大玉丹波黒大豆

 城崎の町もいいが、篠山の町並みも素敵である。丹波・篠山はデカンショ節で有名だが、ほかに猪肉料理の「ボタン鍋」も名高い。最近では特産品「黒大豆」(通称黒豆)の評判が全国に鳴り響いている。

 株式会社「小田垣商店」(兵庫県篠山市立町9)。「大玉丹波黒大豆」と染め抜かれたのれんをくぐって店内に入ると、一昔前の空間にタイムスリップ。明治初年(1868年)創業の丹波黒大豆の老舗だ。篠山には何度も来ているが、今度も道に迷って、結局、車を駐車場に入れ、歩いて探し回るはめに陥った。小雨も降って、やはり寒かった。

 でも、町を歩くのは気持ちがいい。身体全体で町の空気を吸えるから。小田垣商店も古いが、菓子匠「清明堂」(篠山市二階町59)は1855年創業ともう少し古い。家伝の味を受け継いで百有余年。黒豆納豆・黒豆羊羹がいい。また、炒った黒豆の入った塩味の「丹波黒豆おかき」は上品だ。ゆずのきんつばも香り良く、実にうまかった。

 時代とともに町も人も変わる。清明堂の隣にあった贔屓のうどん屋「角屋」(確か?)は店を閉めていた。ご主人の体調が思わしくなく、昨年から、商売を止めたという。何年も前、大阪に住む親しい友を連れて、この店でうどんを食べながら酒を飲んだっけ。江戸時代の雰囲気を湛えた不思議な店だった。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.