キャベツと霜

 3月も下旬に入ったというのに今朝は寒かった。2月の寒さだ。通勤途上のキャベツ畑には霜が降りていた。寒いはずだ。福島原子力発電所を取り巻く状況がなかなか好転しないことが気をひどく重くしている。見えないだけに、胸に去来する不安や恐怖も不気味だ。

 第1原発だけでも原子炉が1号機から6号機まで6機もあり、しかも定期検査で停止中だった5-6号機以外の4つの原子炉がいずれも原子炉(圧力容器)内の燃料棒が損傷を受けている疑いがあったり(1号機、2号機、3号機)、使用済み核燃料貯蔵プールの燃料棒が損傷を受けている疑いがあったり(3号機、4号機)している。総崩れの状況だ。

 しかも、事故による水蒸気爆発のせいか、放射能が大気中に漏れ出し、土壌や水を汚染した。政府は「人体への影響はない」と強調しているが、放射能の中で生活を強いられている事実は否定できない。気にならないわけがない。雨に濡れたり、水道水を飲むたびに「放射能入り」であることに頭がいく。

 水と安全はただだと思い込んでいたが、水はあっという間に危険なものとなり、安全神話は物の見事に崩れ去った。3.11を境に、すべてのものがリスキーであり、不安定で安心できないものに暗転した。それにしても、あまりにも突然である。実は3.11以前も決して安全・安心ではなかったものの、自分で勝手にそう思い込んでいただけだった、ということだ。

 事故発生から2週間。状況は果たして好転しているのか、それとも悪化しているのか。よく分からない。原発関係者の懸命かつ決死の作業を信頼して、任せるしかない。今彼らの責任を追及しても、事態が良くなるとは思えない。

 最悪の事態を想定しながら対処するのは危機管理の要諦だ。外国政府が日本在住自国民の国外脱出を促したり、東京から大使館機能を移設したりしているのも危機管理の原則に則った当然の措置だ。限定的な日本政府の危機管理対策が最悪の事態を想定していないことは確かだ。

 最悪の事態のシナリオを公表した場合、日本全体がパニックに陥ることを政府は恐れているのだろう。本当なら、事故が起きる前の段階で、そうしたシナリオは公表しておくべきだが、地震はともかく、原発事故が起こった場合のシナリオがあったとは思えない。

 M9級の地震自体が「想定外」だったのだから、原子炉損傷による放射能漏れなどの事態は想定されていたとは思えない。いきなり、ぶっつけ本番対応を迫られているわけだ。東電・原発関係者や政府も必死だろうが、われわれも必死に対応を考えなければならない。自分の安全はやはり自分で守るしかない。

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