国王が政治の実権を持つサウジ

 

アジア経済研究所の福田安志氏

 

国際開発センター研究顧問の畑中美樹氏

 

ゲスト:福田安志(ふくだ・さだし)アジア経済研究所上席主任調査研究員
畑中美樹(はたなか・よしき)国際開発センター研究顧問
テーマ:激動するサウジアラビアと中東情勢
2017年12月6日@日本記者クラブ

多数の王子逮捕で揺れるサウジアラビアについて中東専門家2人が解説した。

「ムハンマド皇太子は、王族内部の反発もあるが、40代の『団塊の世代』に圧倒的に支持されている。今後、開発独裁型指導者になる可能性がある」(福田氏)

「皇太子による社会の自由化を含む諸改革が実を結ぶには時間がかかる。改革には増税など痛みを伴うものもあり、国民が実を享受するまで我慢できるかどうか。イスラエルとの接近にも注目したい」(畑中氏)

 

サウジの地図

▇福田氏

・人口は○で囲っているところに集中している。国土は日本の6倍で大きい。首都リヤド地域、ペルシャ湾岸の油田地帯。シーア派の重鎮が住んでおり、いろいろ問題が起こるところ。東岸のメッカ、メディナのある場所。それとイエメン国境沿い。王様の住居がリヤドとメッカに分かれている。

・政治構造が複雑だ。政治はサルマーン国王を中心に動いている。王様が政治の実権を持っている。立法権も持っている。内閣総理大臣を兼ねており、火曜日に王宮の中で閣議を開催している。

・諮問評議会は議会としての位置づけだ。立法権は持っていない。法律は閣議でかけて、閣議で承認されたあとに王様が全部持って帰って、それを採用して承認をして勅令として発布することによって法律になる。法律も王様が決める。

・国土が多くて人口がまたがっている。地方の州知事が一番大切。王族がたくさんいる。行政機構の中には王族はそんなにいない。役所の数が21か22ある。それ以外に無任所国務大臣がいる。王族は2人だけ。あとは平民出身。非王族の実務家が行政を支えている。地方は王族が任命されている。王族の甥が知事になって、副知事になって地方行政を担っている。こういう行政がある。

・決定権はすべて王様が握っている。

・非常に重要なのは法体系。イスラーム法が生きていて使われている。2つ裁判所がある。イスラーム裁判所とDM法廷(平たく言えば、憲法裁判所)。イスラーム法だけでは国が動かないので、労働争議や商取引などは別途王様が勅令を出して作る。これを担当する行政裁判所は別に存在する。

・クーデタを防止するためにお互いに牽制させて軍事機構を幾つかに分けている。こうしたシステムの頂点にサルマーン国王がいて政治を動かしている。

・サルマーン国王には男子12人。王族は数千人、2万人、3万人、人によっては5万人いるといわれる。多数の王族がいて、各所に散っている。就職先必要だ。州知事、副知事など地方行政職。

・サウジは石油収入に基づいて経済が動いている。政治の安定も石油収入によって得られている。この体制の下で政治が安定する。国民の多くの人が国家機関に働いている。3分の2は国家機関で働いている。大学の学生は奨学金をもらえる。そういう中では反政府動きは起きない。政権が安定する。そういう構造だ。

 

 

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