荒木町界隈

東京都新宿区荒木町。地下鉄丸の内線「四谷三丁目」駅近くの荒木町界隈は不思議なゾーンだ。美濃高須藩主、松平摂津守(まつだいらせっつのかみ)の広大な屋敷跡にできた町だという。明治維新により払い下げられた屋敷や日本庭園跡は絶景を誇り、当時の庶民の憩いの地として大変に賑わったとか。

 大正から昭和中期にかけて、東京市中でも有数の花街・三業地として大いに栄えたと言われる。都心に、こんなところがあったなんて、という感じである。東京はやはり広い。もう40年近く住んでいても、当然のことながら、知らないところはたくさんある。むしろ、知らないところのほうが多くて当たり前だ。

 荒木町はそんなところ。やけに起伏の多い土地柄だ。雨が降ったら、水はどこに流れるのか。低いところに流れるのは当然で、あれだけ段差があれば、低地は大変だろうな、とつい思ってしまう。

 この色街には昔は料亭というか、待ち合いがたくさんあったという。今は店をたたんでしまい、残っているのはごくわずか。「宮さ和」(新宿区荒木町6番地)はその数少ない店の1つ。たった5つしかないという座敷の1つで、今宵ふぐ料理を愉しんだ。

 築50年。昔ながらの和風建築を残した佇まいは実に落ち着く。酒は「菊正宗」一筋。とくとく徳利でさしつさされつ。4畳半がまた実に情緒あるのだ。あの狭さが何とも言えない。こんなところで、ゆったり飲める幸せにしばし浸る。

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