも味わえるのが浜松風らしい。

うなぎ職人には「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」という格言がある。うなぎの串打ちをマスターするまでに3年、捌けるようになるまでに8年、そして焼きの技術を習得するには一生かかるという。何とも大変な世界である。

 

朝も10時前からどんどん人が吸い込まれていく

2階からのぞいたうなぎパイファクトリーの全景

見学を終えると1階の直営売店へ

 

■夜のお菓子「うなぎパイ」

 

3月28日(木)午後から29日(金)朝にかけて日本列島は春の嵐に見舞われた。浜名湖周辺も強い風と雨が降ってホテルに直行。とてものんびり出掛けることなどできなかった。

29日朝もまだ雨が残っていたが、とにかく無料のバイキング朝食。それも和洋中華の充実ぶりでとても無料とは思えなかった。

ビジネス客は朝が早いが、急ぐ観光客もいるものの、われわれはそんなに急がない。それでも7時半頃に朝食を食べて9時にはチェックアウト。

向かったのは「うなぎパイファクトリー」(浜松市中央区)で有名な春華堂工場見学ツアー。誰も食べるものには目がない。

いつの間にか静岡土産の定番になってしまったうなぎパイ。浜松名物のうなぎパイを練り込んで作られたのが「夜のお菓子 うなぎパイ」。

「夜の家族団らんのひとときに、このパイを食べて欲しい」という想いが込められているという。ファミリー向けのお菓子だと言われる。

工場見学は入場無料なうえにお土産でうなぎパイミニが記念でもらえるので大人気。特別なパッケージに入っていて1人3枚提供される。

しかしただほど高くつくものがないのも真理。結局お土産をたくさん買い込んで高くつくことになるが、それはそれ。ただでもらうのはやはり嬉しいものだ。嬉しいからつい別のものも買ってしまうのだ。

 

うなぎパイが焼き上がってくる

 

■1961年からずっとオリジナルのたれ

 

春華堂独自のお菓子「うなぎパイ」が誕生したのは1961年(昭和36年)。その後ずっと、職人による手作りを続けている。

そんなに作るのが大変なのかと思うが、実際にパイ生地を作るほうは大変らしい。生地をこねるのに年季が要るようだ。

「パイ生地は数千層も繊細で職人が長年培った経験と勘によるたまもの。日々変化していく温度や湿度に合わせて材料の混ぜ方や折り方を調整するには10年の鍛錬が必要とされている」という。

「そんな繊細なうなぎパイだが、原材料は至ってシンプル」。「バターはうなぎパイの香りや口当たりを大きく左右するために特に厳選したものを仕入れており、砂糖はお菓子に合わせ特別精製した粒子の大きいグラニュー糖を利用。小麦粉は厳しく品質チェックを行ったもの。これらを混ぜ合わせた生地に、うなぎのエキスを加えて焼き上げ、最後に秘伝のタレを塗って完成する」という。

「このタレは、社内でもごく一部の者しか知らないというオリジナルで、誕生当時の思いもそのままにずっと変わらない」らしい。

そう言えば山梨県北杜市にある菓子製造メーカー、金精軒が製造・販売する土産菓子の信玄餅(しんげんもち)。求肥と餅米で作った餅に、きな粉をまぶした餅菓子で、黒蜜をかけ、付属の爪楊枝で食べる。

信玄が絶賛したから「信玄餅」という名前になったとか。うそかまことか、まことかうそか。ここも一般見学を受け入れており、いつ行っても見学者で溢れている。

 

渥美半島の地図

菜の花が美しい

 

■「菜の花まつり」が開催されていた

 

浜名湖から西に長く延びているのが渥美半島。半島全体が田原市だ。北は風光明媚な三河湾、南は勇壮な太平洋に囲まれた半島で、突端まで50㎞ほどある。突端には伊良湖岬灯台が立っていた。

突端まで「ずいぶんあるな」と車を走らせていたら、途中で渥美半島「菜の花まつり」が開催されていた。

当たり全体が菜の花畑

 

■菜の花は今や有力な観光資源に

 

昨年、福島県に行った際、三ノ倉高原でも菜の花が咲き誇っている光景を目にした。

三ノ倉高原はスキー場で全体がなだらかなスロープとなっており、上からの眺望は満点。それに対し、渥美半島は菜の花の向こうに太平洋を眺望できる。こういう光景もなかなか見られない。

芝桜やネモフィラ、チューリップ、藤などいろんな花が全国各地で観光客を楽しませてくれている。最近はこれに菜の花も加わったようである。

波に洗われる灯台

玉もがるいらごが崎のいそ千鳥 あとはまさごにふみやのこさん

砂を巻き上げながら打ち寄せる波

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