ドバイ経済事情


 このところ、「ドバイ」が世界におけるプレゼンスを大きく高めている。アラブ首長国連邦(UAE)を構成する1首長国で、これまではアブダビ首長国が有名だった。アブダビ(UAE)からの原油輸入は今もサウジアラビアに次ぐ2位だが、貿易全体としては今やドバイのほうが名前が売れている。

 特に最近、勇名を馳せているのが政府系ファンド、とりわけ、潤沢なオイルマネーを背景とした中東の政府系ファンドの目覚しい投資活動だ。その中核がドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)。2004年設立で、運用資産は約130億ドル(1兆3000億円)。

 DICは昨年秋にはソニーの株式を大量購入したほか、ダイムラークライスラーや英HSBCに出資。さらに、サッカーのイングランド・プレミアリーグの名門リバプールに49%資本参加することが明らかになった。

 ドバイの名が轟き始めたのはこうした国際的な投資活動。その背景をもう少し知りたいと思っていたところに、日本貿易振興機構(ジェトロ)主催のドバイ経済事情講演会が7日開催されたので、出掛けた。講演したのはジェトロ貿易投資相談センター主査の兒玉高太朗氏。

 あらゆる経済・社会指標が右肩上がり。GDPも01年の180億ドルから06には460億ドルへと2.6倍。07年の実質GDP成長率は5.2%(速報値)、実感的には10%成長らしい。1人当たりGDPは3万ドル(推定)。日本が3万4000ドルだから、ほぼ並んだ格好だ。

 UAEの中でも経済・商業の中心地。貿易では非石油部門取引の7割以上がドバイに集中し、港湾は荷揚げ貨物量の8割以上がドバイの2港経由。空港も旅客の8割以上がドバイ空港を利用している。

 投資市場としての魅力が増大。株式市場は02年に開設されたばかりだが、市場時価総額はその年の95億ドルから05年には1120億ドルへの一挙に12倍に急拡大。06年はバブル調整で縮小に転じたが、それでも869億ドル。

 とにかくメガプロジェクトが続々とぶち上げられ、花盛りだ。どれもこれも目を剥くような超大型プロジェクトばかりである。

・ブルジュ・ドバイ~世界最高層(800m)のビル建設
・ドバイ・モール~世界最大のショッピング・コンプレックス
・パーム・アイランド~椰子の木の形を模した人工島にリゾートなど各種複合施設を建設
・ザ・ワールド~世界地図を模した300の人工島リゾート
・ドバイ・ライト・レイルウェー~総延長70km、総工費40億ドル、初の鉄道
・ドバイ国際金融センター~オフショア金融センターの創設
・ドバイ国際空港拡張~拡張工事は総額25億ドル。当面の目標は利用客年間6000万人

 今日のドバイの成長を可能にした発展戦略として兒玉氏が指摘するのは①即決即断、アイデア満載の「ドバイ(株)」であること②陸海空の大規模インフラ開発で地域ビジネス・ハブの基盤を整備したこと③高品質のビジネス・生活環境を提供できたこと-の3点。

 なかでも、フリーゾーンの早期開設は効果的だった。経済の脱石油化と国際化をにらんで、1980年代からジェベル・アリー・フリーゾーン(JAFZ)の整備と企業誘致に取り組んだ。バーレーンと並び、外資にとって数少ない貿易・物流のオフショアを形成した。

 JAFZへの進出外資は06年末には4800社を超えた。日系企業も100社を突破、07年5月時点で103社。近年は湾岸ビジネスセンター機能を拡充させ、業種別フリーソーンが多数開業している。ドバイ・フラワーセンターはその1つで、花卉の扱いではオランダ・スキポールに並ぶという。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.