歌舞伎そば

 「歌舞伎そば」(東京都中央区銀座4-12-15)が気に入っている。その名のごとく、歌舞伎座の敷地内にあるそば屋だが、値段は立ち食い店並みながら、自家製麺を使う本格派。立ち食い店のようで、実は立ち食いではなく、座り食い店。つまりカウンター席ばかり8席。昼間の混雑時はあと2つばかり席が増えるところもいい。

 私の好物は「ざるかき揚げそば」(通称「ざるかき」、460円)。ざるそばの周りに一口大にちぎったかき揚げが5個。麺とかき揚げを交互にだし汁に付けていただく。冬は寒くて、冷たいそばはちょっと辛いが、これからの季節は「ざるかき」に限るのではあるまいか。

 基本的に立ち食いそば屋だから、オープンキッチン。ご主人の働きぶりがまた、小気味いいのだ。そばをかき込みながら、その動作を眺めるのが楽しい。そばを茹で、茹で上がったそばを水でさっとすすぐ。そのそばを今度は皿に盛り付け、ざるかきの場合は、かき揚げを5つにちぎり、皿の周囲に置く。

 この一連の動きが実に見事だ。芸術ではないか。60前後と見受けられる小柄な体の全身を使って、実にリズミカルに作業が進行する。この一連の動作に少しの乱れもないのだ。白い仕事着上下に、帽子も白、今日の昼前、改めて観察したら、長靴も白だった。

 本日の歌舞伎座の出し物は「中村勘九郎改め18代目中村勘三郎襲名披露四月大歌舞伎」。「初代から400年 新しい勘三郎」というのがポスターの売り文句だ。歌舞伎もいいが、そばもいい。ちょっと見つけにくい。歌舞伎座に向かって左手にある歌舞伎座直営お弁当処「歌舞伎茶屋」の奥にあります。

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