「日銀がまたもや新天地を開拓-今度は実を結ぶか」

 

講演する米S&Pチーフ・エコノミストのシェアード氏

講演する米S&Pチーフ・エコノミストのシェアード氏

 

日銀の黒田東彦総裁が打った非伝統的な金融政策は本当は成功だったのかもしれないと言う人が現れた。米最大の信用格付け機関のチーフ・エコノミストであるポール・シェアード氏がそうだ。同氏の主張は以下の通りだ。

「白川方明前総裁時代の日銀は、実質潜在成長率の一貫した低下が日本のデフレの原因だと明言しており、デフレは金融政策で克服できないとしていた。積極的な金融政策をあまり推進しなかった。

このため、一例として2008年9月にグローバル金融システムが心肺停止状態に陥った時点から、日銀総裁が白川氏から黒田氏に交代した時点までの間に、米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートが247%拡大したのに対し、日銀のバランスシートの拡大は53%にとどまっている。

これに対し、黒田新総裁はインフレ・ターゲティングの標準的枠組みのロジックを採用し、日銀は金融政策によってデフレは克服し、2%の物価上昇目標を達成できると主張した。

その鍵となるのが国民のインフレ期待を変化させることだった。そのためにまず、日銀は自らが物価上昇を操作できると考えていることを国民に示し、次にそうした新しいメッセージを政策行動で裏付ける必要があった。

こうした日銀は、2013年4月4日に「量的・質的金融緩和」をスタートさせ、当初マネタリーベースを年間60兆~70兆円増加させることを約束し、その後年間増加額は80兆円となった。それ以降、日銀のバランスシーとは173%拡大した。

量的・質的緩和によって予想物価上昇率の引き上げと名目金利の低下を同時に実現し、その結果、実質金利は大幅内低下するだろうというのが日銀の目論みだった。実質金利の低下は経済活動を刺激して物価が実際に上昇し、それによって国民のインフレ期待は日銀の目標値まで高まるだろう。こうした思考は全くもって健全だ。

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日本の失業率は3%と1995年以来最低の水準で、労働市場の実情を最も如実に示す指標の有効求人倍率は1991年半ば以降最高の水準で推移している。日銀は日本経済の需給ギャップは解消していると推定している。

こうしたことは、政策立案者が十分に「積極的な」金融と財政の政策ミックスを実行し続ければ、将来、物価上昇が実現することを示す吉兆である。日本国民の間にインフレ期待が極めて浸透しにくいことは実証済みだとはいえ、政府と中央銀行が「力ずくで」政策を実行する用意があれば、それが成功しない理由はない。1980年代の米国におけるボルカーFRB議長の経験が示すように、国民のインフレ期待が中央銀行の意図とかけ離れている場合、インフレ期待を定着させされるだけの「信認」を得るのは至難の技なのである。」

少なくてもこれがS&Pグローバルのチーフ・エコノミストの見解だ。「日銀がまたもや新天地を開拓-今度は実を結ぶか」(2016年11月7日)だ。黒川日銀総裁を支持しているというか、黒田日銀の政策が成功するのではないかとみている。それがびっくりだった。

 

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