家庭や塾に押し寄せるオンライン教育の奔流=「エドテック(EdTech)」を侮ることなかれ!

 

江戸初期の陽明学者、熊澤蕃山氏(1619~91、バンザンHP)

 

新型コロナウイルスの感染拡大の波が我が国の教育現場にも押し寄せ、オンライン教育への関心が高まっている。そのプラットフォームを提供しているのがIT(情報技術)を活用した教育サービス「エドテック」(EdTech)だ。「学校という場に集まらなくても勉強を続けられる」のが便利で、臨時休校で混乱に陥った日本でも注目が集まっている。

株式会社バンザン(東京都新宿区)は2019年12月4日、私立中学受験専門の家庭教師「一橋セイシン会」を全面リニューアルし、オンライン家庭教師で全国約1400校の私立校の補修、定期テスト対策、内部進学対策に対応する「私立専門・オンライン家庭教師のメガスタディ」として12月3日よりサービスを開始したと発表した。

メガスタディは全国47都道府県、どの私立校に通っていても、その学校カリキュラムの準拠指導が可能だとしている。

パソコンの内蔵カメラでテレビ電話のようにやり取りし、双方に設置されたスタンド式カメラが映し出す互いの手元にある資料を見ながら会話する.遠隔会議に使われるビデオ通信ソフトに改良を加えて教育用に変更し、対話指導と遜色ない状態にしているという。

バンザンの売りは全国規模の「オンライン教育構想」。それも江戸時代初期の陽明学者、熊澤蕃山(1619~1691年、くまざわ・ばんざん)の教育思想を現代に生かした「ソーシャルグッド」(Social Good)に拘り、ビジョナリーカンパニー(Visionary Company)でありたいと願っているのである。

「ソーシャルグッド」は地球環境や地域コミュニティーなどの社会に対して良いインパクトを与える活動などを指し、2015年9月の国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に似たコンセプトだ。

熊澤蕃山は「庶民の暮らしの向上なくして繁栄なし。領民への仁政こそ国の基本」という経世済民思想を説いた。「社名のバンザンは、熊澤蕃山が由来である」と明記している。

AI(人工知能)で1人1人に最短の「わかる」を提供しているアタマプラス(本社・東京都品川区、稲田大輔社長)。創業は3年前の2017年4月。中高生の基礎学力を最短で身につけることを目的としたAI教材「atama+」(アタマプラス)を開発しており、全国の塾や予備校に導入している。

18年3月時点で100教室だった導入実績は既に500教室に急拡大。「能力開発センター」の全77教室が「atama+」を入れたほか、増進会ホールディングス(Z会)の学習塾「栄光」が738教室のうち133教室で「atama+」を導入した。Z会グループ全体への拡大を図る方針だ。

アタマプラスでは大手予備校の駿台グループ(駿台予備学校、駿台専門学校グループ、駿台甲府小・中・高校、駿河台大学)とも業務提携。「atama+」の提供を開始した結果を検証。通常学習とAI教材を併用することで模擬試験における明確な成績向上が見られたという。これを受け両者は20年4月から駿台予備校の全国各校舎へ「atama+」の教材(英語、数学、物理、化学)を順次投入する方針だ。

EdTech(エドテック)とはEducation(教育)と Technology(技術)をかけ合わせた造語である。子どもが使い教材にパソコンやスマホ、タブレットを用いたり、紙のテキストからオンラインに接続されたデジタル端末でテキストを読んだり、授業動画を見たり、ドリルを解いたりできる技術を開発する取り組みを指す。

EdTech以外にも既存産業に「tech」が付いた造語はほかにも数多くあり、総称してXtech(クロステック)と呼んでいる。仮想通貨や電子マネーなどのFintech(フィンテック)やファッション産業と結んだFashionTech(ファッションテック)などのXTechサービスもある。

ICT教育やeラーニングなど同じような言葉があるが、包括範囲としてはEdtech>ICT教育>eラーニングとEdtechが最も大きいのが特徴だ。

クラス全員がただ同じ黒板を見つめていた一斉授業が150年間ずっと続いてきた日本の授業。それがICTやAIなどの技術革新によって1人1人に寄り添う学習に切り替わるかもしれない。そんな新しい時代を迎えようとしている。

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