”タラバガニ争奪戦”

 NNNドキュメント’05「偽りの海-カニビジネスの闇ー」(日本テレビ系、2月28日午前零時25分~55分)を見た。ロシアの漁船が直接、日本に水揚げするのは認められていないにもかかわらず、サハリン沖で獲ったカニを堂々と稚内港に持ち込む実態を映像で捉えたものだ。「漁船」を「貨物船」と偽り、入港届を虚偽記載する密輸だ。番組は、ロシアからの活カニのほとんどは密輸だと指摘する。

 ロシアからの密輸が止まらない背景にはカニ、とりわけ「タラバガニ」を求める日本人観光客の存在がある。稚内経済を支える最大の柱は今やカニだ。カニを求めて観光客が群がる。もちろん、それを商売にするカニ輸入業者も暗躍する。「お金があれば、何でもできるんだ。面白いんだ、あっちの国(ロシア)は」(カニ輸入業者)。

 昨年6月30日、公正取引委員会は、景品表示法違反で、大手百貨店「そごう」(横浜市)など3社に排除命令を出した。形も味もそっくりの「アブラガニ」を「タラバガニ」と偽って販売していたからだ。アブラガニの市場価格はタラバガニより大幅に安い。見分けがつきにくいから、そこをうまくだませば、巨額の差益を生む。

 ”タラバガニ争奪戦”の結果はお定まりの資源枯渇。乱獲がたたって、幻のカニになりかねない。既にサハリン沖ではタラバがほとんど獲れなくなってきており、稚内港に持ち込まれるカニもズワイや毛ガニばかり。5年のうちにタラバは姿を消すとも言われる。ロシア政府も日本政府も無策。喜んでいるのは「それまでにもうけるだけですよ」と笑う輸入業者だけのようだ。
 

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