『神隠し』

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書名:『神隠し』
著者:長野慶太(対米進出コンサルタント)
出版社:日本経済新聞出版社(2013年2月20日第1刷)

第4回日経小説大賞を受賞した作品。舞台はロサンゼルス・インターナショナル空港。非常に大きな空港で、アメリカ人の8歳の少年が、保安検査のセキュリティー・チェック・ポイントの向こうで突然いなくなる。

著者によると、「空港内はたくさんのセキュリティーカメラが天井からのぞいている。とても厳しい監視の目がある中で、なぜ少年がいなくなってしまったのかというミステリーを骨格にしている」

「事件を担当する主人公の新聞記者グレッグと子どもを突如として失ってしまった母親。この2人が少年を探して奮闘するお話だ。加えてアメリカ固有の法的な事情として、例えば司法取引の問題のようなものをストーリーの中にまぜて深掘りする作品にできればという思いで書き上げた」と公開座談会(2013年3月9日付日経)で語っている。

同賞は今年4回目だったが、受賞者と選考委員による公開座談会を初めて開いたのは面白い。授賞式を単に祝福するだけのセレモニーに終わらせることなく、「育てる賞」を目指す決意を示したと説明している。

長野氏は学業や銀行勤め、法律事務所などの仕事をこなしながら、中学生時代から35年間、たゆまず小説を書いてきた。日経小説大賞にも、2006年の第1回から毎回応募し、長編を書き続けた末の受賞。今回の選考では「書き続け、応募を続ける」という執念も評価されている。

日経小説大賞は、こうしたチャレンジを続ける書き手を応援し、育てていきたいとしている。一度、小説を書いてみたいと思いながら、一度も書いたことのない人間にはただただ頭が下がる。

 

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