鬼平犯科帳スペシャル

 「鬼平犯科帳」が土曜日の楽しみになって久しい。衛星TVの時代劇チャンネルで、リバイバル放映されているからだ。ワンパターンだなと思いつつも、その画一性がたまらなく心地いいのだから、仕方ない。何と言われようと、いいものはいい。理屈ではない。

 同じワンパターンでも「暴れん坊将軍」や「水戸黄門」と違って、鬼平は味わいが比べ物にならない。盗人の世界はもちろん、江戸庶民の人情の機微が言葉の端々ににじみ出ているのだ。とにかく、原作がしっかりしている。何せ、池波正太郎である。文章がいい。言葉が丁寧だ。

 2月8日(火)午後7時からフジTV系で放映された2時間スペシャル「山吹屋お勝」も良かった。4年ぶりの新作だ。鬼平こと長谷川平蔵(中村吉右衛門)、奥方の久栄(多岐川裕美)、五郎蔵(綿引勝彦)、粂八(蟹江敬三)、お政(梶芽衣子)など密偵たちの顔ぶれも旧作と同じだ。

 平蔵のいとこで大店の大旦那、仙右衛門(橋爪功)が茶屋女のお勝(床嶋佳子)を嫁にもらうと言い出したのが物語の発端だが、このお勝は実は盗人の一味。それにしても、最後に鬼平と奥方の掛け合いが絶妙だ。「(女の尻を追い駆ける)男という生き物は何て言ったらいいのか(久栄)、どうにも、困ったものだ(平蔵)」

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