第144回芥川賞発表

 17日に発表された第144回芥川賞の受賞会見をテレビニュースで見ながら、受賞者2人の見事なコントラストにびっくりした。片や慶應大学博士課程在籍中の絵に描いたような才媛・朝吹真理子氏(26)、もう一方は中学卒業後、日雇い人夫などで生計を立ててきた自称「アル中・前科者のダメ男」・西村賢太氏(43)。風貌、話しぶりからして美女と野獣に思えた。

 よくもまあ対照的な2人を同時受賞させたものだと思いつつも、これはひょっとして、世間の注目を引くための巧妙かつ高等テクニックかもしれないとも感じたが、案の上、その通りの展開になっている。最初はこれでは注目が朝吹氏にばかりに向いて、西村氏は気の毒だなと思ったが、不思議なことにむしろ西村氏の異色の経歴にも大きな関心が集まり、意外にモテモテなのだ。怖いものみたさみたいなものかもしれない。

 受賞作2作が同時掲載された3月特別号を買って、掲載順に朝吹氏の「きことわ」から読みだした。しかし、選考委員が評価した技巧的な作風に引っ掛かって目が止まってしまった。そのため、西村氏の「苦役列車」に切り替え、読み始めると、私小説だけにそのまま作品の世界に入っていけた。文学作品の完成度としては恐らく「きことわ」のほうが高いのかもしれないが、「苦役列車」に感じた共感は生まれない。しっかり読み終えてから再度考えてみることにしよう。

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