原油価格高騰

 原油価格が続騰に次ぐ続騰を演じている。連日の史上最高値更新で、3月11日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)は早朝の時間外取引で一時、1バレル=109.72ドル(WTI中心限月4月物)を付けた。

 NYMEXについて書くのは昨年9月20日以来だから、約半年ぶりだが、その時は82ドルだった。その時も史上最高値更新だった。半年間で27ドルも値上がりした。3割以上も上がったことになる。経済の基本物資が急騰したのだから、影響が物価上昇、企業業績悪化などの形で各方面に及ぶのは当然だ。

 11日の通常取引に入ってからは欧米中央銀行5行が協調資金供給を発表したことでドルが急反発。ドル建てで取引されているWTIもそれを受けて一時106ドル台まで急反落。しかし、その後は再び反発に転じ、終値は108.75ドル。通常取引時間内に限って言えば、これでも前日終値比では0.85ドル高。

 サブプライムローン問題対策のため米金融当局が金融緩和を行ったことがドル安や金余りを生み、行き場を失った投機マネーが商品先物市場に集中。中国やインドでの原油需要拡大も背景要因だ。OPECの増産見送り決定も需給を引き締めている。

 要は米国の経済政策の失敗が最大の要因だ。投機マネーは市場の一番弱い部分を攻撃してくる。そこに投機妙味が潜むからだ。歪みのない経済システムはない。問題点は必ず存在する。それを見つけ出すことのできる投機家が巨額の富を築く。これが金融資本主義の原理である。

 経済システムのあら捜しを組織的に行っているのがヘッジファンドだ。とにかく、価格が変動すれば、対象は何であれ、投機妙味が生まれる。金余りを背景に、中東などの政府系ファンドが世界中で企業買収を活発化している。

 さらには原油高騰のメリットを思う存分享受しているロシアが世界を買う動きを加速させている。何せ、有り余るほどのオイルマネーを抱えて、使い道に困っているからだ。そんな投機マネーに翻弄される世界にとってはひどい迷惑な話である。

 翻って日本。外貨準備は1兆ドルを超えたというのに、豊かさを実感できない悲哀を味わっている。ドル建て資産は実質、日々価値を落としているというのに、塩漬けされたままだ。米国の経済失政のツケだけはしっかり払わされる。

 原油相場高騰による影響だってそうだ。NYMEXで決まる価格がなぜ世界標準なのか。合理性は何もない。WTIなどという油種は日本では一滴も使われていないのに、それが日本国内の石油価格にも反映されている不思議。しかも、ドル建て価格だから、為替リスクも日本人がかぶらなければならない。考えてみれば、おかしな話である。

 日本人が先物市場を軽視、蔑視、白眼視してきた咎めと言えば咎めではある。好むと好まざるにかかわらず、今は市場主義の時代である。どうあがこうと、それはいかんともしがたい。そうならば、せめて、市場主義を否定的に捉えるのではなく、日本にとって有利に活用するしかないのではないか。

 その早道が日本国内で「先物市場」をしっかりと根付かせることであると考える。いろんな面からのアプローチがあると思うが、この辺をきちんと考えておかないと、膨大な損をするのは我々日本人である。もう、どうにもならないほどの損を被っているが、今からでも考えないより、考えたほうがよい。どうせなら、ジタバタしてみたいものである。

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