『ソーシャル・ネットワーク』

  5億5000万人・・・。19歳の米ハーバード大学生マーク・ザッカーバーグが大学寮の一室で今や世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に成長した「フェイスブック」を立ち上げるまでと、その後の人間ドラマを描いた映画。

 昨年9月24日のニューヨーク映画祭のオープニングナイトで上映されたばかりなのに、年明けには日本でも公開された、そのスピード感はインターネットの世界通りだ。ベン・メズリックの原作をアーロン・ソーキンが脚本にし、デヴィッド・フィンチャーが監督した。本は速効で書かれ、シナリオも作られ、撮影された。

 映画はザッカーバーグがハーバード大学中の寮の名簿(つまりフェイスブック)にハッキングし、女子学生たちの写真を並べランク付けするサイトを作ったのは彼女に振られた腹いせであることを強く示唆する。ザッカーバーグ氏自身はこれを事実ではないと否定しており、この点からだけしても、この作品の通俗性、好奇性をうかがい知れる。

 ネット社会をテーマにしているものの、そのあるべき姿を描くというよりも、それに係わる生身の人間のリアルな姿をむき出しにした作品だ。ストーリーは極めて通俗的かつ下世話だ。映画の最後に、「この作品のほとんどは事実に基づいているが、一部にはフィクションも含まれている」との字幕が写し出される。

 つまり、この作品は事実というよりもフィンチャー監督の解釈の物語化だ。天才と裏切者と危ない奴と億万長者の物語だ。ネット社会の理想や理念などとは全く無関係だ。それだけに、面白くないほうがおかしい。

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