『英一蝶』展

 英一蝶(1652~1724)は元禄江戸期の風俗画家にして、俳句にも通暁した趣味人・文化人であるとともに、遊郭・吉原では知らない者はいない人気幇間でもあった稀代のエンターテイナーだったという。伊勢亀山藩のお抱え医師だった父とともに藩主の江戸詰めに伴い家族で江戸に移り住んだ。どういうわけか、幕府の怒りを買って三宅島に島送りとなり、そこで足かけ12年間も過ごした。

 配流となったのは一蝶46歳のとき。当時の寿命からすれば、生きて江戸に帰るのはあきらめてもおかしくない年齢だった。しかし、宝永6年(1709)、将軍交代の大赦によって江戸に帰還。その折に、画名を多賀朝湖(たが・ちょうこ)から、英一蝶(はなぶさ・いっちょう)に改めた。

 都市の人間模様を生き生きと活写するだけにとどまらず、風刺のスパイスをしっかり効かせた批判精神も絶妙で、つい笑ってしまうような面白さも魅力だ。狩野派の絵師として出発したものの、そこから離れ、独自のお座敷文化・吉原文化・江戸町人文化を確立した特異な存在である。

 御赦免300年記念『一蝶リターンズ~元禄風流子英一蝶の画業~』(2009年9月5日~10月12日)。東京都板橋区立美術館。「布晒舞図」(遠山記念館所蔵)と「四季日侍図巻」(出光美術館)は重要文化財。同館は1984年に一度、英一蝶展を開催しており、今回はその後発見された作品なども展示している。

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