『梅棹忠夫 語る』

書名:『梅棹忠夫 語る
語り手:梅棹忠夫(国立民族学博物館初代館長)
聞き手:小山修三(吹田市立博物館長)
出版社:日本経済新聞社(日経プレミアシリーズ、2010年9月15日1刷)

 日本の民族学に一時代を画した梅棹忠夫氏の講演を聴いたのは2003年10月4日。JICA(国際協力機構)・横浜国際センターで、「日本人と新世界」と題して特別記念講演を行ったときに、横浜まで出掛けた。氏は1986年に視力を喪失していた。2010年7月死去。

  梅棹氏の存在を知ったのは1969年7月に刊行された『知的生産の技術』(岩波新書)。70年安保を翌年に控え、激動の時代に翻弄されていた知的飢餓者の1人として飛び付いた。京大式カードを買ってきて、情報収集に精出したのも彼の影響だ。そういう意味で世俗的な学者だと思っていたが、実は「時代を動かした思想家だった」(小山氏)。

 本書は2008年に「米寿を祝う会」を開催し、梅棹さんをまな板に載せてシンポジウムをやろうという計画がもちあがったものの、体調に不安があるので、前もって小山氏が聞き取りをして、梅棹さんが来られない場合は、それを読み上げるという次善の策が考えられた。そのときの聞き取りのエッセンスをまとめのが本書だ。

 座談の名手・梅棹忠夫の面目躍如ぶりがいかんなく発揮されている。小山氏との丁々発止の対話も自在だ。

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